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映画「大川小学校 津波裁判を闘った人たち」を観る [映画(あ行)]

昨年、snorita姐、けーすけ兄と東北を旅した時に訪れた大川小学校、
伝承館でこの映画の存在を知り、田端のチュプキさんで鑑賞しました。
(昨年訪問した時の記事です)https://utsubohan.blog.ss-blog.jp/2023-08-24-11
大川.jpg

内容は映画.comさんより。

東日本大震災で多数の犠牲者を出した宮城県石巻市の大川小学校を題材に、
遺された親たちの10年に及ぶ思いを記録したドキュメンタリー。
2011年3月11日に発生した東日本大震災で、津波にのまれて全校児童の7割に相当する
74人の児童(うち4人は行方不明)と10人の教職員の命が失われた大川小学校。
地震発生から津波到達までは約51分、ラジオや行政の防災無線で情報は学校側にも
伝わり、スクールバスも待機していたにも関わらず悲劇は起きた。
その事実や理由について行政からの説明に疑問を抱いた一部の親たちは、
真実を求めて提訴に至る。
わずか2人の弁護団で、いわれのない誹謗中傷も浴びせられる中、
親たちは“我が子の代理人”となって証拠集めに奔走する。
親たちが延べ10年にわたって記録した膨大な映像をもとに、寺田和弘監督が追加撮影
などを行いドキュメンタリー映画として完成させた。


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政府、国会議員から自治体、お役所も隠蔽体質。
遺族の方々は自分の子供たちがどうして亡くなったのか、事実を知りたかった、
それに対して、学校や教育委員会などの行政がひたすら隠蔽した、
お子さんを亡くした遺族の方々の気持ちを踏みにじり保身に走る人達。

遺族の方々が撮影した10年間の動画を観ていると、
相手の立場になって考えれば隠蔽するはずもないのに、組織を守るため、
そして、自分たちの瑕疵を認めたくないばかりに隠蔽し続けた学校と教育委員会、
当時の市長、人の心を持たない人がどうして市民の生活を守ることができるのか、
憤りと残念で悲しい気持ちで観ている自分がおりました。

遺族への説明会、1回目から記録された映像と音声が流れますが、
生存した教師による当日何がおきたのか説明する内容が嘘ばかり、
精神状態が不安定な状態で説明会に出てくる負担はあると思いますが、
教育委員会や学校(当日不在だった校長)に嘘をつけと言われたのか、
自分で嘘をつこうと思ったのか、本当にそうだと思い込んでいるのか、
自分の責任回避のための嘘の説明に終始する姿は、この人は子供たちより自分が
助かるために山に逃げたとしか思えませんでした。

更に、遺族から、もし自分の子どもが亡くなったらどういう気持か、
と聞かれた当時の石巻市長の亀山氏は、
「もし自分の子供が亡くなったら、思いを償っていくという、
 自分自身に問うということしかない。
 これが自然災害における宿命だと思っております」
宿命という言葉を使ったことで遺族の怒りを買う場面、
この人も保身で心のこもらないことを平気で言えるような人なんだ、
首長って自治体に住む人たちのことを考えて行動しないといけないのに、
リーダーシップの資質が平時より非常時に見える、と思っている私にも
こんな奴、リーダーの資質ないんだからとっとと辞めちまえ、
と画面越しに思えるような態度でした。

その後の説明会でも、助かった生徒の証言などを隠滅(証拠破棄)、
説明会では真実を知ることができないと思った遺族の希望で立ち上げられた
検証のための第三者委員会も利権絡みのメンバーで構成されて中立性もなく
遺族の方々が提出した映像や資料も拒んで「調査はゼロからスタート」と
遺族の気持ちを踏みにじるような態度、調査結果も時間をかけた割に
津波到着時刻を当初の見解から変えてみたり戻したりといい加減。
結果として、遺族が選んだ方法が国家賠償請求訴訟だったわけですが、
手間も時間もかかり、精神的にも体力的にも厳しい訴訟を遺族の方々も
起こしたかったわけではありませんし、訴訟を起こさないで済む方法も
あったはずなのに、学校や行政が真摯に問題に向き合わなかったことで
訴訟に至ったというのが観ていてよく分かりました。

真実を知るための訴訟、そのためには自分の子供に値段をつけないといけない、
遺族の方々の葛藤は計り知れなかったと思います。
1人1億円として訴訟をおこしたことで心無い方々から金目当てと誹謗中傷を
受けたこともたくさんあったと思いますが、担当弁護士の吉岡弁護士と
齋藤弁護士(この方は豊田商事事件の国家賠償請求訴訟の担当もされたそうです)、
このお二人が遺族の方々に対して、
「弁護士任せにせず、皆さんが我が子の代理人弁護士になったつもりで
 自ら真相を追及すべきだ。それが津波で亡くなった子供たちに対する親の
 責任ではないか」
と説いたというのも凄いことだと思いますが、そこから遺族の方々も津波で証拠が
流されてしまった中で、学校から山に逃げる場合の時間を計測するなど自ら検証を行い、
遺族説明会の追加開催で証拠となる言質をとっていき、
一審での勝訴(現場過失のみ認められ危機管理マニュアル整備には言及なく控訴)から
二審での勝訴(危機管理マニュアル整備など学校設置者の責任も認められる)に至る、
勝訴しても亡くなったお子さんたちは帰ってこないことは理解した上での訴訟ですが、
現場だけでなく行政による緊急時の対応の過失が認められたことで、
同じ悲劇が起きないようになるのだと思いました。

上映後、寺田和弘監督と、生存したお子さんと亡くなったお子さんの父親で
今回の映画で映し出される映像の多くを記録した只野さん(オンライン)に
よるトークショーが開催されました。
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心無い人からの誹謗中傷を受けて大変だったと思いますが、
只野さんをはじめとした遺族の皆さんのお気持ちをサポートした弁護士の
吉岡弁護士と齋藤弁護士、また、映像にまとめて私たちに伝えてくれた
寺田監督のお陰で今回の訴訟についても知ることができましたが、
水底を掬う (大川小学校津波被災事件に学ぶ)

水底を掬う (大川小学校津波被災事件に学ぶ)

  • 出版社/メーカー: 信山社
  • 発売日: 2021/11/21
  • メディア: 単行本
映画上映後この本をチュプキさんで購入し、寺田監督にサインをいただきました。
寺田監督にこの映画の知るきっかけを聞かれたので昨年大川小学校を訪れたことを
伝えましたが、映画の中では詳細が伝らえていない裁判の様子について、この本で
知りたいと思います。(まだ読んでいる途中)

映画の最後に大川小学校の校歌が流れるのを聞きながら、今回の訴訟を機に、
国や自治体、学校などの隠蔽体質がなくなっていってほしいと思った
「大川小学校 津波裁判を闘った人たち」でありました。









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