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本法寺寄席で「芝浜」を聴く [落語・お笑い]

久しぶりの本法寺寄席で田原町の本法寺へ。 (といっても実は先週の話)
今回は第87回目。 長く続いている寄席です。

本法寺とはなし塚について→ http://www.aurora.dti.ne.jp/~ssaton/meisyo/honpouji.html

落語に縁のあるお寺の本堂で落語を聴くという非常に有り難い会なのですが、
この本法寺寄席を主催している三遊亭圓遊さんが、
いつのまにか埋もれてしいまった古典落語を探して披露すると廓噺だったりして、
仏様の前で聴くというシチュエーションと相まってちょっとドキドキすることもあります。

18時到着後、本堂の中に入ると相変わらず観客はシルバー層多し。
私でさえもが「かなり若い客」という雰囲気の本堂内で、せっせと椅子を運んでは
「どうぞどうぞ、こちらにお掛け下さい」と客を案内する圓遊師匠の姿を見ながら
「還暦過ぎた師匠がこんなことやっちゃって(悲)」などと思っていると、
100名くらい入ったところで、18:15開演。

最近の本法寺寄席では、圓遊師匠の他に二つ目さんが3人くらい出るのですが、
今回は真打の柳亭楽輔師匠と2人で交互に話す会となりました。

「落語通風の会」の会長が圓遊師匠、副会長が楽輔師匠で、
今回会長の座を譲ることになったので披露の意味も含めて出演いただきました、
とパンフレットに書いてありました。。。。。。

 まず初めに楽輔師匠の「替り目」

酔っ払って家まで帰った亭主が家でも呑みたいと女房に言うと、                                                                                                                              外で呑んできたのだから寝るようにと言う女房。                                                                                                              それでも酒が呑みたいと粘る亭主に押し切られて女房が酒を出すと、                                                                                                               今度はツマミが欲しいと言い出す亭主。                                                                                                                                   仕方なく女房が外へおでんを買いに行くと、うどん屋の声が聞こえる。
ちょうど良かったと亭主はうどん屋を呼び止め、
銚子に入れた酒をうどんを茹でる湯の中につけて燗にしてもらうと
礼だけ言ってうどんも買わずに帰してしまう。
ずうずうしい亭主の態度に怒るうどん屋が再び町の中を売り歩き始めると、
おでんを買って帰ってきた女房が熱燗を見て事情を聞き顔から火が出る気分に。

急いで外に出てうどん屋に向かって、「ちょっと、うどん屋さーん」と呼ぶ女房だったが、
うどん屋はまた銚子をつけろといわれたらイヤなので気づかぬフリ。

「あそこの家で呼んでるよ」と近くの人に言われたうどん屋は、
「あの家には行きませんよ、銚子の替り目ですから。」と言ってサゲ。
                                                                                                                                                                        
以前、三遊亭夢太朗&遊三師匠による「替り目」を聞いたことがあるのですが、
最後まで聞いたのは今回初めて。
定席寄席の持ち時間は15分と短いので、
最後の主任(トリ)で出るときか、独演会等の持ち時間の長い時(30分)でないと
最後まで聞けないのですが、やはり最後まで聞いた方が面白いです。

また、酔っ払いの出てくる落語は元々面白いと思っているのですが、                                                                                              自分に重ね合わせたりできるから、なのかもしれません。(笑)

