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映画「ベルファスト」を観る [映画(は行)]

映画館やYouTubeで予告編を何度もみてしまったので、
マーケティング戦略に素直にはまり映画館まで観に行きました。
BELFAST.jpg
あらすじはYahoo!映画さんより。

北アイルランド・ベルファストに暮らす9歳の少年バディ(ジュード・ヒル)は、
仲の良い家族と友人たちに囲まれ、映画や音楽を楽しむ幸せな日々を過ごしていた。
しかし1969年8月15日、プロテスタントの武装集団がカトリック住民を攻撃したことで、
彼の穏やかな日常は一変。
住民同士が顔なじみで一つの家族のようだったベルファストの街は、この暴動を境に
分断されてしまう。
住民の間の対立が激化し、暴力と隣り合わせの日々を送る中、バディの家族は故郷を
離れるべきか否か苦悩する。
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映画を観ていてU2の歌を思い出しました。



Live Aid、久しぶりに観たのですがなんか学生服みたいな。(^-^;
この頃はLPも買ったりして好きだったU2も、その後の活動に興味がなくなってしまい
(政治的な発言が多いイメージなのと、捕鯨反対というのが個人的に引っかかり)
ちょっとというかうんと遠ざかっていたグループでしたが、今作の冒頭で描かれる、
カソリック信者の家を襲撃という場面を見てU2を思い出したまま、そのまま最後まで
ボノの顔が時折ちらつくような状態で鑑賞している己がおりました。

現在のベルファストが空撮されてカラーで投影された後、
モノクロに変わって1969年のベルファストにタイムスリップして楽しそうな風景、と
思ったら襲撃、という展開でそうかこれって楽しい映画じゃないんだよな、と
思った途端、頭の中にはU2。そのままずっとU2、最後まで引きずってU2。
変な感じで頭の中をU2かぐるぐるループしていました。

監督は先日観た「ナイル殺人事件」でポワロを演じ、私には違和感ありありの
アクションシーンを見せてくれたケネス・ブラナー。
自身の話を描いた半自伝的映画らしいのですが、映画鑑賞後調べてみたら
ケネス・ブラナーとボノって同い年と知りびっくり。
1969年にベルファストで経験した襲撃事件、1972年の血の日曜日事件、
同年代で北アイルランド(ケネス・ブラナー)、アイルランド(ボノ)にいた2人、
私が思い出したものもある意味つながっていたのなと思いました。
(的外れなことを思い出したのではないことが分かりホッとしました)

予告編はうまく場面をつないであるなと鑑賞後に思ったのですがが、
楽しい音楽を聴くと小躍りしそうな気分で観ると全然違います。(^-^;
本編はそんなに楽しくできていないので、カソリックとプロテスタント、
信じるものが違うという理由で争いが起きていることを9歳の子供の目線で描くことで
残虐な描写になりすぎずに見る人の想像力でいかに酷いことが起きていたのかを
想像するような映画だったのかと思います。

苦しい家計(お父さんはロンドンに出稼ぎでたまにしか帰ってこない)、
お母さんは時々泣いているし、でも、優しいときはいっぱい優しいし、
おまけにお爺ちゃんやお婆ちゃんは優しいし、
(お爺ちゃんが算数のテストで良い点をとる方法を教えている場面で爆笑)
近所の人たちや同級生たちとの触れあいも楽しいし、でも暴動起きるし、
9歳の主人公バディの目線で感じたことを描いている作品なので、
お店の襲撃に巻き込まれて洗剤を棚からとって持って帰ってお母さんに怒られたり、
それを返しにいって暴動に巻き込まれそうになったり。
子供の目線では暴動が起きている理由もよく分からなかったりするのかもしれませんが、
大人だってよく分からないけれど暴動に参加してしまう人もいるのではないか、
多数に入っていれば安心という心理もあったのではないか、そんな気持ちになりました。

とはいえ、監督の思いが強いのか、予告編のイメージが強すぎたのか、
前半は少々ダレる感じもあったのは正直な感想です。

バディは結局家族と一緒にロンドンに引っ越すことになるのですが、
(お爺ちゃんはなくなり、お婆ちゃん(ジュディ・デンチ)は連れていってもらえない)
クラスで片思いだった女の子がカソリックだということがバディの言葉でわかります。
バディ(プロテスタント)は女の子がカソリックだから話しかけづらかったのかな、
と思ったのですが、行いが悪いと地獄に行くと教会で説法を聞くバディ、
懺悔すれば許されると聞いているカソリックとは相いれないのかな、というのは
子供ながらに感じていたのかもしれませんね。

期待し過ぎてあれ?という気持になりましたが、日本から遠い場所で起きたこと、
子供目線で描いてもらって知る機会になったかなという気持ちになれたので、
観てよかったと思った「ベルファスト」でありました。



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映画「ボブという名の猫2 幸せのギフト」を観る [映画(は行)]

最近いろいろ見た映画記事、もう少し続きます。
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最近、集中して映画を観るのが苦手になってしまったというか、
いろいろ気にしないで観られるかと思って選んだ猫の映画です。
(といっても一作目が好きなので観た続編)
BOB 2.jfif
あらすじはYahoo!映画さんより。

ジェームズ(ルーク・トレッダウェイ)と猫のボブは、出版社のクリスマスパーティーに
参加した帰り道、路上演奏をしたことで警察に捕まったホームレスを助ける。
ジェームズは捨て鉢になっている男性に、自分が生計を立てるために路上で過ごした
最後のクリスマスのことを語り始める。
それはジェームズとって最も難しい選択を迫られた、忘れられないクリスマスだった。

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ボブ。(´;ω;`)

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実話に基づく映画の続編で今回も実話に基づいているお話。

1作目は、ヤクチュウでホームレスのジェームズが薬を断ち切って
新たな人生を始めようともがき苦しむ中で出会ったボブのお陰で、前向きになっていく、
というお話ですが、今作は著書が大ヒットし、出版社のクリスマスパーティに招かれた
帰りに出会うホームレスの青年、そこからホームレス時代の思い出を回顧するような
つくりになっています。
(路上でボブとジェームズが最後に過ごしたクリスマスを描いています。)

