映画「それでも夜は明ける」を観る [映画(さ行)]
超久しぶりに目黒シネマまで足を運んでみた2本の内の1本。
あらすじはAmazonさんより。
1841年、ニューヨーク。
家族と幸せな日々を送っていたバイオリン奏者ソロモンは、ある日突然誘拐され、奴隷にされる。
彼を待ち受けていたのは、狂言的な選民思想を持つエップスら白人による目を疑うような差別、
虐待、そして“人間の尊厳"を失った数多の奴隷たちだった。
妻や子供たちと再び会うために生き抜いた11年8カ月と26日間とはー。
南部の農園で酷使された黒人奴隷に対して、アメリカ北部には自由黒人という存在がいたことは
この映画でも描かれていましたが、これはタランティーノ作品らしく
描写はかなりえぐい部分もありましたが、黒人の白人に対する復讐劇ともとれました。
が、今作はまったくことなる作品というかずっと重たい気分で観続けた映画でした。
アフリカからの奴隷を調達できなくなって南部が不足する奴隷を調達した方法として、
北部の自由黒人をだまして奴隷に仕立てて売る商人から買うという方法。
それがいかに惨いことか。
自分は自由黒人であるといっても認められず、違う名前をつけられ、
人間の尊厳などない、単なる労働力であり、家畜同様とみなされる、、
それでも、最初に行った農園では、効率的な作業方法を提案して農園主に認められ
存在感を表すソロモンですが、そこから転々と身売りされるソロモンへの扱いは
どんどん酷いものになっていきます。
自分は自由黒人であり奴隷ではない、いつかここから家族の元に戻る、、
その思いだけで、表面上は白人の言うことを聞いているふりをしながら
いつかその日がくることを信じて生きていく姿は見ていて切ないものがありました。
その途中、信じた白人に裏切られたり、仲間の奴隷が拷問を受けても助けられない自分がいたり、
様々な経験を経て、出会ったカナダ人のお陰で家族の元に戻れるわけですが、
ソロモンは自由黒人であることを証明されて過酷な環境から脱出できたものの、
元々が南部の奴隷の人たちはそれさえ信じていきられない、一生過酷な環境で生きていくしかない、
そう考えがら後半は見てしまった感もあり、ソロモンの自由を喜ばしく思う一方、素直に喜べずに
観終わりました。
奴隷をひどく扱う白人たちは誰もがみな熱心なクリスチャンですが、
聖書を読み、たいそうなことを言う割に、黒人奴隷に対してはそれが当てはまるとは考えない、
自分に都合のよい解釈しかできないという場面が時折出てくるのには不快感しかありませんでしたが、
奴隷について描き、広く認識してもらう、という点ではよい映画なのかなと思います。
おそらく、こちらの方がもっと奴隷については細かく描いているとは思いますが。
タランティーノ作品と異なり、とにかく重く重く展開していく作品でしたが、
自由になったソロモンがその後裁判でも黒人という理由で非常に不利であったことなどが
文字で淡々と述べられるのを観ると、過酷な環境に置かれたことに対して国が正当に裁かなかったことが
分かります。
黒人差別問題解決に大きく尽力されたキング牧師については教科書でも学びましたが、
その前の時代についてはよく知らなかった部分を知ることが出来て、
この映画を見てよかった、そう思いました。
ブラッド・ピット(カナダ人役で終盤登場します)が共同制作していますが、
こういう問題というか史実について、映画がつくられたということの意義は大きいのかな、と。
邦題はどうかな、って感じがしますが、
アパルトヘイトを描いたこの映画などにも影響された邦題なのかしら。
(この作品の原題は“Cry Freedom”)
原題は“12 Years A Slave”、 12年間奴隷として、なので、
夜明けとか邦題つけるものな。。。。
ソロモンを演じた、キウェテル・イジョフォー、
この作品で見てから気になっている俳優さんですが、
今作でも尊厳を失うことなく強い信念をもつ姿にジンときました。
そのほかにも農園主にベネディクト・カンバーバンチ、選民主義者役にマイケル・ファスベンダー、
その妻にサラ・ポールソン、農園主に弄ばれる女性奴隷パッツィーを演じたルピタ・ニョンゴ、
ソロモンを最初に奴隷として売りとばす商人にポール・ジアマッティ(一瞬誰だか気づかず)、
なかなか豪華な配役だったのですが、奴隷の作業現場を見張る役のポール・ダノについては、
ここでの引き籠りニイチャンのイメージがつよかったので、
「え、こんなに大人になって、しかもこんな役を」、、、、驚きました。
奴隷を見下した歌を歌い続ける嫌な奴ぶりが本当に堂に入っていたので。。。
自由黒人のソロモンが誘拐され奴隷として過酷な状況の中、家族と再会するまで、
奴隷の悲惨な扱いなどを交えて描かれた作品として、かなり見ていて辛い場面も多いのですが、
私は見てよかったと思った「それでも夜は明ける」でありました。
元々、黒人を奴隷にっていうところから、
どうして同じ人間でそんな発想が出てくるのか、って思っちゃいますが、、
歴史って重いですね。
by lovin (2014-11-15 09:02)
lovin姐さん、こんにちは。
今でも白人至上主義みたいなみたいなものが存在しますが、
昔はもっとひどかったんでしょうね。
歴史は元に戻せませんが、こういう作品に出会えて良かったです。
by うつぼ (2014-11-16 10:32)