続いて、
三遊亭圓遊師匠の「甲府イ」 初めて聴く噺です

早くに親を亡くし、甲府で伯父夫婦に育てられた善吉は二十歳、
育ての親に恩返ししたいと身延山で断ち物願掛けをしてから江戸に来たが、
浅草寺で巾着を掏られて無一文になってしまう。
食べ物も買えずに町中を彷徨いながら、このままじゃいけない、仕事を見つけようと、
口入れ屋(奉公人などの斡旋を生業とする人)に向かう途中、
善吉は豆腐屋の店先で見たオカラを思わず食べてしまう。
盗み食いが見つかって袋叩きになりそうだったが、
事情を聞いた豆腐屋の主人が気の毒に思い、店で奉公させてもらうことに。
貰った仕事は、売れた歩合でお給料を貰う豆腐の行商。
「豆腐ィ、胡麻入り、がんもどき」 と、一生懸命売り歩くこと3年、
愛想のよく贔屓客がついた善吉を見初めた店の主人は、
年頃になった娘のお孝を善吉に嫁がせることにした。
遠慮しながらも善吉は承知し、豆腐屋の養子としてお孝と夫婦になり、
夫婦共に家業に励み、店は大繁盛、他にも土地を買って
居付地主(江戸時代、江戸町内の自分の所有地に住居を構えた町人)となる。

これで安心と隠居した店の主人夫婦のところにやってきた善吉、
江戸にやってきて10年経つが、甲府に一度も戻っていないので
身延山に御礼旁々里帰りしたいと申し出、お孝と共に出発する。

翌朝出発しようとする2人に、近所の人が「旦那、どちらへお出かけで?」と尋ねると、

善吉は振り向いて
甲府(豆腐)ィ、お参り(胡麻入り)、願ほどき(がんもどき)」 と答えてサゲ。

話自体は面白いのですが、どこかほんわかしている感じで、毒気が無い分、
ちょっと物足りないかな、と思ってしまいました。。。

ぶっ続けで1時間落語を聴いたので休憩かと思いきや、
「今日は休憩がないそうなので、このまま続けまーす」と再び楽輔師匠が登場、

 噺は「幾代餅(いくよもち)」

搗き米屋(米を精白して売る家)で働く清蔵の元気がないと心配した親方が、
一体どうしたのか聞いてみると「恋わずらい」したいう。
恋わずらいの相手は、寺で見た錦絵に描かれていた海老屋の幾代太夫。
幾代太夫は吉原で当代きっての人気を誇る花魁、お前の手が届く相手じゃない、
と諭す親方の言葉に一層がっかりして清蔵は益々元気をなくしてしまう。
その姿を見るに見かねた親方は、
「お前が一年間一日も休まず一生懸命に働けば、
その給金で幾代太夫の所へ連れていくから」と約束すると、
それを聞いてすっかり元気になった清蔵は、一日も休まず一年間一生懸命働いた。
それから一年後、親方に「約束した給金を下さい」と申し出る清蔵だったが、
親方は約束のことなんてすっかり忘却の彼方。
「お前が独立する為に貯めた金だ、一体何に使うんだ?」と問い質す親方に
一年前の約束をお忘れですか?と悲しんで答える清蔵。
清蔵の説明で約束したことを思い出した親方は、
「そこまで幾代太夫を思っているのであれば、行って来い」と
一年間の給金十三両二分に親方が足した一両八分の合計十五両を持たせ、
自分用に仕立てておいた着物を着せ、
大薮竹山という遊び人のヤブ医者を付き添わせて吉原に向かわせる。

野田の醤油問屋の若旦那、と身分を偽りながら念願叶って幾夜太夫とご対面、
一夜を過ごして幸せな気分で一杯の清蔵だったが、
幸せな時間はあっという間に過ぎてしまうもの、後朝の別れの段になり、
次はいつ来てくれるのかと幾代太夫に聞かれた清蔵は、
次に来られるとしてもきっと一年先だ、と思い、正直に自分の身の上を話す。

自分が若旦那ではなく奉公人だと言えば二度と幾代太夫には会えないだろう、
と思いながら話した清蔵だったが、幾代太夫は清蔵の正直な姿に感動し、
来年の春、年季が明けたら清蔵のところに行くので夫婦になってほしいと、
清蔵にお願いする。
夢のようだ、信じられないと思いながら、幾代太夫の申し出を快諾し、
幾代太夫に渡された持参金五十両を持って清蔵は搗き米屋に戻り親方に報告するが、
全く信用してもらえない。 (ま、当たり前の話ですね)
しかし、翌年の春、本当に幾代太夫は年季が明けて搗き米屋にやってきた。
めでたく夫婦となった幾代と清蔵は両国に店を構え、餅屋を開いて
「幾代餅」を夫婦で作って売ったところ大繁盛、めでたしめでたし。 という話。