ホームレスといっても支援団体のお陰で集合住宅に住んではいますが、
ビッグイシュー(日本でもホームレス支援で販売されている雑誌)を販売したり
路上演奏してチップをもらったりして生活の糧を得なければならないジェームズ、
動物福祉局にボブを虐待をしているのではないかと疑いをかけられたり、
思ったように稼げず電気代が支払えず寒い冬を過ごさないといけなくなってしまったり。
前作のように体から薬(ヘロイン)を抜くときの禁断症状に苦しむジェームズ、
という観ていて目をそむけたくなるような場面はありませんが、
ホームレスというだけで偏見を持つ人は多いのだろうなとイラついたのですが、
ジェームズは知人友人、自分をサポートしてくれる人への感謝の気持ちを忘れず、
時に知らない人も困っていれば手を差し伸べる、そういうことが巡り巡ってジェームズに
返ってくる、というお話で、観ていて私も温かい気持ちになりました。

前作同様、ボブ(本猫)が出演していますが、撮影後に事故に遭って亡くなり、
(ひき逃げとは悲しすぎます)https://www.dailymail.co.uk/news/article-8441657/Street-Cat-Named-Bob-died-hit-car-says-ex-heroin-addict-owner-ginger-tom.html

このインタビューでジェームズさんがボブからたくさんのことをもらったと仰っていますが、
(読んで泣いてしまった私)https://www.cinemacafe.net/article/2022/02/24/77471.html
私もスクリーン越しにボブから人を信じることの大切さを教えてもらったような心持です。

映画公開も2020年から今年に延期、やっと公開されましたが、
昨年末のクリスマスの時期に公開されれば、、なんてことを考えてしまいましたが、
配信のみにならず、映画館の大画面でボブにまた会えたことで幸せな気持ちになれた、
「ボブという名の猫2 幸せのギフト」でありました。(=^・^=)



 





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映画「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」を観る [映画(は行)]

ウェス・アンダーソン監督作品の新作、ということで
期待して映画館に観に行きました。
フレンチ.jpg
あらすじはYahoo!映画さんより。

20世紀フランスのとある街には、雑誌「フレンチ・ディスパッチ」の編集部があり、
個性的な人々が集まっていた。
国際問題はもとより、アートやファッション、美食などのユニークな記事で雑誌は
人気があった。
だが、ある日仕事中に編集長が急死し、彼の遺言により、フレンチ・ディスパッチ誌の
廃刊が決定したため、編集者や記者たちは最終号を発行する。


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こんな雑誌があったら読んでみたい!

って、クセのある記事の数々、ジャンルがばらばらなんですが。(笑)

冒頭から引き込まれるのが雑誌社のビルの様子。
ビルの裏側が複雑で、近くのカフェのウェイターが様々な飲み物をお盆に載せて
雑誌社まで運んでいく様子がものすごく大変そうで、
階段を上がったりお盆を紐につけて引っ張って上げていったり、
やっとたどり着いた雑誌社にいる記者たちがまたクセの強そうな人ばかり。

印刷された雑誌が登場するわけではなく、雑誌の記事をオムニバスのように
次々とスクリーン上に紹介する構成ですが、雑誌のようにカラーだったり
モノクロだったり、アニメだったり(実写だと難しそうな場面がアニメだった
記者が自分の書きたいことを書く、編集長(ビル・マーレイ)が記者に言うのは
「自分の意図が伝わるように記事を書きなさい」、それだけ。
記事のページ数が多くなっても全部載せなさいという編集長の心の広さ、
そんな編集長のもとに作られた雑誌、世界各国で人気のあった雑誌が
亡くなった編集長の遺言で廃刊となる、その最終号を紹介するのがこの映画。

4つの話の最初が、オーウェン・ウィルソンがチャリにのって雑誌社のある街、
アンニュイ(フランスにある架空都市の設定)を紹介する記事ですが、
一番短くて、この雑誌社がどういうところにあるのかを軽く紹介しています。
(といっても、街の今昔が意外とシュールな雰囲気だったりします)

その次が、刑務所で服役中のモーゼス(ベニチオ・デル・トロ)が芸術に目覚めて、
同じ刑務所で服役中(脱税で有罪)の美術商(エイドリアン・ブロディ)に
モーゼスの才能と作品を評価されて成功する話、
3つ目が、学生運動にのめり込むゼフィレッリの青春と恋、
4つ目が、アンニュイ警察署長が雇うシェフと署長の息子の誘拐の話、
なんの関連もない、4つの話を、記者の語りで描いていく、
どの記者もクセありありで、演じていた中で一番マイルドに見えたのが
オーウェン・ウィルソンという。(笑)

2つ目のティルダ・ウィンストン、3つ目のフランシス・マクドーマンド、
4つ目のジェフリー・ライト(007のフェリックス・ライター!)、
なんだか記者がこんなにクセがあると記事も一筋縄ではいかない感じで
セリフの多さについていくのが大変とはいえ、独特の世界に入り込んで
変な笑いとともに鑑賞しました。

個人的に面白かったのは、2つ目の囚人モーゼス。
レア・セドゥ演じる女性看守をヌードモデルに絵を描き、それを美術商が
売り出していくことで天才画家として脚光を浴びていくエピソード、
レア・セドゥの脱ぎっぷりにも感嘆しちゃったのですが、ベニチオ・デル・トロの
どこか行っちゃってる感じの演技がツボでした。

とにかく出演者が豪華で、
ビル・マーレイ(編集長)、ティルダ・ウィンストン(記者)、
フランシス・マクドーマンド(記者)、オーウェン・ウィルソン(記者)
エイドリアン・ブロディ(美術商)、レア・セドゥ(看守)、
マチュー・アルマリック(警察署長⇐007慰めの報酬の悪役!)、
エドワード・ノートン(運転手)、
ウィレム・デフォー(アバカス(そろばん、計算器の意(笑)の会計士)
などの、ウェス・アンダーソン作品の常連的存在の俳優さんたちに加えて、
ティモシー・シャラメ(学生のゼフィレッリ)、
シアーシャ・ローナン(ジャンキーのコールガール!)、
ジェフリー・ライト(記者)と、俳優さんたちがウェス・アンダーソン作品で
楽しそうに演じているのがこちらにも伝わるような、そんな作品でした。

