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映画「未来を写した子どもたち」を観る [映画(ま行)]

昨日、年末年始映画鑑賞記の記事をアップしましたが、
鑑賞した映画で特に印象的だった2作品については、別記事で書くことにしました。




以前、「闇の子供たち」という本について記事を書いたのですが、

闇の子供たち (幻冬舎文庫)

闇の子供たち (幻冬舎文庫)

  • 作者: 梁 石日
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2004/04
  • メディア: 文庫

この本で、海の向こうで貧しい家に生まれた子供たちが売り飛ばされ
売春窟で働かせられているという現実を知りました。(本自体はフィクションですが)

まずは知ることから、と思って読んだ本ですが、映画版は色々な規制があったとはいえ
ちょっと残念な出来上がりでした。

闇の子供たち プレミアム・エディション [DVD]

闇の子供たち プレミアム・エディション [DVD]

  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • メディア: DVD

観ないよりは観るべきだとは思ったのですが、
やはり原作の方がずっと重たく自分の心に響いてきたような気がします。 


 

今回は上記の作品の関連で探した映画「未来を写した子どもたち」を観ました。

未来を写した子どもたち(特別版) [DVD]

未来を写した子どもたち(特別版) [DVD]

  • 出版社/メーカー: video maker(VC/DAS)(D)
  • メディア: DVD

原題は“Born In Brothels”、和訳すると「売春窟に生まれて」という感じですが、
それだとちょっと悲しいというか、邦題の方が明るい希望があるような気がしますね。




舞台はインド・コルカタの売春窟。


売春を生業とする母を持つ子供達に、
ザナ・ブリスキというイギリス人女性カメラマンが写真を撮る楽しみを教室を開いて教えていき、
子供達が売春窟で一生を終える、のではなく、外の世界で生きていく希望を持っていく、
という内容のドキュメンタリー作品です。


土曜日に開かれる写真教室にやってきて目を輝かせる子供達、
彼らが思い思いに自分達が住む空間や、時にはバスに乗って動物園や海に出かけて
自分達の思うままに風景を写真に収めていくのですが、その姿が実に生き生きとした表情で
画面越しに見ている私も彼らを応援したくなりました。

ザナ・ブリスキさん自身、自分が彼らに対してできることの限界を感じながら
子供達に接しているのが見ていてもよく分かるというか、
私一人が頑張ったところで子供達全員を助けることはできない、というジレンマを
感じているようにも見受けられました。

それでも、彼女は10~12歳くらいまでの子供達(10人くらい)に心から接し、
子どもたちが撮影した写真で個展を開催しながら、、彼らの将来のための資金を作る、、、
そういう活動を地道に行っていました。

売春窟という環境から子どもたちを明るい未来に導く為には、
子どもたちを親から離して寄宿学校にいれるのが良いだろう、と考えたザナさんが
色々な団体や学校と交渉するのですが、子どもたちの親が犯罪者であること、
更に、インドというお国柄もあってか手続きが遅遅として進みません。
また、学校に入れる為には、子どもたちにHIV検査も受けさせなければならない、など
越えなければならないハードルが沢山あるのでザナさんも挫けそうになるのですが
長い時間をかけた彼女の努力が子どもたちの未来に向けて着々と実を結んでいきます。


女の子達は、自分たちもいずれ母親と同じことをしなければいけないことを理解しています。
大きくなったら客を取る、そういうことは彼女たちもしたくないのですが、
自分の育った環境や家族を思うと致し方ないのかも、、と諦めている部分もあります。
私もいずれそうなるかも、、とカメラに向かって話す表情がとても悲しそうで
どういう環境に生まれるか、選べないとはいえ、自分がそういう境遇に生まれたらどうだろう、
などと考えながら見ておりました。。(考えてもなかなか想像できませんでしたが)


作品の中で一番印象的だったのが、
ザナさんに写真の才能を認められた11歳の少年アヴィジット。
アムステルダムで開催される子どもの為の国際的なイベントに招待されるのですが、
パスポートを取得するだけでも出生届などの手配からはじめなければならず
ザナさん他の根気強く多大な支援によりやっとのことで発行してもらいます。

が、パスポート取得手続きを行っているところで、アヴィジットの母親が台所で焼死します。
偶然の事故ではなく姑や夫によるものだったのではないか、と思いましたが、
鑑賞後にいろいろと調べていたら以下のサイトで「台所での焼死」の意味を知りました。

→ http://www.ryokojin.co.jp/tabicine/bornintobrothels.html

持参金が少ないことを理由に殺されてしまうことがある、という事実に驚きましたが、
アヴィジットの母親の死も事故として処理されてしまい、アヴィジットはやる気を失い
写真教室にもこなくなってしまいます。

アヴィジットのパスポート申請が受け付けられたかさえ確認できないというインドのお国柄、
ザナさんは売春婦の子どもだからダメなのかと諦めそうになりますが、
FUTURE HOPEというNGOの支援によってパスポートを発行してもらうことで
アヴィジットは、アムステルダムを決意し、初めてのる飛行機、初めて見る海外の景色、
色々な国の子どもたちの交流を通じて、自分の未来を思い描き進学します。

また、他の子どもたちは、一部は寄宿学校へ入りますが、
一部の子どもたちは親の承認が得られず進学を断念するなど、各々進む道が分かれていきます。


特典映像の3年後の子どもたちを見ると、(身長も伸びて3年間での成長振りには驚きました)
寄宿学校で勉強を続けている子、地元の高校に進んだ子、
売春窟での生活を続けながら(客はとっていない)職業訓練校への進学を夢見る子、
FUTURE HOPEの尽力で寄宿学校に入学を認められた子、
そして、写真の才能をザナさんに認められたアヴィジットはアメリカの高校への進学が決定、
と、進む道は様々とはいえ、将来への希望を抱きながら明るく生きていけるのではないか、
と映像を見ながら(直接知らない子どもたちなのに)嬉しい気持ちになれました。


私自身は日本の会社員の家に生まれ、学校に通い、就職し、ひもじい思いをすることもなく
平凡ながら日々を過ごしていますが、日頃の悩みや不満など本当に瑣末なもんだな、なんて
この作品を見てしみじみ思いました。

kenさんのお陰で見ることが出来た「シング・フォー・ダルフール」でもそうでしたが、
小さい島国日本で生まれ育っていると、世界のどこかで起きていることにも気づかず
安穏としてしまいがちではありますが、まずは知ることから始めることが大事なんだろう、と
今回改めて思った「未来を写した子どもたち」でありました。

皆さんも興味とお時間がありましたらぜひご覧くださいませ。(^_^)


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