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「やじきた道中 てれすこ」を観る [映画(や・ら・わ行)]

映画「やじきた道中 てれすこ」を観る
 タイトルの「てれすこ」は落語の噺の題名。
wikipediaの説明を見て下さいね→ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A6%E3%82%8C%E3%81%99%E3%81%93

平日の日中に観にいったのですが、近所のシネコンの観客層は100%「中年」でした。(笑)


新粉細工職人の弥次さん(中村勘三郎)は、
品川宿の「島崎」で一番の売れっ子の花魁 喜乃(小泉今日子)に頼まれ、
贔屓客に夫婦の契りの印として渡す為の「切り指」を新粉で作るが、その数なんと47本。
新粉で作った偽装指を貰った贔屓客達(中には(麿赤兒演じる)エロ坊主も)は喜んで金を貢ぐが、
その金は若手花魁に人気を奪われつつある喜乃が花魁を辞めようと思って集めた金だった。
とはいえ、店の女将(波乃久里子)は簡単に喜乃を辞めさせるつもりはなく、
お前には大金を注ぎこんでいるんだから、身請けしてもらえないなら200両用意するようにという。

このままだと辞められないと思った喜乃は、
沼津で病に倒れた父に一目会いたいから、と弥次に嘘をついて、
足抜けを手伝ってほしいと懇願し、弥次も了承する。
そこに現れたのが木に紐を掛け、首をつって死のうとしていた喜多さん(柄本明)。
役者の喜多さんは、折角大役を貰ったのに緊張のあまり舞台で大失態を演じ、
観客のブーイングと共にクビになったことを悲しみ自殺しようとしていたのだった。

久しぶりに喜多さんと再会した弥次さんは、喜乃の足抜けを手伝ってほしいと頼み込み、
喜多さんの見事な演技で無事足抜けに成功する。

そして沼津までの 3人の珍道中。。

戸塚宿では、大阪で見つかった謎の巨大生物「てれすこ」の話を聞き、
隣室の浪人(吉川晃司)に騙されて弥次さんが金を取られ、
酒乱の喜多さんが宿で大暴れして壊した分の弁償で3人すっかり一文無しに。。。

弥次さんは空腹に耐えかねて捕まえた子タヌキを鍋にしようとするが、
捕まえられた子タヌキの愛らしい姿に逃がしてしまう喜多さんと喜乃。。
弥次さんが怒って2人に子タヌキを逃がしたことを責めているとやってきたのが一人の男の子。
自分はさっき助けられた子タヌキなので恩返しがしたい、、と男の子が言うと、
じゃあ、サイコロに化けておくれ、と化けたサイコロで賭場に行き、丁半の勝負で大金を稼ぐのだった。

懐にお金も戻って安心して旅を続けていたが、
沼津の父親が病気だとずっと嘘をついていたことを気にかけていた喜乃は
弥次さんに嘘をついていたことを詫びて2人の元を去ってしまう。。。 
と、そこにやってきたのが、足抜けした喜乃を探していた地回り2人。

更に、喜乃に「契りの切り指」を渡されて信じ込んでいた贔屓客が大勢現れる。。。

困った喜乃は、「地回りをやっつければ廓の評判になってモテル」と贔屓客達を焚き付けて、
地回りを退治させ、、その間に自分は一人出発し、沼津の実家に到着すると、
自分を13歳で売り飛ばしたヒドイ父親(笹野高志)は、
若い嫁を貰って(しかも子供まで作って)祝言を挙げている最中。。。。

足抜けしてきたので地回りが追いかけてくる、と喜乃が言うと父親は慌てて
3年前に坊主が夜逃げした荒れ放題の寺に隠れるように言いつける。

そこにやってきたのが喜乃を探して辿り着いた弥次さんと喜多さん。

男2人=地回りと勘違いした村人たちは「沼に落ちて喜乃は死んだ」と嘘をつくが、
弥次喜多は喜乃の亡骸を探そうと沼を網ですくい、、、出てきたのが2つのしゃれこうべ。
昨日死んだ喜乃がいきなりツルツルのしゃれこうべになる訳がない、、と思う村人達に対して
このしゃれこうべで喜乃の弔いをしてやろう、と荒れた寺に行く弥次喜多。
必死に経をあげる2人の姿を仏像と一緒に隠れながら聞いていた喜乃だったが、
2人の優しさに心を打たれて2人の前に姿をあらわすのだった。

そして、喜乃に好意を寄せている弥次さんには、
お前さんのことは好きだけれど、お前さんは死んだ女房に似ているから私が好きなだけ、
だから、一緒にはなれない、ときっぱり言うと、弥次喜多は再び江戸に戻っていくのだった。
その途中、立ち寄った茶屋で見かけたのが「てれすこあります」の看板。
茶屋の女(藤山直美)が出してくれた「てれすこ」を食べた弥次さんは意識を失い夢の中へ。。。


邦画を観たのは久しぶりなのですが、とにかく面白くて笑える映画でした。
最近落語づいている私だから余計面白かったと思うのですが、
映画の中にあれこれと落語のエッセンスが盛り込まれています。

まず、タイトルの「てれすこ」。 
 長崎で珍魚が揚がり、 「名前を知っている者に百両与える」とお触れが出ると、
 1人の男が魚の名を 「てれすこ」と申し出て百両貰うが、
 次にこの魚を干して同じようにお触れを出すと、同じ男が出てきて「すてれんきょう」と申し出る。
 同じ魚を違う名前で、、と男は捕まってしまうが、、、という噺。
 映画の中では大阪で主人(淡路恵子)と使用人(笑福亭松之助)が道ならぬ恋に
 船で川を下り心中しようとするところに現れたのが大きな珍魚。
 捕まえられた珍魚の名前を問うお触れに使用人が奉行(間寛平)に「てれすこ」と言って、、と
 設定が少々変わっていましたが、捕まった使用人が「では、イカが干されるとスルメになるのは、
 また、しらすが干されるとチリメンになるのはおかしいのでは?」と奉行に訴えると、
 間寛平演じる奉行がうろたえる、、、のが面白く(笑)。