とは、知らない俳優ですが、4つ目でアジア系のシェフ、ネスカフィエを演じていた
スティーブン・パーク、見た目のインパクトで記憶に残る役柄でした。
(といっても違う役柄だともうきづけないかもしれない(笑))

映画の関連動画を見ると、監督が3つのテーマを掲げていて、
「アンソロジー」「ニューヨーカー(雑誌)」「フランス映画」
その3つが確かにうまく込められていると鑑賞後に改めて思いました。
ウェス・アンダーソン作品というと、
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これらの作品に妙に惹かれてしまった私なので今作も面白かったのですが、
1回でセリフや話をすべて理解するには情報量の多い映画だったような、
わかるようなわからないような、映像美と独特の雰囲気を楽しめればいいか、
という気持ちにもなりつつ、過去作品を見直してから、もう一度見てみたいと思った
「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」
でありました。






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映画「ハウス・オブ・グッチ」を観る [映画(は行)]

YouTubeの広告で頻繁に予告編が流れていて、完全に刷り込まれた状態で
映画館で鑑賞しました。
(The Blondieの”Heart of Glass”とEurythmicsの”Sweet Dreams”が
 今でも頭の中をぐるぐるしています(笑))
House of Gucci.jpg
あらすじはYahoo!映画さんより。

貧しい家庭出身の野心的なパトリツィア・レッジャーニ(レディー・ガガ)は、
とあるパーティーで世界的ファッションブランド「グッチ」創業者の孫である
マウリツィオ・グッチ(アダム・ドライヴァー)と出会う。
互いに惹(ひ)かれ合うようになった二人は、周囲の反対を押し切って結婚。
やがて、セレブとしての暮らしを満喫する彼女は一族間の確執をあおり、
グッチ家での自分の地位を高めブランドを支配しようとする。
そんなパトリツィアに嫌気が差したマウリツィオが離婚を決意したことで、
危機感を抱いた彼女はある計画を立てる。
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お金持ちって大変。(´Д`)

イタリア人同士の会話がイタリア語訛りの英語というのは仕方ないとして。(笑)
実際のパトリツィアがインタビューで話す英語とガガちゃんの演技が
シンクロする感じで凄いなと思ったのですが、キャストにイタリア語を
話させるのもなあ、と思うと英語なんででしょうね。
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この作品でもちょっとだけフランス語、あとは全部英語、というのも
ウィレム・デフォーが演じていたからだと思ったのと同じ感じ。
と、いきなり全編英語というひっかかりについて書いてしまいましたが、
2時間40分という長尺の割には後半若干間延びした感じもありつつ、
さほど時間の長さを感じさせない作品でした。

冒頭で、史実にインスパイアされて作られた作品と表示されるので、
実際と違う部分も多いんだろうなと思いながら見た後、ググってみたら
細かいところでは違う部分もあるようです。
(とはいえ、それが作品の出来を左右するとは思いませんが)

映画では、最初は純愛でマウリツィオがグッチ家を捨ててでもパトリツィアと
一緒になりたいという場面が印象的でしたが、
マウリツィオの父には認められなかったものの、伯父アルドに気に入られ
グッチという大きな名前(富)を手に入れたいという野望がどんどん大きく
なっていったのかと思います。

(詳しいことはこの記事で)https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/vismoglie/2022/01/post-33.php

マウリツィオをグッチの社長につかせるために、伯父アルド、息子で従弟のパオロを
陥れる、その後はマウリツィオとの溝が深まっていくばかりという、
映画ではそのあたりの描き方がいまいち物足りない感じもしたのですが、
マウリツィオに三行半を突き付けられて離婚、養育費も約束より減額されて、
マウリツィオは離婚前から付き合っていた女性と再婚、更に、マウリツィオの戦略で
会社は経営が傾いていき、もっていた株式(全体の50%)をアラブの投資家に売却し、
グッチ夫人でなくなった上に元夫がグッチの名前はあるものの会社とは無関係になる、
精神的におかしくなっていって殺害を依頼するわけですが、その中で唯一信頼している
占い師のピーニャ(サルマハエックそっくりさんだと思ったら本人でビックリ)に
占ってもらい(というか終盤は相談みたいな感じになっていた)彼女の言うことを
信じて行動するようになる、占い大好きなところは乙女っぽいのですが、
ピーニャの知り合いを雇ってマウリツィオを殺害して2年後逮捕され、有罪で服役、
現在は出所して70代になったパトリツィアはイタリアで暮らしているそうですが、
なんともまあ激しい人生だな、と映画でのガガちゃんも実際もエリザベス・テイラーに
似ている風貌で気の強さ(成り上がり感全開)を感じました。

今回、キャストが豪華で、存在感たっぷりのガガちゃん(パトリツィア)、
作品ごとに印象が変わるアダム・ドライバー(マウリツィオ)、
一瞬だれだかわからなかったジャレッド・レト(従弟のパオロ)、の他に、
グッチ2代目社長を演じたアル・パチーノが弟でマウリツィオ父の
ロドルフォに会うときに「コンニチワー!」と思いきり日本語で挨拶する場面、
何かと思ったらその後NYの店舗にやってくる日本人たちに同じように挨拶し、
ああ、この時代ってドルが変動相場制に移行して、高度経済成長期にあった日本人が、
海外に渡航してブランド品を買い漁るようになった頃なんだなあと思いつつ、
この描き方が日本人としては見ていて複雑な気持ちになりました。
とはいえ、おじいちゃんの風貌のアル・パチーノ、ある意味貫禄が出ていて、
なりきり感があってよかったです。

