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亀戸東庵の「そばきり寄席」を聴く [落語・お笑い]

最近すっかり愛読書の「東京かわら版」で見つけた「そばきり寄席」へ。
定席寄席も楽しいのですが、お蕎麦屋さんでの寄席というのは初めてです。

今回どうして行こうと思ったかというと、
昨年末の「東京オーガニックボーイズ」に出ていた二つ目の古今亭菊六さんが
出るというので、日頃すっかり寿輔ワールドに浸かっている私も
「たまには若い落語家もいいわねぇ」と、いそいそと足を運びました。

最寄駅は総武線か東武線の亀戸ですが、
京葉線沿いを千葉方面にひたすら10分ちょっと歩くので少々遠く、
まっすぐ歩けば着く筈が全く着かないので一瞬迷子になったかと思いました。

開演18時半を少々過ぎたところでお店に入ったのですが、
普段は小上がり席(4人掛けのテーブル×3つくらい)と、カウンター7席くらいの
非常に狭いところに25人(以上)がギュウギュウに座るという状態。
私はテーブルを撤去した小上がり席に座ったのですが、
板の上に薄いじゅうたんを敷いただけ、という雰囲気の小上がり席で座布団もなく、
最初正座したのですが「すぐ挫折」。 結局、体育座りで見ることにしました。
酸欠になりそうな空間の中、18:35開演。
今回は、江戸賀あい子さんというミュージシャンとのコラボ企画ですが、
最初に出てきたのは古今亭菊六さん。 
 噺は「金明竹」。

道具屋で店番をしている与太郎は、
雨宿りをさせてほしいと店に入ってきた男に店の主人の蛇の目傘を渡してしまう。
それを知った主人は与太郎を叱り、
「貸し傘はあるが、骨はバラバラ、皮は破れて使い道がないので
裏に放り込んである」と答えるようにと言う。
すると、ネズミ捕りに「猫」を貸してほしいとやってきた隣人に対して、
「貸し猫はあったが、骨はバラバラ、皮は破れて使い道がないので、
裏に放り込んである」と答えてしまう与太郎。 


下線部の「裏に放り込んである」という部分なのですが、
1月に新宿末広亭に行った時、桂米太朗さんがこのネタで、
縄で縛って裏に放り込んである」と言っていたのを
菊六さんは「縄で縛って」が抜けていてちょっと物足りなかったかな。
この噺のように古典落語でも教わる師匠によって変わるものなんでしょうか。


 

それを知った主人は再び与太郎を叱り、
「猫は今サカリがきてとんと家に寄り付かなくなった。
たまに帰ってくると海老の尻尾でもたべたと見えてピーピー垂れ流すので
マタタビを舐めさせて寝かしてある」と答えるようと言い聞かせる。
と、今度やってきたのは目利きをしてほしいという大和屋のお使い。
「旦那は今サカリが来てとんと家に寄り付かなくなった。
たまに帰ってくると海老の尻尾でもたべたと見えてピーピー垂れ流すので
マタタビを舐めさせて寝かしてある」と与太郎は答えてしまう。

それを聞いた主人は自分のことを可笑しく言われて恥ずかしいので
与太郎をひどく叱った後、大和屋まで出かけていく。

すると、今度やってきたのは、中橋の加賀谷佐吉からの使い。

「わてな、加賀谷佐吉から参じました。
 先度、仲買の弥市が取り次ぎました道具七品の内、
 祐乗・光乗・宗乗三作の三所物。
 ならびに備前長船の則光、四分一拵え横谷宗珉小柄付の脇差な、
 あの柄前は旦那はんが古たがやと言やはったが、あれ埋もれ木やそうで、
 木ぃが違うでおりますさかいにな、念の為、ちょっとお断り申します。
 次はのんこの茶碗、黄檗山金明竹ずんどの花活、
 古池や蛙飛び込む水の音と申します。。。
 ありゃ、風羅坊正筆の掛け物、沢庵木庵隠元禅師張り混ぜの小屏風、
 あの屏風はなもし、わての旦那の檀那寺が兵庫におましてな、
 へい、その兵庫の坊主の好みます屏風じゃによって、表具にやり、
 兵庫の坊主の屏風になりますとな、かよう、お言伝願います」

物凄い早口関西弁でまくしたてるので与太郎は何を言っているのか全く分からない。
店のおかみさんを呼んでもう一度言ってもらうが、おかみさんも全く分からない。
更にもう一度言ってもらうが、本当に何を言っているのか分からないと
2人が思っている内に使いは帰ってしまう。
そこに主人が帰ってきたので、何を言っていたのか分からなかった使いの言葉を
おかみさんは何とか主人に伝えようとするが、思い出しながら喋る言葉は支離滅裂。
そして「古池や」を思い出し「古池に飛び込んだんです」と伝えるおかみさんに
「古池に飛び込んだ?なんだいそりゃ。
 あの人には道具七品預けてあるんだが買ったのかなあ」と聞く主人に
「いえ、買わず(蛙)です」とおかみさんが答えてサゲ。

 

周りの(ご近所さんと思しき)オジサンオバサン達はドッカンドッカン大爆笑でしたが、
私は最初の「縄で縛って」が抜けていたのがずっと引っかかってしまった感じ。
なーんて、素人の私がこんなことを気にするのもどうかと思うんですけれど、
聞いたばかりの噺だっただけに気になって気になって。。
これが寿輔師匠ならどんな噺でも自分流にしちゃうのでどーってことないのですが、
他の噺家さんになるとそれが受け容れられない初級者なもので。。。
とはいえ、関西弁でまくし立てるところなどは非常に面白かったです。

