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「ラリー・フリント」を観る [映画(や・ら・わ行)]

レンタルDVDで「ラリー・フリント」を観る。  
 1996年ミロシュ・フォアマン監督作品
 原題は“The People vs. Larry Flynt”

舞台は1952年のケンタッキー。
父親がアル中で、自分達で生計を立てようと(じゃが芋で造った)密造酒を売り歩く兄弟。
真面目に稼ぎたいと言っていた兄だったが、それから20年経ち。。。。

大人になった兄弟は、オハイオ州シンシナティで
“ハスラー・クラブ”というゴーゴークラブ(ストリップバー)を経営していた。
兄のラリー・フリント(ウッディ・ハレルソン)はクラブの売上低迷を打開しようと、
弟のジミー(ブレット・ハレルソン←ウッディ・ハレルソンの実弟)の反対を押し切り、
ダンサーのヌード写真に記事をつけてクラブの会報を発行するが周囲の評判は芳しくなかった。 

そんなある日、テキサス州モスクワから
 新人ダンサーのアルシア(コートニー・ラヴ)がやってきた。
店で踊るアルシアの姿に釘付けとなったラリーは、彼女の勝気な言動が気に入り同棲する。

会報の評判を気にせず出版・販売まで漕ぎ着けようと思い立ったラリーは、
マティーニの作り方や4チャンネルステレオの記事を載せるプレイボーイなどは
低所得者層をバカにしている、もっと低所得者層にも受ける雑誌を作ろうと友人達を説得し、
ハスラー出版社を設立、法律違反だからと反対するジミーやカメラマンに対して
女性の性器は神が創ったものだと主張するラリーは自分の考えを押し通し、
女性の性器を大胆に写した写真を掲載した雑誌“HUSTLER”創刊号を発売する。
(hustler= 精力的な実業家。やり手。 詐欺師。ぺてん師。 勝負師。賭博師。)

が、ラリーの目論見に反して世間の評判は悪く、出荷した25%しか売れず15万部が返本に。。
創刊号で既に資金が底を尽き、次号も出せないという状態のところに一本の電話が。。。
大統領夫人ジャクリーン・ケネディのヌード写真を撮ったというカメラマンからの電話だった。
これで次号は絶対売れると思ったラリーは写真を買い取り第二号を発刊、
と、オハイオ州知事までが買ったという販売部数200万部の大ヒットとなる。

この“HUSTLER”大ヒットに噛み付いたのが、
反ポルノ活動家で銀行家のチャールズ・キーティング(ジェームズ・クロムウェル)。
普通の雑貨屋で買えてしまう雑誌“HUSTLER”は健全化を壊すと講演会で声高に訴えた。

そんな反対運動を尻目に、ラリーは豪邸を建てて盛大なパーティを開き、
一夫一婦制じゃなくてもいいから一緒にいたい、と言うアルシアと結婚する。
結婚後のラリーは、“HUSTLER”誌の内容を更にエスカレートさせ、
遂に、わいせつ罪と組織犯罪の容疑で逮捕されてしまう。

留置所に入れられたラリーのところに現れたのが
 弁護士のアラン(エドワード・ノートン)。
アルシアが雇った、ハーバード卒、国際弁護人経験3年で27歳の弁護士だった。
あなたの雑誌はかなり度を越して好きにはなれないが、
あなた自身には興味があるし専門は「自由」だからあなたを釈放させる、
とアランはラリーの弁護を引き受ける。

1977年の裁判では、
バーで子供がビールを飲んだらバドワイザーを禁止するのか、そうはしないだろう、
“HUSTLER”を読みたくなければ読まずに捨てればいいだけで、読むも読まないも自由である、
ここは自由の国、それが素晴らしい国であり、自由の為には時に嫌なものも認めなければならない
自由がなくならないようにしなけれならない、とアランは弁護したが、
陪審員の評決は起訴通り有罪、反抗的な態度のラリーに対して裁判長は禁固25年を言い渡す。
ラリーはアルシアを離れ離れになって刑務所に入るが、上訴審で完全勝訴の判決を勝ち取り、
5ヶ月後には外の世界に戻ってきた。

ラリーは、表現の自由を勝ち取ったと大々的な集会を開き、
セックスは合法だから猥褻というのであれば創造主を責めるべきである、
戦争・殺人とセックス、どちらがひどいか考えてみれば、
人類の名の下に人を殺して血を流す暴力、大量殺人の方が悪いだろう、と訴える。

と、ジョージア州で“HUSTLER”販売店が検挙されたというニュース。
急いでジョージア州に飛んだラリーは、
 店を1日$1000で借り切り、
自ら“HUSTLER”を販売し始め、逮捕されてしまう。