あとは、グッチの執事というかマウリツィオの右腕ドメニコを演じていた
ジャック・ヒューストン、結果的にはマウリツィオを会社から追い出す、
非常に頭のいい役柄なのですが(マウリツィオを追い出した後株式公開し、
社長に就任して会社を立て直す人なので悪い人ではないと思う(笑))
マウリツィオに従順に仕えてパトリツィアに冷淡な態度をとることもありつつ、
会社の行く末を考えて(同族経営では破綻すると思ったんでしょうね)
行動する役を地味ながら好演されていました。

予告編に流れていたBloindieやEurythmicsが印象的だったのですが、
本作の中でも冒頭からドナサマー、中盤でのボウイ様(Ashes to Ashes)、
リアルタイムに聴いていた世代にはこのあたりもツボポイントかもしれません。

冒頭でマウリツィオがカフェでエスプレッソをのんでから自転車で会社に向かう姿が
映し出され、それと同じものが終盤にも映し出されて、え??という展開になる、
リドリー・スコット監督の演出で一番印象的だったのですが、
俳優のみなさんが楽しんで演じられている雰囲気を感じながら楽しめた
「ハウス・オブ・グッチ」でありました。


(エンドロールのこの曲も印象的でした)
オペラ(グッチ)とフォーク(パトリツィア)の組合せも暗示しているのかな、
と思いましたが、オリジナルでなくパヴォロッティとの共演を選曲したのも
監督の意向なのかな。




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映画「一人っ子の国」を観る [映画(は行)]

久しぶりにAmazonプライムで面白そうな映画を探していて見つけた作品です。
一人っ子.jpg

映画の内容は映画.comさんより

中国で1979年から2015年まで行われていた「一人っ子政策」についての
ドキュメンタリー。
中国出身の2人の女性監督ナンフー・ワンとジアリン・チャンが手がけ、
一人っ子政策がもたらす深刻な影響を暴き出した。
2019年サンダンス映画祭のドキュメンタリー部門でグランプリを受賞。
Amazon Prime Videoで配信。



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驚愕と衝撃。(;゚Д゚)

一人っ子政策については言葉は知っていましたし、
中国が人口増加で将来的に飢餓貧困になることを懸念しての政策、
そのために、一家に子供は一人として人口増加を抑制する、という考え、
その程度の知識でした。

今作は、一人っ子政策が始まって6年後に生まれたナンフー・ワン監督が、
中国で育った後、アメリカに移住し、自らが妊娠し、子供を産んだことをきっかけに
一人っ子政策について疑問を感じ、実家の村に帰って取材を行ったことで作られた
ドキュメンタリー作品です。

実家の村で、両親や親戚、当時の村長などにインタビューを行っていきますが、
ナンフー監督自身、親に大黒柱として期待された名前(ナン=男、フー=柱)、
でも女の子、親は息子も授かりたいと田舎は5年空ければ2人目も可能というルールで
(最初に生まれた子が女の子の場合、に限られるようですが)
息子を授かりますが、反対する村長と祖父が戦ってくれたという話を
母や祖父から聞いていくところからインタビューが始まります。
当時の村長は当時は政府の方針に従うしかなかったと答えますが、
本人は乗り気ではない政策でも従わなければ自分の身も心配なわけで、
不妊手術を拒んで連行された人の話を聞いて、自分の村では拒否した人の家を
強制的に取り壊すという手段を取っていたという話に、それでも住む家をなくした
人たちはどうしていたのかという疑問が湧きながら見続けました。

村長の次に登場するのが、政策に従い不妊手術を行っていた助産師で、
罪悪感にかられながら手術を行い、得た報酬は寄付していたものの、
その後、不妊治療を行うようになって、治療によって新しい生命が生まれ、
それでも消えない彼女の罪悪感が残っているのがインタビューからもうかがえました。

2人目が男の子なら跡継ぎとして生かせるが、女の子だった場合、捨ててしまう、
誰か拾ってくれると思って市場に籠に入れておいてきて、そのまま誰も拾わず
その子が亡くなってしまったと話す親戚のおばさん、拾った子供、家族に売られた子供、
誘拐した子供たちを人身売買で養子縁組させ(殆どの場合が違法だったそうです)
逮捕された人、色々な側面からインタビューが行われますが、一方で、
計画生育委員として中絶・不妊手術を推進したことで国家から表彰を受けた人は、
国の政策も自分の行ったことも中国の将来のために大きく寄与していることを誇りに
思っている様子で、どの側面から見るかで考え方は違うものの、
それでも生まれるはずの命を消し、生まれるかもしれない命の可能性も消す、
人道的、道徳的、という言葉は国家の政策の前では通用しない一面も
見えました。

養子縁組で渡米した子供たちについて調査するアメリカ人夫妻などについても
描かれていますが(離れ離れになった双子が見つかる場面もあり)
一人っ子政策が実施されていた期間(1979年から2015年)、
どの時代かによっても厳しさ、残酷さに違いがあるのかな、と思ったのが、
昔の勤め先で訪れた上海、現地の社員(日本語堪能な中国人女性)が
いま一人子供がいるんですけど、2人目も欲しいから罰金払って産もうと
思っているんです、と話していたのを聞いたことなのですが、
一人っ子政策も終わりそうな頃の会話なので、その時の記憶もあって、
今回の作品で知った事実の内容に衝撃を受けました。

現在、中国は少子高齢化が進んでいるため、高度経済成長の中、ふたりっ子政策を
推進しているそうで、一人っ子政策の時と同じく、歌や踊りなどのプロパガンダも
含めて国を挙げて進めている、日本でも少子化担当の大臣がいますが、
それで何が進んでいるのか分からず、中国のように国の政策だから絶対服従、
という国ではない日本で進めるには、安心して子供を産んで成人まで育てられる、
そんな社会環境を作っていかなければ少子化は進んでいくのだろうなと思いました。
(一時的なバラマキを得点稼ぎにやってる場合じゃないような気がした)