楽輔師匠というと普段は酔っ払いや与太郎が出てくる噺しか聞いたことがなく、
ちょっと意外でしたが、実在のお女郎さんの話を基に作られた「幾代餅」に
愛はお金じゃないのねぇ、、、などとちょっとジンと来る話でした。 

 そして、本日最後の噺は、

  圓遊師匠の「芝浜」 これも初めて聴く噺

魚屋の勝は酒びたりで河岸にも行かず仕事もさぼり続けてばかり。
見るに見かねた女房が「いい加減仕事に行っておくれよ」と
早朝に嫌がる勝をたたき起こし身支度させて、芝の河岸に向かわせる。
河岸に到着するとまだ開いていないのを見た勝は、
女房が間違って一時間早く起こしたことに気づくが、
家に帰ってまた来るのも何だし、と、河岸が開くまで待つことに。
誰も居ない芝浜で顔を洗って煙管を吹かす勝、
何やら固まりのようなものが見えたので拾ってみるとそれは財布で大金が入っていた。
オドロキつつも喜び勇んで自宅に帰り数えてみると、
大金は二分金が96枚、計四十八両。
こりゃ大金を拾ったと、近所の仲間を呼んでドンチャカドンチャカ大騒ぎ、
大酒飲んで寝てしまった勝が二日酔いのまま目を覚ますと、

女房が怒っていた。

こんなに沢山食べて飲んで、酒代はどうするの?と怒る女房に、
昨日拾った財布があるだろう、と答える勝だったが、
そんなものは知らないと女房が言う。
焦って家の中を探し回る勝、しかし、女房の言うとおり財布は無い。。。。。
あれは夢だったのか、、、、これからは真面目に仕事しないといけないな、と
心を入れ替えた勝は酒を断ち、一生懸命仕事をするようになる。

それから3年。

真面目に働く勝のお陰で生活も安定し、
貯めたお金で店も大きくし使用人も2人雇えるようになった大晦日の夜、
勝が女房に一年の労をねぎらうと、女房は勝に財布を見せて正直に話すのだった。

3年前、勝が拾ってきた財布を見て女房は驚いた。
四十八両もの大金、横領すれば窃盗で死罪だ。
それに、このお金を持っていたら、勝は仕事もせずに飲んだ暮れてしまう。
悩んだ女房は、勝が寝ている間に長屋の大家に相談して、財布を拾ったと役所に届け、
勝には酔っ払って夢でも見たんじゃないの、とウソをついた。
財布は、持ち主が現れずに女房のところへ渡されたが一生懸命働く勝の姿に
大家に預かってもらうことに。
そして、3年経ち、もう大丈夫だろうと思ったから勝に正直に話すことにした。

女房の話を聞いた勝は怒ることなく、
酒びたりのダメな人間になりそうなところをお前は助けてくれた、
お陰で真面目な人間になることが出来た、ありがとう、と礼を言う。

そして、今まで頑張ってきたのだから久しぶりにお酒でも、と勧める女房に
そうだな、と言いながら盃に手を伸ばそうとした勝、だったが、盃を置いて一言、
「やっぱりよそう、また夢になるといけねえ」。   


非常に有名な噺にも関わらず寄席で聞いたことがなかったので、
今回じっくり聴けて女房の機転と優しさにジーンときてしまいました。

寄席に行って15分単位で入れ代わり立ち代わり出てくる噺家さんや色物さんを
見るのも非常に楽しいのですが、30~40分の噺をじっくり聴くのも非常に面白く、
今回4つの噺をじっくり聴いて私も「落語中級」に少し近づけたかな、と思った
本法寺寄席でありました。 


