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映画「旅人は夢を奏でる」を観る [映画(た行)]

飯田橋ギンレイホールで観た一本。

200.jpg ミカ・カウリスマキ監督作品

あらすじはYahoo!映画さんより。

 ティモ(サムリ・エーデルマン)はピアニストとして名声を得たものの、
私生活では妻と子どもにそっぽを向かれていた。
そんなある日、ティモの前に怪しい男が現われる。
それは、3歳の頃から音信普通の父親レオ(ヴェサ=マッティ・ロイリ)だった。
世界中を旅してきたという自称・元ミュージシャンのレオは、
家族や親戚に会いに行こうとティモを連れ出し北へと向かうが、レオは秘密を抱えていて……。
  




監督の名前がカウリマスキと聞いて、

一瞬この人かと思ったら、この監督(アキ・カウリスマキ)のお兄さんでした。

なので、作風は違います。(当たり前か)

フィンランド映画だからなのか、素朴であか抜けない(いい意味で)、あざとさがない感じが
非常に心地よい映画でした。


神経質で仕事仕事と家族を顧みないでいたら、妻が子供を連れて出て行ったティモ、
そこに現れたのがアル中みたいなデブなオッサン。
そのオッサンが35年ぶりに再会したティモの実父と知らされ、
あり得ない、受け容れられない、とショックの面もちのティモだったのですが、
2人で車の旅を始めることになり、2人の醸し出す空気が変わっていく様子が、
くすっと笑えるというかなんというかなんというか、
過剰な演出もなく、くすくす、あはははーって感じて見続けられました。

レオは過去になにかある様子。
冒頭の空港の場面で、おせっかいなオバちゃんに偽パスポート(名前も偽名)を見られ、
ティモにもそれを観られてしまうのですが、それって何か事情があってのこと。

おまけに、ティモの家に押しかけた後、ストッキングかぶってスーパーで強盗を働き、
更に車を拝借して(青と赤の線を接触すればエンジンかかるよ、と平然とティモに言うくらいで)
そのくらいのふてぶてしさというか、犯罪意識もない様子。

でも、そんな場面もなぜか笑えてしまったりします。

最初にレオが向かったのがティモの姉の家。

「だって、俺は一人息子だって言ってただろ!」というティモに、

「そうだよ、息子は一人だよ、でも娘もいるんだ」と平然と答えるレオ。(笑)

要は腹違いの姉なのですが、その家にいくときに何か手土産でも、と
途中で大きな魚を釣ってもっていく。 
とはいえ、お土産に受け取った姉(レオにとっては娘)は突然の訪問(しかも夫婦は事の最中)、
そして、魚のお土産に当惑しまくるのですが、なんとなくレオの雰囲気にのまれ、
気付けば和気藹藹な雰囲気になっていきます。

その次はレオの母。 
ティモの祖母に会いにいきますが、施設に入っているのでまあボケてるし、
会話がずれたまま、それでもほんわかした再会(レオは初めて会う)で終わります。

途中、バーで意気投合してレオとティモとで「枯葉」を歌って、
美人母娘と会っていいことしちゃったりするものの、実は財布すられてトホホホ、
そんなときにガス欠。(笑)
レオは満タンにして逃げればいい、とティモをそそのかし、実行。

で、その次に、家を出ていったティモの妻と娘を訪ねて。

初めまして!と明るく接するレオのお陰でティモは妻とよりを戻すことが出来たりします。
(娘の前で必死に走って凧揚げするティモの姿に場内(笑))

そして、次に向かったのが、レオの妻だった女性、ティモの実の母親のところなのですが、
(ティモが実母だと思っていた人は実は養母だったことが判明します)
そこで、初めてティモはレオがどうしてティモが幼い頃に手放したのか、知ることになります。




結末は悲しいながら、ハッピーにも思えるような終わり方です。

最初、画面に現れるレオは、「うわぁ~、このオッサン、クサそう」というのが第一印象、
そのくらい演じていたヴェサ=マッティ・ロイリの怪演なのですが、
ただのダメダメおやじだと思っていたレオが、35年ぶりにティモの目の前に姿を現し、
車に乗せて一緒に北に向かっていった理由が見ていて分かって最後はうるるるる。。。。。
(英語の題は「Go North」なので、車はひたすら北に向かうようです)

スマホ、スカイプ、、今の世の中にありながら、アナログなレオに振り回されるティモ、
2人が遺伝で糖尿病を患い、各々がお腹にインシュリン注射をする姿を見ると、
離れていても血は繋がっているんだな、35年ぶりに会っても一緒に過ごしていくことで、
あっという間に距離が近づき、ティモはレオのお陰で仕事だけでなく家族も大切にする、
実に人間的な人間に生まれて変わっていく様子を見ていて、
観終わった後は爽やかな気持ちになれました。

ドラマティックな展開や演出を求める方には合わないのですが、
ゆるやかな時間の流れの中で進む展開を楽しみたい方にはぴったりかと。

レオが時折ティモに「人生は楽しまないとな」というのですが、
そうだよね、人生は楽しまないとね、なんて同感に思いながら、
くすくす笑って最後にほろっとする、気持ちが優しくなれる 「旅人は夢を奏でる」でありました。


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