映画館で上映するには厳しい内容とは思いますが、
今回Amazonプライムで観て知ることができてよかったと思った、
「一人っ子の国」でありました。







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映画「パンケーキを毒見する」を観る [映画(は行)]

以前から見たかったのですがなかなか映画館で観られず、
やっと田端のChupkiさんで観ることができました。
パンケーキ.png

あらすじはYahoo!映画さんより。

菅義偉氏は秋田のイチゴ農家から上京し、国会議員秘書、横浜市会議員、衆議院議員を経て
内閣総理大臣にまで登りつめる。
内閣官房長官時代、記者会見における記者とのやり取りでも耳目を集めた菅氏は
総理大臣就任早々、大手メディアの政治担当記者と「パンケーキ懇談会」を開き、
携帯電話料金の値下げやデジタル庁の新設などに着手する一方で、
日本学術会議の任命拒否や中小企業改革などを断行する。



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ぐふっ。

と笑ってしまう作品でした。
在任期間中に観たらもっと面白かったかも。(笑)

鑑賞したのが10月中旬。
岸田内閣発足後に観ると、すっかり過去のことに思えてしまったのですが、
在任期間中に観たらぐふっと笑うというよりイラついていたかもしれません。

菅さんという存在を意識してみるようになったのは、やはり官房長官時代、
表情が変わらないといかいつもメディアからの質問にいらついて答えている、
そんなイメージでした。
総理になってからは、官房長官よりもっと多忙で余裕がなかったように見えて、
原稿を予習無しでページを飛ばして読んでしまった上に、のりでくっついていた、
とかよく分からない言い訳をするようなイメージが強かったのですが、
東京オリンピックの思い出話など、自分の気持ちを語るときと原稿があって
それを読まないといけない時の落差がとても大きくて、
トップに立ってリーダーシップを発揮するとうよりは陰の参謀というか
陰から権力を動かす方が得意そうに見えました。


今作では、総理になる前の菅さんの半生を出身地の秋田からたどって、
上京して法政大学を経て、政策秘書、横浜市会議員、衆議院議員、
官房長官、そして総理大臣になっていく流れを追っていくのですが、
貧しい地域の出身と言いながら実家はそんなに貧しくなかったこと、
横浜市会議員の時にアクアラインを値下げした功績があること、
(森田健作が自分が下げたと言っているのでどっちもどっちに思えた)
総理大臣になってからの国会答弁(ご飯論法)をテレビニュースの編集前の
状態で見ると、日本をよくしようと立候補して当選して国会議員になって
その間に色々な流れとか力に流されたり押されたりして利益誘導のような
何かに利益が行くように便宜を図るのが仕事になってしまうのかと
思ってしまいました。

もちろん、今作は菅さんを批判する側から描いているドキュメンタリーなので
菅さん側から作品を作れば当然まったく真逆のようなものになるでしょうから
偏りがあるというのはある程度認識しながら見ていたのですが、
官房長官時代の政策推進費(機密費)が総裁選の間に多額の金額で供出されていること、
当然、日本のために使っていることもあると思うのですが、違うことにも使っている?
そんな疑念を持つようなタイミングと金額で、機密費が予算枠内なら自由に使える、
性善説に基づいてなんだと思いますが、この件は観ていてかなりモヤモヤしました。

戦時中と同じ報道統制で大手メディアが政権に忖度している図式、
といっても、メディアの都合よく恣意的に映像を編集して報道するような姿勢は
関心しませんが、肝心なことを報道しない、新聞社系のメディアにも
問題があるような気がしました。

作品の中で紹介されるアニメ(羊牧場、サウスパークのような子供が出てくる場面)が
なんとも皮肉で逆に面白かったのですが、要はまず選挙に行くこと、投票率が低ければ
自民党圧勝と思っているような人たちに国民も何か感じて行動しなければいけないな、
という気持ちにました。

投票してその後は関心がない、というのは反省点ですが、
今の総理も聴く耳があると言っては小さいノートを見せるパフォーマンスが
そんなに自分に響いてこず、選挙で勝つためにばらまくことばかりアピールして、
財源はどこ?所得倍増って本当にできるの?安倍さんの時もインフレに誘導できず
デフレが続いていて所得は増えず、社会保険料と消費税は上がっていくばかり。
私自身は、人生を折り返して老後の不安がいっぱいな状態ですが、
若い人たちはまだまだ長い人生をどうやって進んでいくのかもっと不安ではないのか、
そんな気持ちで見終わりました。

リーダーは危機的状況でどうやってリーダーシップを発揮できるか、だと思います。
政治家も民間企業のトップも、自分自身も、危機的状況におろおろせず、
打開策を見つけて進んでいけるようでなければだめんだなろうと思った、
「パンケーキを毒見する」でありました。


(おまけ)
今回田端のChupkiさんで鑑賞したので音声ガイドも聴きながら鑑賞しましたが、
銚子電鉄の「電車を止めるな!」の音声を担当された檀鼓太郎さんで、
ところどころのちょっとした音声ガイドにクスっと笑ってしまいました。(^-^)


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映画「浜の朝日の嘘つきどもと」を観る [映画(は行)]

昨日アップした「世界一と言われた映画館」を観たあと、
シネスイッチ銀座に移動して観た作品です。
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喬太郎師匠と大久保さん観たさで鑑賞しました。
浜の朝日の嘘つきどもと.png

あらすじはYahoo!映画さんより。

福島県南相馬市の映画館「朝日座」は100年近くにわたり地元住民に親しまれてきたが、
時代の流れに逆らえず、支配人の森田保造(柳家喬太郎)は閉館を決意する。
森田が一斗缶に入れた35ミリフィルムに火を付けると、突然現れた若い女性(高畑充希)が
水をかけて消火する。
茂木莉子と名乗る彼女は、経営難の朝日座を再建するため東京からやってきたと話す。
地域に根差した名画座を守ろうとする莉子と、やむなく閉館を決めた森田の思いが、
朝日座の存続をめぐって交錯する。


