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「嫌われ松子の一生」を観る [映画(か行)]

先日のシカゴ出張の機内で(往復)5回も観てしまいました、「嫌われ松子の一生」。 


主演:中谷美紀、監督:中島哲也、原作:山田宗樹

昭和22年、福岡県の川尻家に長女として生まれた松子(中谷美紀)、
厳格な父親(柄本明)が望む通りの娘になろうと、
学校に通い、中学校の教師となったが、

昭和46年(23歳)、修学旅行先で起きた土産物屋でお金が盗まれた騒ぎで、
龍洋一という生徒の罪を庇おうとして、気づけば自らが罪を被ってしまい、
 味方だと思っていた教頭(竹山隆範)の優柔不断な態度で
自らの無実を証明出来ないまま、松子は教師をクビになってしまう。

真実を知らない父親は窃盗でクビになった松子を勘当してしまう。

松子は遠くに引越し、太宰治に心酔する男、
八女川徹也(宮藤官九郎)と出会い、
 同棲する。
太宰を尊敬する八女川の生活は破滅的で、松子に暴力をふるい、
生活が苦しくなると風俗に行って稼いで来い、と松子に言うが、
それでも八女川が好きな松子はト○コ風呂へ面接に行く。しかし、
マネージャー(東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦)に
ここはアンタの来るところじゃないよ、と一蹴される。

仕方なく、勘当された実家に住んでいる、
弟 紀夫(香川照之)に無心を頼むと、
「これでアンタとは関係なくなるから」と手切れ金を渡される。
家に帰った松子は八女川に弟から受け取ったお金を渡すが、
既に精神に異常を来たしていた八女川は電車に身を投げ死んでしまう。。。

八女川の衝撃的な死に方にショックを受けた松子だったが、
気づけば半年後(昭和47年 松子24歳)には八女川の友人、
 岡野(劇団ひとり)の愛人になっていた。
毎週水曜日にやってくる岡野と過ごす時間を大切に思っていた松子だったが、
それに飽き足らず、岡野の家を探しチャイムを鳴らして近所の家を尋ねるフリをして
岡野の妻(オアシズの大久保佳代子)と対面する。
「あの女だったら私は勝てる」と確信した松子の元に現れた岡野は怒っていた。
家を訪れた松子が愛人だということが妻にばれたことを伝え、
「お前のことは愛していないし近づいたのは八女川の女だったからだ」と
手切れ金を渡して松子の元を去っていく。



ここまででも十分凄いのですが、更に松子の人生は転落していきます


昭和48年(25歳)、
自分を捨てた岡野に「お前の体は良い体だ」と言われたことを思い出し、
再び中州のト○コ風呂へ面接に行き、ソープ嬢「幸乃」としてデビュー。
人気№1の綾乃(ボニーピンク)と共に
またたく間に売れっ子となる。

しかし、世の中が「素人」をもてはやす時代に変わっていき、
人気があるのは素人同然のソープ嬢ばかり、
売れなくなった綾乃は田舎に帰り、マネージャーも去っていく。
そして、幸乃も指名がつかなくなって遂に店をクビになってしまう。

昭和49年(26歳)、一人でいるよりは誰かと一緒に居たい、と思った松子は、
 中州で出会った男、小野寺(武田真治)と組んで
滋賀の雄琴で体を売るようになる。
ヒモ同然の小野寺と出会って同棲してから半年後、
性格が合わないから別れたい、今まで自分の取り分を払ってほしいという松子に
そんな金は残っていない、と答える小野寺。
売上げを全て若い女に注ぎ込んでいたことを知った松子は、
裏切られた怒りで小野寺を刺し殺してしまう。。。。

小野寺を殺してしまった松子は、自らも死のうとするが死に切れず、
亡くなった八女川が心酔していた太宰治のように玉川上水で入水自殺しようと
新幹線に乗って玉川上水までやってきたが、
既に水が堰き止められ水位が低くてどうやっても自殺することが出来ない。
そこに通りかかって声をかけてきたのが、
理髪店を営む島津(荒川良々)。
どこか寂しそうな目をした島津に自分と同じ臭いを感じ取った松子は、
そのまま島津と同棲するようになる。

が、警察の手は松子のところに及び、逮捕され刑務所へ送られる。。。。

刑務所に入っていた8年間、
出所したら島津の手伝いが出来るようにと刑務所内で美容師の資格を取り、
昭和57年出所して島津の店に行ってみると島津は既に結婚して子供もいた。。。

ショックを受けた松子だったが、気持ちを入れ替えて、美容院で仕事を見つけ、
そこで、刑務所で一緒だった
 沢村めぐみ(黒川あすか)と再会し、
一緒に出かけたり楽しい時間を過ごしていたが、
夫のいるめぐみと独り身の自分とは所詮違うんだと思い始めてから
めぐみとも距離を置いてしまう。

