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映画「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」を観る [映画(ま行)]

初めて映画館で観たマイケル・ムーア作品です。

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あらすじはYahoo!映画さんより。

これまで政府に目の上のたんこぶ扱いされてきた映画監督のマイケル・ムーアは、
ある日、アメリカ国防総省のお偉方たちにある相談を持ち掛けられる。
彼らの必死の訴えに心を動かされた彼は、国防総省に代わり自分が侵略者として
世界中に出動することを提案する。
ムーアは空母ロナルド・レーガンに乗り込み、ヨーロッパへと向かう。






今までのマイケル・ムーア作品はテーマを1つに絞っていますが、
今回は色々な話を盛り込んでいます。

(ロジャー&ミー)→ http://utsubohan.blog.so-net.ne.jp/2013-01-06

(シッコ)→ http://utsubohan.blog.so-net.ne.jp/2011-11-19-6

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こういう作品もありましたが、シリアスになにか掘り下げるという感じはなく。


世の中は広い
。 素直にそう思えた映画でした。


冒頭のマイケル・ムーアがペンタゴンに呼ばれて、という設定が、
合成ビデオじゃん、って失笑したのですが、そのあとは、様々な国に行って
アメリカに持ち帰りたい政策を探すという設定が面白く、
知っている話もありつつ、知らない話もあったりと興味深く見終わりました。


イタリアでは年間の有休が8週間、産休も有給で5か月。
残業も少なく、ランチは自宅に帰って2時間じっくり、、という工場、
その工場の生産効率が非常に高いという事実。
アメリカで労働組合があってもバカンス1か月で出来過ぎというムーアの説明に
それを聞いたイタリア人カップルがびっくりする。

次に訪れたフランスでは、小学校の給食がフルコース、チーズにデザートまで出る、
貧しいといわれる地域でさえ、鱈のムニエルなど、ちゃんとした料理が出るし、
コストはアメリカの気持ち悪いジャンクフード給食より安い。

フィンランドでは、以前は子供の学力がアメリカと一緒で低かったのが今は世界一。
その理由は、宿題をなくし、遊ばせること。
幼いときはあっという間、大人になって幸せになるために通うのが学校という考え。
アメリカのような統一テストも廃止し、テスト自体も記述式、選択肢式は廃止、
その結果、誰もが多言語を理解し学力も上がるという結果になった。

スロベニアでは、大学の学費が無料。
学費ローンを返せなくなったアメリカ人がやってきて学ぶケースもあるが、
アメリカの大学よりスロベニアの高校の方がレベル高いという。
英語の授業も多いが、有料化の動きで大学生がデモを行い、それを阻止するという国。

ドイツでは、週の労働が36時間で40時間分の給料がもらえるほど労働者に厚い。
休みの日に上司からメールを送らないようシステムをシャットダウンする、
労働者が監査役会メンバーになり、不正を未然に防ぎ、経営者にアイデアを出すことで
労使双方に有益な体制をとっている。
また、ナチスについて、、自分の祖先たちが何をしたのかきちんと教育する。

ノルウェーでは、檻のない刑務所が島に建設され、基本的人権が守られている。
5年間の再犯率も20%と低く、重罪の受刑者用の刑務所でさえ、
看守が銃を持ったりすることない。
死刑制度も廃止されたので、大量殺人で実刑となっても最長21年。

ポルトガルでは、コカイン、大麻の合法化で逆に犯罪が減少している。

チュニジアでは、女性の権利獲得のためにデモを行い、憲法改正された。

アイスランドでも女性の社会進出が活発で、アイスランドの銀行が次々破綻する中、
唯一残ったのが女性経営者の銀行のみ。

などなど、ムーアがインタビューしてほほーそれはすごい、
アメリカに持ち帰らせてもらうよ、と喜んで次の国へ、と展開していきますが、
女性の社会進出のところが他の話に比べると長めだったせいか、
隣でビール飲んでポップコーン食べたおっさんが寝てました。(笑)
素晴らしいという政策がアメリカに習って導入したシステムいう国が多いこと。
女性の活躍についてもチュニジアがデモを行うずっと前から
アメリカでも女性の権利獲得の運動があったり(法の改正には至らなかったらしいけど)
何がアメリカをおかしくしたかといえば、未だに戦争して(勝てない)いて、
その費用に所得税なりなんなりが使われていて、国民の為になるようなことに
費用が使えない、それが高額な学費などの要因になっているんだろうと思いました。


もちろん、それを描くために都合のよい部分しか使っていないのは
理解しながらみないと、鵜呑みにするのも危ない映画だとは思います。
イタリアの若者の失業問題などは描かれていないし、学費無料についても
国の税制悪化を引き起こして有料化に向かっている問題もあるし、
いいと思われる裏にもなにかあるというのはどこも同じだと思いますが、
アメリカの破綻ぶりを描くために敢て他国からとりいれたい政策を、、
という描き方は面白いと思いました。


各国の話にアメリカではどうか、という映像が合間に挟まれるのですが、
私にとって衝撃的だったのは、ノルウェーの刑務所と対照的なアメリカの刑務所。
看守による受刑者への暴力はよく聞きますが映像で見ると本当にひどい。
おまけに、時給50セントでできるからと受刑者で運営するコールセンターなど、
大手企業が普通に受刑者を使ってビジネスをしている様子にびっくり。
また、黒人というだけで逮捕され刑が長くなる(要は受刑者は黒人が多い)ので
現代の黒人奴隷、という表現がされています。
未だにアフリカ系への過剰なまでの反応(逮捕や警察官の暴力など)が
日本でも報じられていますが、この場面は怒りがこみあげましたね。


ムーアが、ベルリンの壁に友人と一緒にいって、
昔ここで壁が壊れるのを観たね、と懐かしがる場面で終わるのですが、
絶対壊れることがないと思っていた壁が、ノミとハンマーがあれば壊せるんだよね、
昔、大学もほぼ無料だったしな、おれたち、、みたいにしみじみ話すのを観ると、
どの国もアメリカを見習って色々なことに取り組んできたものの、
その後、アメリカが戦争をやめられず悪い方向に進んでいった、、
ま、日本も悪くなるばかりで他の国のことを言ってる余裕はないのですが、
今度の大統領選の候補者選びの失笑しちゃうような展開を見ていると
この国、大丈夫か、他の国にも影響力大きいのに、、、、なんて思いました。


チュニジアの女性記者が、チュニジアは小さい国だけれど、
アメリカのことを知っているし、アメリカの音楽も知っている、
でも、アメリカの人はチュニジアのことをどこまで知っているのか、
他の国のことをしろうとしないで、
リアリティ番組(キムカーダシアンショーって言った(笑))を見ている。
もっと他国のことを知るべき。と苦言を呈しているのが印象的でしたが、
この映画を見たアメリカ人が自国の酷い状況にちゃんと気づけるのか
いや、気づいてくれないと、日本も我がふり直せだな、、と思った
「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」でありました。


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