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大久保さんが特によかった。^_^

酒田市のグリーン・ハウスの映画を観てやっぱり映画は映画館でみたいな、
と思いながら鑑賞したのもあって映画館で観ることで映画の良さがますような
そんな気持ちになりました。

維持費のかかる古い建物を無理して残すより、
壊して新たに作った建物の中に映画館も入れればいいだろう、という考えに
郷愁だけでは残すべきといったらだめだろう、と思いつつ、
映画の中ではできるだけ残ってほしい、そういう矛盾した気持ちで観ていました。
現実的には今回のような古い建物を維持し続けようとするのは
映画館の収入を考えると難しそうだなと思いながら観終わったのですが、
(もっと夢見ながら見ればいいんですが(笑))
終盤は若干展開が早すぎる(若干強引な感じも)気もしました。

という、最後の部分はまあ置いといて。

震災によって家族の関係が悪化していく中で出会った先生(大久保さん)、
だめ男とばかり付き合っていてしまうものの、莉子(高畑充希)にとって
先生の存在は頼れて安心できてうちに籠りがちだった性格が前向きになっていく、
その大事な役柄を演じるのは大久保さんしかいなかったように思えました。
最後に残した言葉に思わず映画館内爆笑が起きてしまうほど、の演技、
私もこういう先生に出会っていたかったなあと思いました。

朝日座の支配人の森田を演じる喬太郎師匠もくたびれたおじさんの雰囲気が
全面に出ていて(語り口調が落語ぽかったけれど(笑))
大久保さんに続いて莉子を盛り上げる存在、演技で楽しめました。

主演の高畑充希は個人的にはあまりピンとこなかったというか、
好きでも嫌いでもないのですが若干大げさな演技にも見えてしまったりして
そこを大久保さんと喬太郎さんがうまくまとめてくれていたような気がします。

現在は自宅でDVDでもネット配信でも映画が観られるので観る機会はありますが
気が散るというか集中できないというかやっぱり大画面で集中して観られる映画館の
存在は私には大事だなと改めて思ったのですが、学生時代から通っている名画座、
(昔の文芸坐、ギンレイホール、佳作座、早稲田松竹、目黒シネマなど)
どんどん閉館になっていくのを観ると時代の流れとはいえ、2本立ての楽しみ、
今作でも森田の映画の組み合わせが悪いとクレームした先生のエピソードを観て
2本立ての組み合わせ、確かに違和感なく観ていたけれど大事だなと思いつつ、
しばらく行っていなかったので名画座にも行きたいなという気持ちになりました。

今作に出てきた映画で個人的に観たいと思ったのが、
東への道 【淀川長治解説映像付き】 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: IVC,Ltd.(VC)(D)
  • 発売日: 2014/11/28
  • メディア: DVD
支配人の森田がフィルムを燃やそうとしていたこの映画と、
太地喜和子が主演の「喜劇 女の泣きどころ」。(密林でも出てこない(笑))
古い映画も良いな、と男に振られる度に女の泣きどころを観ては泣く先生の姿に
どういう映画なのか観たくなりました。

私自身は映画が観られなくなった(映画館がなくなったら)悲しいので、
こういう作品を観ると時々は映画館でみてほしいなと思うわけですが、
時の流れとともに変わっていく中でこういう古い映画館はなくなっていくのは
悲しいけれど仕方のないことなのかもしれないな(文化財になれば別の話だと思いますが)
複雑な気持ちでみながら、大久保さんと喬太郎師匠が観られて楽しい気持ちになれた
「浜の朝日と嘘つきどもと」でありました。



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映画「ブレッドウィナー」を観る [映画(は行)]

タリバンによるアフガニスタン制圧のニュースに理不尽さを感じますが
そのタリバンに関する作品がNetflixで観られるのを知り鑑賞しました。
ブレッドウィナー.jpg
あらすじはYahoo!映画さんより。

タリバンが支配するアフガニスタン。
荒廃したカブールの町で生活している11歳のパヴァーナは、
足の不自由な父親が話してくれる、アフガニスタンの歴史を伝説に見立てた物語を
楽しみにしていたがある日、父親がタリバンに連行されてしまう。
タリバンは女性だけで外に出ることを禁止しているため、残された家族は働くことも
食料を買うこともできない。
パヴァーナは家族のために父親を捜そうと決意し、長かった髪を切って少年に変装して
町に向かう。



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( ノД`)( ノД`)


日頃の小さいことにイラついたり怒ったり不満を言ったりする私、

この作品を見てそんな自分が恥ずかしくなりました。
日本に生まれて当たり前のように平和な中で水もガスも電気も使える
環境で暮らしている私が日頃の不平不満を言ってはいけないくらい、
そのくらい理不尽な環境で生きのびようとする主人公のパヴァーナ、
彼女自身はフィクションですが、パキスタンの難民キャンプで
アフガニスタンの女性や少女に取材して書かれた原作を元に制作された
作品なので、パヴァーナのモデルになった女性が多くいるのだと思うと
なぜこの理不尽な世界が許されているのかと思ってしまいました。

日本では「生きのびて」という邦題で公開されましたが、
原題の「Bread Winner」は一家の稼ぎ手という意味だそうで、
父を理不尽な理由(女に本を読んだ)で刑務所に連れていかれ、
母、姉、小さい弟だけとなり(兄は亡くなったものの理由は不明)
女だけでは買い物に行けないとパヴァーナが髪を切り、
少年を装って
行動するようになります。
女というだけで一人で行動すると叩かれ、買い物にいっても売ってもらえない、
それが少年のふりをして出かけるとそれまでひどい態度だった人たちが
ころっと態度を変える様子を見て、パヴァーナ自身も理不尽な気持ちのまま
家族と共に生きのびるために行動していきます。
とはいえ、家族のために髪を切り、さらに理不尽な気持ちになっていく、
そういう光景にずっと怒りしか感じられませんでした。
ほぼ全てといっていいくらい男性の態度は酷いのですが(特にタリバン)
パヴァーナに手紙を読んでほしいとやってくる文字が読めない男性ラザク、
(亡くなったラザクの妻の名前(ハウラ)の意味を聞いて思わずジワリ)
最初はパヴァーナを男子だと思って刑務所にいる父のことも心配してくれますが
終盤でパヴァーナが娘であることを告白しても助けてくれようとする、
そこに全てではない、ごくごく一部でもそういう心のある人がいること、
同じく男子のふりをして外に出る同級生ショーツィアとの出会い、
これらがパヴァーナを前に押し進めていったように見えました。