続いて、江戸賀あい子さんの歌。

オリジナルの歌5曲(“PASSION”“鐘の街”“Be My Love”など)と
シャンソン(“私はヴィオロン”)の6曲を歌ってくれました。
ご本人も言っていましたが、
明るいお蕎麦屋さんの店内(にグランドピアノが置いてあるんですが)で聴くよりは、

薄暗いバーでチビチビ飲みたい大人の雰囲気漂う音楽でした。

落語で笑って音楽で寛いだ後、少々の休憩を挟んで、 
再び菊六さんの登場。噺は「転宅」。
日本橋浜町に住むお妾のお菊の家から、夜も遅くなったので、と、
旦那が50円を渡してしっかり戸締りするようにと言いながら帰っていった。
お菊が旦那を外で見送る間に、それまでの様子を観ていた一人の泥棒が
家の中に入って、旦那のご馳走の残りをウマイウマイと食べお酒を飲みながら
すっかり寛いだ状態でお菊が戻って来るのを待っていた。
家に戻ってきたお菊は、自分の家の中で勝手に食べて飲んでいる男が
「俺は泥棒だ、さっき旦那に貰った50円を出せ」と凄むのを見て驚くが、
咄嗟に機転を利かせて「自分も昔は泥棒だった」とウソをつく。 
それを聞いた泥棒はお菊の言うことを信じ込み、
あの50円はお菊が旦那と別れ話をして貰った手切れ金の半分、
明日の朝残り半分を貰うことになって晴れて独り身になれる。
度胸のある男と夫婦になりたいと思っていたところにやってきたのがアンタ(泥棒)だ、
アンタのような男と夫婦になりたいけれど、もう女房もいるんだろうね、といわれて
舞い上がってしまう。
そして、俺はヤモメだからオマエと固めの盃を交わして夫婦になりたいと
お菊にお願いし、早速、固めの盃を交わしてしまう。

これで、オマエと俺は夫婦だから、今日はここに泊まっていくよ、という泥棒に
うちの旦那はとても焼きもち焼で、私と別れるまでは、と、
2階に柔の先生を用心棒に置いているから今日のところは帰ってほしい。
明日の朝、旦那が手切れ金を持ってやってくるから、昼前に来ておくれ、
もし、旦那が帰っていなかったら家の前にタライを置いておくから、
もしそうなっていたら家には入らないでおくれ。
そうそう、もう夫婦なんだからアンタのお金も預かっておくよ、
沢山のお金持って外に出たら心配だからね、というお菊の言葉を信じ込み
お金を渡して帰った泥棒は翌日の昼、いそいそとお菊の家の前にやってきた。
すると、家の前に置いてあるタライ。
まだ旦那がいるのか、仕方ないなあ、と時間をつぶすが
いつまで経ってもタライは外に置かれたまま。

一体どうしたのかと、近くのタバコ屋に言ってお菊の話を聞こうとすると、
昨日お菊さんのところに泥棒が入って、、、と嬉しそうに話し出すタバコ屋。
驚いて話を聞くと、
そいつは、とんでもなく間抜けな泥棒で、
お菊が昔泥棒だったと言ったウソと、夫婦になりたいというお菊の言葉、
平屋だから2階なんてないのに2階に柔の先生がいるって話を信じ込んで、
お菊と約束した通り今日の昼やってくるというから、
こうやって皆で間抜け野郎がやってくるのを待っているんですよ、
お菊さんは今朝「ご転宅(引越し)」しちゃったというのにね、
というタバコ屋のお言葉に自分が騙されていたことを知って唖然とする泥棒。

お菊さんが元義太夫のお師匠さんだと聞いた泥棒がひと言、
「義太夫の...ああ、道理でうまく語りやがった...」でサゲ。

なかなか聞き応えのある噺で周りの人たちは笑いの渦だったのですが、
私自身は(小)笑いくらいで、ちょっと気になることがありました。

菊六さんは20代で二つ目になったばかりなのに本当に上手なのですが、
上手すぎちゃって笑いにくいというか、「技術先行」感があるというか、
何となく年の割にというか二つ目さんの割にジジ臭い話し方というかなんというか、
何と書いたらよいのか自分でもよく分からないのですが、
以前の記事でも書いたように、聞き手と話し手の相性という点では、
前回聞いた時ほど面白く聞こえなかったような。。
多分、真打になるのも早いのでしょうが、
噺の上手さ以外で何かキラリと光るようなものがあるといいな、と
少々厳しいのですが思ってしまった「そばきり寄席」となりました。

この寄席の後、希望者のみ自費で出演者を囲んで打ち上げがあったのですが、
ギューギューに座っていた店内にテーブルを入れた状態で
観客全員が座って食べられるはずがないだろうなと思ったのと、
一人で初めて行ったせいか「アウェー」気分だったので残念ながら出席できず。
次回行くことがあれば打ち上げにも参加したいものです。。。(意外と小心な私


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最近はこういう「そばきり寄席」というような、定席の寄席でないのがけっこうあるようですね。
先日、月島を歩いていると「もんじゃ寄席」というのがありました。あいにく時間が調整できず行かれませんでしたが、その気でアンテナを張っていると面白いかもしれませんね。
by (2007-02-24 12:52) 

うつぼ

cocoa051さん、こんばんは。
最近は飲食店での寄席、本当に多いようですね。私は今回初めて行きましたが、定席寄席とは違う親近感がありました。二次会を考えると「もんじゃ寄席」というのも面白そうですね。
by うつぼ (2007-02-24 22:21) 

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