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堀越ヨッシー

最後の二席、「幾代餅」と「芝浜」は実にいい話ですね。
こういう心温まる噺もまた、いいもんですね。
by 堀越ヨッシー (2006-12-09 07:30) 

堀越ヨッシー

再び登場(笑)。
15日午後7時より文化放送で「芝浜」のラジオドラマをやるそうです。しかも、生で!...芝居部分だけでなく効果音もすべて生でやるそうです。大胆な試みですね。夫役は風間杜夫さん、妻役は石田ひかりさん、だそうです。うつぼさんならご存知だと思いますが、風間さんの落語好きは有名ですから、それが今回のキャスティングにつながったのかもしれません。オイラも過去2回ほど風間さんの高座を見た事があるのですが、落語本当に上手いです。ま、落語自体がある種の一人芝居な訳ですから、役者の風間さんが上手いのはもっともなんでしょうけど。今回はラジオドラマという事で、どちらかと言えば落語というより芝居よりになるんでしょうけど、なんかちょっと楽しみですね。
by 堀越ヨッシー (2006-12-09 16:59) 

落語は嫌いでないので、寄席にも行ってみたいと思います。ただ、なかなか決断がつきません。
by (2006-12-09 19:06) 

うつぼ

堀越ヨッシーさん、こんばんは。
2度もコメント&貴重な情報ありがとうございまっす。
最近ラジオを殆ど聞かない生活になってしまったのですが、落語をドラマ仕立てで、見ることなく耳だけで想像する、というのが興味津々です。落語って一人で何役も演じる点ではある意味役者さんと相通ずるものがありますよね。そう考えると同じ噺でも落語家さんによって全く印象が変わってしまうのも納得できます。
by うつぼ (2006-12-09 22:34) 

うつぼ

cocoa051さん、こんばんは。
寄席って行こうと思うまでふんぎりつきませんよね。私はこの本法寺寄席に友人の誘いで行ってから、数人で定席寄席(浅草演芸ホールや新宿末広亭など)に行くようになって、その後一人でもふらっといけるようになりました。一度行ってみると楽しいですよ。漫才や奇術、神楽などの色物も合間に入ってますし。
by うつぼ (2006-12-09 22:38) 

kou

私も、cocoa051さんと同じく、寄席に行ったことがなく。
外出はすきな方なのに、並んだりとかするのが好きではないせいかもしれません。
今回うつぼさんが紹介されたお噺も人情噺でじっくり楽しめるというものですね。(滑稽な話も好きですが。)
機会を作って行ってみようかな、と思います。
by kou (2006-12-10 09:17) 

うつぼ

kouさん、こんにちは。
寄席は昼11時過ぎから夜9時まで開いていて好きな時間に入って出たいときに出られるのがいいですね。浅草はちょっと古い上に酔っ払いがいるときもあるので、最初は新宿の末広亭の方がおススメかもしれませんね。
最近は少々混んでいますし(土日の昼は非常に混んでいるようです)、数時間見ていると中にはハズレ(ちょっとやる気のなさそうな噺家さん)もいたりしますが一度は行ってみる価値はあると思いますよ。
by うつぼ (2006-12-10 16:13) 

kikuzou

芝浜は円楽師匠のを20年ちょっと前に聞いた以来です。懐かしい(?)
いい話ですよね。
幾代餅は同じシチュエーションで紺屋高尾という話を聞いた気がします。
by kikuzou (2006-12-11 00:18) 

うつぼ

kikuzouさん、こんばんは。
円楽師匠の芝浜ですか、、羨ましいですね。
言われてみると確かに微妙に金額や職業が違っていたりしますが、シチュエーションは紺屋高尾と似ていますね。っていうか殆ど同じでしょうか。いずれにしても、ジンとくる噺なので、今度は他の噺家さんでも聞いてみたいと思います。
by うつぼ (2006-12-11 23:13) 

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