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「最悪」を読む [本・ゲーム・テレビ]

奥田英朗の「最悪」を読みました。

最悪 (講談社文庫)

最悪 (講談社文庫)

  • 作者: 奥田 英朗
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2002/09
  • メディア: 文庫

何でこんなタイトルの本を読んだかというと、、、

昨年末、怒涛の勢いで続いた忘年会、の後、
年が明けたら燃え尽きてなんだかすっかり腑抜け状態になってしまい、、
また、新年会が思ったほどなかったのも相まって最近すっかりアルコールも控え気味。
更に、公私にわたり色々な出来事がドドッと押し寄せてきてテンションがどうにも上がらず、
どよよ~ん、とした精神状態のまま(合間に呑みに行ったりはしてたんですけどね)気付けば2月。

だから、ということも無いのですが、
「最悪か・・・どんなもんで最悪なんだろう」と、題名に惹かれて思わず買ってしまいました。。

元々この作家は、

イン・ザ・プール

イン・ザ・プール

  • 作者: 奥田 英朗
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2002/05
  • メディア: 単行本

この本で散々笑わせてもらったので、
「最悪」というタイトルでも面白いのでは、という淡い期待もあり買ったのですが。。。



川崎で小さな鉄工所を営む47歳の川谷信次郎。
大手メーカーの下請けのそのまた孫請けでタイ人のコビー、物静かな20歳の松村を雇って
日々単価の安い仕事をこなし細々と暮らしている。
父親の仕事を嫌う年頃の娘に頭を悩ませ、
取引先のムリな注文にも夜遅くまで、また休みの日も働いて対応し、
不良品を出したとメーカーに叱られては頭を下げ、
近所に出来たマンション住民からの作業騒音の苦情を言われ、
しまいには市役所職員(環境課のお役人)にも責められる始末。
そんなところに取引先から仕事を出すから中古の工作機械を買わないかと持ちかけられる。
設備を入れれば仕事も増えて収入も増えて娘も進学させられる。。。
でも、設備を買うには銀行から借り入れしないいけないが大きなリスクを背負えるか悩む。。


かもめ銀行の北川崎支店に勤める二十二歳の藤崎みどり。
単調な窓口業務と毎日やってくるボケ老人柴田の対応、
出世のことしか考えず上司にゴマスリしかできない課長の嫌な態度にガマンしながら
半強制的に参加させられた新入行員歓迎キャンプでは嫌いな支店長によって強姦未遂。。。
家では高校生の妹がぐれて家出してしまい。。。
上司にも言えず銀行を辞めようと思っているとセクハラで訴えようと行内の課長代理に言われるが。。


プータローでパチンコでたまに稼いでぷらぷらしている二十歳の野村和也。
親と仲たがいして田舎を飛び出して川崎にやってきた後は、
パチンコ屋で知り合った年増のホステスと寝たり、仲間とトルエンを盗んで売りさばいたり、
その日暮らしで日々を過ごしていたが、、ある日仲間と工場に忍び込んでトルエンを盗んだところ
使った車がヤクザの車で足が着いてしまい、組の事務所に呼ばれて落とし前をつけるのに
500万円を用意しろと脅される。。。。


「イン・ザ・プール」のような爆笑はありませんが(そりゃタイトルがタイトルだし)
後半に、接点がないと思われていた不運な3人が不運に不運を重ねながら(負の連鎖ですね)
一つの事件に巻き込まれて共に行動すると、負の相乗効果で3人の運命が急降下していきます。

とはいえ、3人の中で気の毒で切なくなってしまったのは鉄工所の社長さんの川谷。

野村和也はちょっと甘えてるかな、という感じで、不運に転がっていくのは自業自得に思えなくもなく、
また、藤崎みどりも強姦未遂は気の毒だし、鼻持ちならない支店長や上司などに囲まれるのは
腹も立つだろうな、なんて同情も出来るのですが、この川谷が別格というか。

やっと独立した鉄工所で細々と下請けの最底辺で真面目に働いていただけだったのに
物事を杓子定規にしか図れない近隣マンションのジコチュー商社マンや
これまた杓子定規にしか話の出来ない役所のオッサン、
更には、陰でリベートを受け取るためだけに保管料が嵩む大きな中古工作機械を
信次郎に買わせようとする取引先によって人生転落の一途を辿り。。。。

3人の運命が交錯した後の展開は、あまりにひどくて途中から顔が笑っていたのですが、
人間、何か悲しいものや辛いものを通り越すと笑ってしまうのでしょうか。。。

最後の最後、3人がとりあえず、見た目だけでも最悪を脱してくれたことはホッとしましたが、
先が気になって600ページ超ありますが、非常にテンポよく読める物語です。

という訳で、登場人物3人に比べたら私なんて屁のカッパ、、、なんて思ったら
思わず読み終わった後に笑ってしまった「最悪」でありました。 


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コメント 6

kikuzou

屁のカッパって(笑)
なんか懐かしいフレーズですね。
by kikuzou (2008-02-06 07:36) 

satokot

そっかー。「最悪」は笑いに転じていくものなんですねー。なんとなく分かる気がします。
奥田英朗さんの本はテンポが良くておもしろいですよね。私も読みたくなってきました。
by satokot (2008-02-06 11:27) 

鉄工所のオジサン、借金抱えちゃうのでしょうか。。。真面目で立場の弱い人の話って聞いていてかわいそうすぎて、耐えられないことがよくあります。。
私の場合、気分が浮かないときにははちゃめちゃなコメディとかハッピーエンド物とか見て気持ちを上昇気流に乗せようとしますが、逆にこういった不幸物を読むと、さらに気分が下降します。 うつぼさんって強い方なんだなあと思います。自分が弱すぎなのかも。。
by (2008-02-06 11:35) 

うつぼ

kikuzouさん、こんばんは。
懐かしいフレーズ、と思うということは同じ世代ってことで。(笑)
by うつぼ (2008-02-06 23:49) 

うつぼ

satokotさん、こんばんは。
人間って墜ちて負のスパイラルにはまると笑ってしまうのかもしれませんね。
奥田英朗さんの本はこれで3冊目なのですが、本当にテンポよく読めるので、他の作品も読んでみたくなってます。。。(^^)
by うつぼ (2008-02-06 23:51) 

うつぼ

bonheurさん、こんばんは。
鉄工所のオジサン、、、借りに行った銀行でまたまた大変な目に遭うのですが、そこで、この3人が出会い運命が交錯する、、、という展開です。
私も普段はどんよりすると明るいものに走りますが、こういう本を手にとるのも時に新鮮なものですね。いつもはムリですが。(笑)
>うつぼさんって強い方
ぜーんぜん。強かったらドンヨリしませんって。(^_^.)
by うつぼ (2008-02-06 23:53) 

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