映画は、パヴァーナが生きのびるために行動する場面と、
パヴァーナが弟などに語る物語が交錯するのですが、物語の主人公を
亡くなった兄の名前(スリマン)として語っていく中で、
最後の最後、スリマンが繰り返し語る言葉、パヴァーナが知らなかった
兄の亡くなった理由なのですが、これもタリバンによるものだと思うと
信仰の自由があるとはいえ、教義といえば何をしてもいいのか、
タリバンが侵攻してくる前の平和な時代を語るパヴァーナの父の言葉から
一転した様子が映し出されると本当に怒りしかありませんでした。

アメリカ軍撤退に合わせて再びタリバンがアフガニスタンに侵攻し制圧、
20年前とは違う、と、女性の権利は守るかのような発言も真実味を感じられず
この先アフガニスタンの女性たちはどうなるのだろう、またブルカの着用を
義務付けられ自由な行動ができなくなってしまうのではないだろうか、
そんな心配も感じながら見終わりました。

と、私自身は怒りと心配、悲しみばかりで観た作品だったのですが、
パヴァーナが最後に言う言葉が心に沁みました。

怒りではなく言葉を伝えて 花は雷でなく雨で育つから 私は生きる

パヴァーナがお父さんを助けてどこに行くのか、
お母さんとお姉さんと再会できるのか、
ショーツィアとの約束(海で会おう)は果たされるのか、
パヴァーナの言葉の強さを考えると時間はかかってもまた会える、
そうなってほしいという気持ちになりましたが、
いまのこういう事態だからこそ多くの方に観て欲しいと思った
「ブレッドウィナー」でありました。








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映画「復活の日」を観る [映画(は行)]

lovin姐さんの記事をみて今の時代を予見するような内容だと知り(未見)
(lovin姐さんの記事)https://lovin-tiger1.blog.ss-blog.jp/2021-08-29-1
Amazonプライムで鑑賞しました。
復活の日 角川映画 THE BEST [DVD]

復活の日 角川映画 THE BEST [DVD]

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2016/01/29
  • メディア: DVD
あらすじはYahoo!映画さんより。

小松左京の同名SFを映像化。
1982年、東ドイツの研究所から猛毒ウイルスMM-88が盗まれた。
ところが盗み出したスパイの乗った飛行機はアルプス山中で事故に遭い、
ウイルスが蔓延した地球は、南極にわずかな人類を残して滅亡する。
その生存者の一人、地震研究者吉住は、さらに大きな危険が近づいていることに気づく。
アメリカ東部に大地震がおきる可能性があり、それは核ミサイルの発射を誘発する
ものだった……。



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40年前(1980年公開)のフィクションが、今のコロナ禍では現実になりかねない、
と思えてしまいぶるぶる震えてしまいました。

原作は小松左京、SFというジャンルに苦手意識があってこの方の作品も
読まずに今まできてしまいましたが、原作も読んでみたくなりました。

今作は、細菌兵器が事故で世界中に拡散してしまい南極基地以外の人が
亡くなる事態(世界滅亡)になった前半(ここまでで1時間20分)、
近く起こると予想される地震の衝撃を核攻撃と判断して作動してしまう
アメリカの緊急事態用の自動報告装置(ARS)、
その攻撃に対抗する措置としてソ連が設定している自動報告装置も作動すると
目標に南極基地も入っているので何が何でもARSを止めねば、と
草刈正雄(地質学者)とアメリカのカーター少佐が南極基地からワシントンDCに
向かう後半で2時間40分くらいとかなり長尺な作品です。
(インド映画ほどではありませんが(笑))

前半には、医師の緒形拳、妻の丘みつ子、吉住の元恋人で看護師の多岐川裕美、
他にも有名どころの俳優さんがいたと思いますが、MM-88の威力には勝てず
命を落としていきます。
病院が戦場のような状態ですがマスクや防護服もつけていない、見えない細菌から
身を守る、そういう観念が当時はなかったのかと思ってしまったのですが、
島国の日本にさえはるか遠くから細菌が拡大して人々を殺してしまう、
最初はただの風邪の症状があっという間に肺炎を引き起こして亡くなる、
このコロナ禍で観ると現実に起きていることであり、SFとは思えない、現実と
重なる状態の映像がデジャブのように思えました。

映画の中でも感染しないために必要なのはワクチンだ、とフランス人研究者が訴え、
ワクチンを終盤で完成させるのですが、コロナのワクチン、感染リスクはあるものの
重症化を抑える役割を果たす、というのであればやはり接種はした方がよいのだな、と
改めて思いました。

世界滅亡の中生き残った南極基地でも絶望感から自殺する人が出てくるわけですが、
辰野隊員(渡瀬恒彦)も無線でつながったニューメキシコ州の少年が亡くなる様に
自らの命を絶ってしまう。(トビーと連呼する姿が切なかった)
日本基地は辰野だけで、そのほかの隊員は生き残るのですが、その後の存在感は
あまりなかったような印象でした。
夏八木勲や千葉真一、角川春樹もなぜか映っていたり、あとは県知事でなくなり存在を
忘れかけていた森田健作までいたので敢えて自分の視界から消そうとしていたのかも
しれません。

ノルウェー基地でも自殺者(と巻き添えで殺され)で一人生き残ったマリト、
彼女を演じていたのがオリビア・ハッセ―。
彼女の顔を観た途端、「君は薔薇より美しい」の熱唱が聞こえたのは内緒です。(笑)