そんなラリーの態度に心を痛めてラリーに一人の女性が電話をかけてきた。
その女性は、カーター大統領の妹、ルース・カーター・ステイプルトン(ドナ・ハノーヴァー)だった。
ラリーと対面した熱心なキリスト教福音伝道者のルースは、
互いに人々を性的抑制から解放するという点では似ている、
性は神から与えられたものである、
人は幼い時に起きたことでずっと傷つくことがある、とラリーに伝え、
ラリーはそれに同感し、反対するアルシアを振り切って遂にキリスト教の洗礼も受けるのだった。
洗礼後、今までとすっかり変わったしまったラリーは
“HUSTLER”には女だけの写真は載せないようにスタッフに注意し
キリスト教(創世記のアダムとイブ)を連想させるような誌面づくりを指示し、
自らは熱心なキリスト教信者として教会に通い詰めるようになり
神を信じないと言い切るアルシアと衝突してしまう。
いつまでもあなたの味方でいたいけれど最近のあなたはおかしい、というアルシアに
自分は正常であり、これは神の意思であって自分は何でもできるんだ、と反論するラリーであった。 

弁護士アランの根回しで、ジョージア州検事は神を信じたラリーとの司法取引を了承するも
肝心のラリーは司法取引には応じない、裁判で決着をつける言い切り裁判になるが、
裁判所から出てきたところをアランと共に狙撃され、下半身麻痺になってしまう。

車椅子での生活を強いられるラリーは、死ねばよかったと落胆し、
「あなたは神の元に行けるのよ」と慰めるルースに対して
「神はこの世にいない」と答え、熱心に信じていたキリスト教と決別し、
昔のラリーのように猥褻な誌面づくりに戻ると宣言し、
ロサンジェルスの大勢の警備員を配した豪邸での生活を始めるが、
豪邸では体の痛みに耐え切れずラリーはモルヒネを大量摂取してしまう。
4年後、このまま薬を続けたらいけないと手術を受け、痛みが消えたことからモルヒネを断つが、
ラリーと一緒にモルヒネを摂取し続けていたアルシアは既に薬漬けの麻薬中毒になっていた。

体調の戻ったラリーは巨大化したフリント出版社に久しぶりに出社するが、
以前のように言いたいことを言うラリーに時代は変わったとスタッフが反論する。
そのスタッフにクビを宣告したラリーは、弟ジミーに「社長は俺だ」と言い、 
CBSテレビにFBIの囮捜査(自動車会社の創始者ジョン・デロリアンに麻薬を売る映像)の
テープを放送しないかともちかける。

ラリーが提供した映像をCBSが放送しようとすると
デロリアンの弁護士が放送差し止めを求め、一方のCBSは放送する権利を主張し、
提供者のラリーは裁判所に召喚され、長い篭城の後、連邦捜査官に連行されてしまう。
1983年連邦地裁で映像テープの出所を聞かれたラリーは答えをはぐらかし、
法廷侮辱罪で答えるまで一日1万ドルの支払を課せられる。
その翌日、今度は星条旗をオムツに着用して法廷に現れたラリーは、国旗冒涜罪で逮捕される。 
更に、5万ドルの保釈金を支払って保釈されたラリーは、行動が規制されているにも関わらず、
自家用ジェットでカリフォルニア州の外に出てしまう。

弁護士アランは、引き止めても制しても好き勝手な行動をするラリーに愛想を尽かし、
さすがにこれ以上は弁護できない、勝手に地獄へ行けばいいといって立ち去っていく。
“fuck this court”のシャツを着て現れたラリーは州外に出たことを裁判長に謝り、
テープの出所を「サムライからもらった」と主張するが、←モチロンウソ。
 法廷でツバを吐いて猿ぐつわされ、
裁判長にオレンジを投げて禁固9ヶ月の判決、
反抗的な態度をとって更に3ヶ月の禁固追加、
更に、精神療養刑務所への15ヶ月以下の禁固刑を言い渡され、そのまま収容されてしまう。

面会に来るのは妻アルシアだけだったが、
アルシアは自分がエイズに罹っていて会社スタッフが誰も自分と握手してくれないと嘆く。
それを聞いたラリーは弟ジミーに電話し全員クビを言い渡す。

と、また、新たな問題が発生する。
“HUSTLER”に載せたカンパリの広告のパロディで
「母親と姦通した」と書かれた自由バプティスト学院の院長がハスラー社を訴えたのである。
誹謗中傷で受けた精神的苦痛に対して400万ドルの賠償を要求した院長に対して、
ラリーは雑誌を勝手にコピーして100万人に送ったことが著作権侵害に当たると院長を訴え、
(結局ラリーの弁護を引き受けた)アランの戦術で勝算が高くなったにも関わらず、
ラリーは雑誌記事で院長の誠意と生計を破壊しようとしたと法廷で発言してしまい、
誹謗中傷では無罪となるが、精神的苦痛については有罪で罰金20万ドルの評決が出る。

法廷や会社では破天荒なラリーだったが、
エイズの症状が出始めていたアルシアには愛情を注ぎ、
お風呂に入りたいというアルシアを車椅子に座る自分の上に乗せて連れていく。
が、アルシアは戻ってこなかった。
(湯船に浸かったままアルシアが亡くなるシーンが非常に印象的・・・・)
最愛の人を亡くして悲しむラリーの目の前のテレビの中で、
裁判で戦ったばかりの院長が「エイズは疫病で道徳に背くから罹るのだ」と言うのを聞き、
アルシアをエイズで亡くしたばかりのラリーは上訴したいとアランに伝える。
いつも態度が悪くて法廷に敬意を表しないラリーが上訴しても無理、
最高裁での裁判は弁護士の夢だが毎回ベストを尽くしても台無しにされるから断る、
と言い切るアランだったが、意味あることで世の中に覚えられたいと懇願するラリーの態度に
結局弁護を引き受けることにするアランだった。