「狸賽(たぬさい)」 
  命を助けてもらった狸が礼にやって来るとさいころに化けて貰い博打で儲けようとするが、
 狸は梅鉢(紋所の名)の意味が判らず天神様に化けてしまう噺。
 これは空腹で耐えられなくなった弥次さんの手で狸汁になる寸前だった子狸を助けた
 喜多さんと喜乃のところに子狸がやってきてお礼がしたいというので、
 さいころに化けてもらってさいころ賭場で大儲けした場面。
 あまりにバンバン儲ける弥次喜多&喜乃に不信感を持った胴元(國村準)が
 手下に床下からさいころを調べさせると、自分がいくつの目を出せばよいのか考えてから
 さいころに化けている小人(=たぬき)の姿を観た手下が床下から針で小人を突きまくり、
 子狸が痛がりながら3人の為に言われた目を出そうと化ける、、、というのがまたまた(笑)。

「野晒し」
 隣家の浪人尾形清十郎に 「釣りに行ってみつけた人骨を回向したら綺麗な女が礼に来た」 
 と聞いた八五郎が骨を釣りに行く

 戸塚宿で隣室に泊まる浪人が水入らずで妻と晩酌しているのを覗き見した弥次さんだったが、
 しばらくすると浪人が酒をいただけないかと弥次さんに言ってくる。
 よく観ると妻の姿は無くあるのは「しゃれこうべ」。自分のせいで妻は亡くなり、
 墓も建ててやれずしゃれこうべのまま供養もしてやれない、
 という浪人に江戸っ子の弥次は「これを墓の足しにしておくれ」と財布の金を渡してしまうが、
 実は浪人の演技(詐欺)だった、、、という場面。
 浪人役の吉川晃司のセリフ棒読みにはちょっとぷぷっと笑ってしまったのですが、
 この場面は「ああ、落語だよなあ」と感心しながら笑いました。

「お茶汲み」
 年が明けたら夫婦になろうと、目をお茶で濡らして泣いたふりをした女郎の話を聞いた男が
 吉原に行ってその女郎を揚げる噺。
 目をお茶で濡らして泣きまねしていたのはラサール石井演じる幇間(たいこもち)。
 喜乃から頼まれて贔屓客に「(偽装) 切り指」を渡しながら客と一緒に泣く為に
 お茶を目にペタペタつけて泣きまねしていると茶葉が目の周りに沢山くっついていて、、
 という場面が映画の序盤で出てくるのですが、客に合わせてヨイショしまくる幇間の姿に(笑)。

「万金丹」と「笠碁」は話自体は実際聞いたことがなくてぼんやり知っている程度で、
どの場面なのかはっきり分からないのですが、
「万金丹」は、喜乃の実家の村で荒れ果てた寺で弥次喜多2人が喜乃の為に経をあげるところ?
「笠碁」は足抜けした喜乃が通るのを見張っている地回り2人が将棋している場面のこと?
と思ったのですがはっきりせず。私もまだまだ落語上級者への道のりは遠いと思うのでありました。

主役3人 は勿論(特に柄本明が秀逸)、
脇役の俳優さん達も非常に楽しそうに演じているように見えたのと、
最初から最後まで落語の笑いをふんだんに取り入れている展開に
ガッハッハと大爆笑するよりも、ぶふっ、ぶふっと小笑いの連発という私、
まるで寄席にいるような感覚で観ていました。。
若い人にも是非観てほしいと思いますが、きっと中年の人がみると更に面白いだろうな、、と、
十分に楽しめた「やじきた道中 てれすこ」でありました。


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 うわ!ヘアスプレーに続き、これも見てみたいと思っています。
他のうつぼさんの記事を拝読しても思うのですが、知識がたくさんあると、その分色々な分野での面白さを深めるというのを実感します。
 最近NHK連ドラを見ているのですが(上方落語モノです)、自分も寄席に足を運びたい気持ちが強まっています。旅に出てもそうですが、やっぱり日本はいいなあって思ってしまいます。
by (2007-11-23 07:22) 

うつぼ

bonheurさん、おはようございます!
こういう映画を観ると、日本っていいなと思いますね。
上方落語は殆ど聞いた事がないのでよく分かりませんが、友人に聞くと連ドラは面白そうですね。関西弁がちょっと苦手なので上方落語を聴きに行くのはあまり積極的な気持ちになれないのですが、この映画を観たら、東京の寄席にはもうちょっとマメに通って落語のオベンキョをしたいと思いました。。
by うつぼ (2007-11-23 10:08) 

南雲しのぶ

DVDが出たら買おうと思ってます。
やっぱり小泉今日子の魅力はスゴイものです。
ずいぶん歳を取ってしまいましたが、それであれだけの魅力を保てるのはサスガです。
一度、同い年になったことがあるのですが、今では彼女の方が年上です(笑)。
by 南雲しのぶ (2007-11-23 19:23) 

うつぼ

南雲さん、こんばんは。
私もDVD買おうかなあと思っています。
キョンキョンは年を取ってもキョンキョンらしいというか勘三郎や柄本明と十二分に渡り合う演技に楽しく観ることのできる作品でした。
カミングアウトいただきましたが、多分同い年ですね、南雲さんと私。(笑)
by うつぼ (2007-11-24 20:00) 

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