南極基地の残った女性が少なかったので襲われる事件が起きると、種の保存のために
ルールを決めようという男性たちの身勝手な発言(一応、女性隊員も参道する体でしたが)、
このあたりは何だかみていて不愉快だったのですが、マリトと心を通わせていく吉住、
でも、ルールがあるから、みたいな悲しい場面も、素直に見られませんでしたねぇ。

ワシントンDCへARS作動を止めに行き、でも結局それが叶わずにARSが作動し、
ソ連の自動報復装置も作動して南極基地も全滅。
女性、子供、ワクチンを開発した博士など一部の人たちが南米(チリ)へ逃げ延びて
そこに、ワシントンDCからはるばる歩いてやってきた草刈正雄(吉住)、
オリビア・ハッセ―(マリト)と感激の再会、で映画は終わります。

これがタイトルの復活の日、ということなのかと思ったのですが、
40年前に小松左京の原作でここまで壮大なスケールで映画がつくられていたとは、
角川映画にあまり興味のなかった自分を反省しました。

南極基地内に置いてあった、クリープやダルマなどを観ると昭和だなあ、と
思って古さを感じますし、演出上の突っ込みどころは色々ありましたが、
(多岐川裕美はなぜいきなりモーターボートに乗っていたんだろう、とか)
そういうざっくりな感じも昭和らしい映画なのだと思えば気にならないと思います。

主題歌(ジャニス・イアン)がオープニングとエンドロールに流れるのも
映画を盛り上げていてよかったと思います。

モリケンだけはおそらくまた見てもイラっとすると思いますが。( 一一)

古い映画を自ら見ようという気持ちになかなかなれない人も多いと思いますが、
今だからこそ見た方がいい、いや見るべき映画だと思った「復活の日」でありました。
(紹介してくれたlovin姐さんに感謝!)









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映画「フリー・ガイ」を観る [映画(は行)]

YouTubeの広告で頻繁に出てきたので刷り込みされたように映画館に行って
観た作品です。(配給会社の思うツボです(笑))
freeguy.jpg
あらすじはYahoo!映画さんより。

銀行の窓口係ガイ(ライアン・レイノルズ)は、平凡で退屈な毎日だと感じる一方で、
連日強盗に襲われていた。
疑問を抱いた彼は、襲ってきた銀行強盗に反撃を試みると撃退でき、
さらに強盗から奪った眼鏡を掛けると、街の至るところにこれまで見たことのなかった
アイテムやミッション、謎めいた数値があった。
やがてガイは、自分がいる世界はビデオゲームの中で自身がモブキャラであることを知り、
愛する女性と街の平和を守ろうと正義のヒーローを目指す。


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爆笑!

予告編で観ていたよりも私には楽しく思える作品でした。(^-^)

おそらく、オンラインゲームを普段から楽しんでいる方にはもっと親近感が湧く、
というか身近なこととして(ゲームに埋没する感覚で)楽しめるのではないかと
思います。(私はオンラインゲームはやりませんがそれでも楽しかった)
逆にゲームが好きすぎて突っ込みどころ満載で楽しめない人がいるかもしれない、
でも私はそういう知識がない分素直に楽しめたというのが正直な感想です。

オンラインゲームに現実の人がアバターを使ってオンラインゲームで戦う、
戦う街もゲーム上の架空の街なら、周囲の人たちもゲーム場の架空の人々。
英語ではNon Play Character(NPC)と表現されていますが、
字幕ではモブ(背景)キャラ、と和訳されていて、背景なので毎日同じ行動パターン、
そうやってプログラミングされているのですが、ゲームのプログラムにAIを組み込んで
あるので、ゲームの背景キャラ(それぞれキャラ設定されている)がAIによって
進化して、プレイヤーと戦ったりするのですが、戦うだけでなく困っている人を助けたり、
ゲーム上ではありえない行動をとるたえ、プレイヤーの間で話題になるという展開が
ゲーム未経験の私には展開が読めずにドキドキな感じで、最後の最後、
ああそうなっちゃうのー、でもそれがいいかもー、的な想像していない結末ながら
ホッとして見終わるという映画でした。

ゲームを開発者のキーズがモブキャラのガイを設定する時に、マライヤの古い曲が好き、
好きなアイスはバブルガムアイスなど、それがゲームに入り込んだミリーのツボに
はまるというのも、キーズがゲームの共同開発者だったミリーを念頭に設定した、
ということに気づくのが本当に遅かった私ですが(もっと早く気づけよお前と自分に突っ込み)
ゲームの中でも人間らしい場面があったりするとホッとしますね。
(とはいえ、ゲーム自体は殺し合い、武器の奪い合いばかりなのですが(笑))

キーズとミリーが開発したゲームを買い取って莫大な利益を上げるゲーム会社の社長、
アントワンを演じていたのがどこかで観たことあるなと思ったら、
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  • 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
  • 発売日: 2020/12/02
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この作品でアドルフも演じていたワイティティ監督でしたが、
これがまた金に目が食らうしょーもないキャラクターを好演されていました。

後半でツボにはまったのが、ゲームの続編に投入するためにつくったキャラター、
ガイがゲームに隠された秘密を見つけにいこうとすると知って、
まだ半分も出来上がっていないうちにアントワンが投入すると、
セリフが(TBD)⇐To Be Decided、みたいな表示になったりするのが
メチャクチャツボでした。

制作会社の20世紀FOXがディズニーに買収されたことで、
キャプテンアメリカの盾や、超人ハルクの腕、スターウォーズのライトセーバーが
次々と出てくる場面はアメコミもスターウォーズも縁遠い私にもわかる演出で
テンポよい展開の中で爆笑できました。

AIによって背景キャラに自我が芽生えるのがよいことなのかどうか、という
疑問はありますが(ゲームの中だからいいだろうって話なんですが)
ガイだけでなくガイをとりまく他の背景キャラたちが活き活きとしていく様子を
観るとなんだか私まで楽しい気分になってしまった、予告編からは想像できない
内容で最後まで楽しめた「フリー・ガイ」でありました。


(映画を観終わった後もこの曲が耳から離れない(笑))


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