上訴した最高裁では、アランに言われた通り沈黙を守るラリー。
アランは、この裁判は自由の論争であり、
公共人物(院長)の精神的苦痛を訴える自由と、人々(ラリー)の表現の自由、どちらが重要か、
院長は公共の場で“HUSTLER”はアメリカの毒だと言い不買運動を唱えているが、
皮肉はアメリカの象徴であり、「院長が姦通した」とは皮肉と思っても誰も真実だとは思わない。
とラリーを弁護するアラン。

裁判長に「今までの人生で後悔したことは?」と聞かれて
「ひとつだけ後悔しているのはアルシアのことだ」とだけ答えるラリー。

評決は、
「修正第一条は自由な発想を保障するものである。
 自由は発言は個人の自由だけでなく真実の追求と社会の活力として重要である。
 公共への論争は動機のいかんに関わらず修正第一条によって守られる。」
と全員一致で無罪だった。


というところまでで映画は終わりますが、
 ラリー・フリントご本人は今でもご健在の65歳。
※右にいる女性はアルシア役のコートニー・ラヴ
wikipediaなどを見ると最近脳卒中か何かで言語障害になってしまったようです。
また、実の娘には反ポルノ活動をされたりと、大変なようですね。

ミロシュ・フォアマン監督というと、

アマデウス

アマデウス

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • 発売日: 2006/12/08
  • メディア: DVD

この作品くらいしか思い浮かばないのですが、
この作品と「ラリー・フリント」とは味わいが全く異なるのでちょっと意外でした。
と思ったら、製作がオリヴァー・ストーンなので「納得」。(笑)

個人的にはエロ雑誌には興味はありませんが(笑)、
70年代に“HUSTLER”という雑誌を発行したラリー・フリントは
正に自由の国アメリカでその権利を行使しようとした人なのかと思いました。
多分、映倫の影響もあるので映画で描かれているよりも実際はもっと雑誌は過激でしょうし、
裁判の様子ももっともっとすごかったのかもしれませんね。
ラリー・フリントという人も映画を通してみると幼い頃の貧しく辛い時代の反動で
ストリップクラブ運営→エロ雑誌発刊→狙撃され→数々の裁判、、、という
オンリーワン的な生き方をしている印象が強く共感ももてないのですが、
アルシアに対しての愛情の深さは共感できました。
病気で末期状態のアルシアをお風呂に連れていくシーンで、
ラリーがアルシアを乗せたまま車椅子でグルグル回り、
お風呂に着いたところで「奥さん、8ドル50セントです」というシーンに、
外で見せるラリーと違う人間臭さを感じたというか、ジーンときたのでありました。

ラリーを演じたウッディ・ハレルソンというと

幸福の条件

幸福の条件

  • 出版社/メーカー: パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
  • 発売日: 2005/03/25
  • メディア: DVD

ナゼ劇場で観てしまったのか自分でも未だに不可解なこの映画しか観ていないのですが、
ラリーのような破天荒な人物をえんじるにはなかなか合っている俳優さんかと思いました。

もともとは、弁護士役のエドワード・ノートン見たさに借りた映画で
今回で観たのは3回目なのですが、
若い弁護士がラリー・フリントのような扱いにくいクライアントと共に法廷で闘う姿も好感がもてるし、
ウッディ・ハレルソン演じるラリー・フリントも彼だから演じられたのかな、と思ったり、
また、アルシア役のコートニー・ラヴの夫を思いながら薬に溺れて最後は病に倒れる演技に
彼女なしでは映画はなかったのかとも思いました。

観ている途中でラリーの態度に不快感を感じたりもするのですが、
個人的には結構好きな部類の映画です。

70年代~80年代のアメリカの流れ、

ブギーナイツ

ブギーナイツ

  • 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
  • 発売日: 2005/08/26
  • メディア: DVD

この映画もそうですが、そんな世相も垣間見ながら、
アメリカの言論の自由についての一端をみた「ラリー・フリント」でありました。


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コメント 2

これは実話なんでしょうかねぇ。ずっとむかしにこれに似た話を聞いたことがありましたが・・・。
自由の国アメリカでもこうした表現の自由をめぐる裁判があること自体、ちょっと奇異に感じましたが、最期の表決はちょっと感動を覚えました。
by (2007-06-30 20:32) 

うつぼ

cocoa051さん、おはようございます。
実在の人物で実際の話に基づいて作られていますが、映画での表現は実際よりはソフトに描かれているかもしれません。破天荒な人生を歩んだ主人公ですが、自由の国アメリカとはいえ(宗教などで)保守的な人も多いので、表現の自由を巡っての攻防も激しいのかもしれませんね。
by うつぼ (2007-07-01 07:48) 

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