そんな時、昭和58年(36歳)に、自分が教師をクビになった原因を作った生徒、
龍洋一(伊勢谷友介)と再会する。
ヤクザになっていた龍に自分の今までの出来事を語る松子。
中学校の修学旅行でお金を盗んだのは自分だと答える龍。
それを聞いて「そんなに私のことが嫌いだったの?」と問う松子に
「その反対です。先生のことが好きでした」と龍は答えた。

龍が自分のことを好きだったと知って心揺れる松子。

家の中で一人で居ても地獄、外に出て龍と一緒になっても地獄、
ならば私は龍と居たい、と思った松子は、龍と一緒に暮らすようになる。

同棲を始め、松子がヤクザ稼業から足を洗ってほしいと懇願すると、
龍は「女が口を出すな」と言って松子を殴る、、、、の繰り返し。
松子を探し当ててやってきためぐみに龍と別れるように諭されるが、
松子はめぐみの言うことを聞かずヤクザの女として龍についていこうと決心する。

昭和59年(36歳)、龍が組の資金を使い込んでいたことが組にばれ、
組に追われながら人を殺してしまい、逮捕され、刑務所へ。      

刑期の4年間、松子は龍を待ち続けていたが、
龍は大好きな先生(松子)の人生を二度も狂わせてしまったことに罪の意識を感じ、
二度と先生の前に姿は現すまいと心に決める。

昭和63年(40歳)、出所した龍を迎えに行った松子は、
龍に突き飛ばされ倒れてしまい、その間に龍は走って松子の元を去ってしまう。

平成元年(41歳)、もう誰も信じられないと思った松子は、
故郷の筑後川に似た荒川に近いアパートに引越し、
化粧もしない、出かけない、ただ食べて飲んで暮らすだけの生活を始める。

一時期、テレビの画面に映し出される光GENJIの内海君に夢中になり
光GENJIのコンサートに足を運び、ファンレターを書く日々を送ったが、
内海君からの返事を待ちわびて毎日ポストの中を覗いても返事がこないことに怒り、
精神的におかしくなっていく。。。。

ブクブクに太り、着る物にも頓着しないホームレスのような格好で、
平成13年(53歳)、遂に病院の精神科に通うようになり、偶然病院で
友人の見舞いに来ていためぐみと再会、 
AV制作のプロダクション会社を経営するめぐみに
うちでヘアメイクの仕事をしないか?と名刺を渡されるが、
松子はめぐみの名刺を受け取って無言のまま走って逃げてしまう。

荒川河川敷で夕日を見ながら、めぐみと会ったことを思い出す松子、
哀れな今の自分と、仕事で成功しているめぐみとの違いを感じ、名刺を捨ててしまう。

しかし、夢の中で、今は亡き病弱な妹の髪を切る自分の姿を見た松子は
もしかしたらやり直せるかもしれない、と思い立ち、
河川敷に戻ってめぐみの名刺を拾い、帰宅の途につこうとしていたが、
夜中に河川敷で騒いでいる中学生達を見かけて家に帰りなさい、と注意すると、
その中学生達に殴られてそのまま死んでしまう。。。。。。



という話。

中学校教師だった松子が、教えていた生徒と同年代の中学生に殺されてしまう
というのが妙に印象的な松子の最期でした。

字面にすると非常に救いのない話なのですが、これがツボにはまりました。

不器用な性格で歯車がどんどん狂って転落していく松子が、
辛い境遇にありながらも真っ直ぐで一生懸命生きていこうとする姿を、
CGを使った色鮮やかな映像とポップな音楽のミュージカル風仕立てで
非常にテンポ良く(場面転換が早い)明るく描いているので悲壮感をあまり感じずに
「がんばれ、松子」と観ながら応援したくなるような映画でした。

また、出演者がなかなか多彩であることもプラス要因だと思うのですが、
 たとえば、片平なぎさ
テレビ画面で流れる2時間サスペンスの女王として出てきていい味出してました。

とはいえ、一番よかったのは、
 中谷美紀の演じっぷり。
真面目で明るい中学校教師役(赤いジャージ上下の姿がはまってます)から、
ド派手なソープ嬢、献身的なヤクザの女、人生後半の自棄になった姿まで、
とにかく思い切り演じている感じが好感もてました。
歯車が狂うたびに「どうして?」と呆然とした表情でつぶやく演技や、
殴られて鼻血を出す姿など、この人だからこういう場面が合うのかもしれない、
と観ていて引き込まれていきました。

嫌われ松子の一生

嫌われ松子の一生

  • 作者: 山田 宗樹
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2003/01
  • メディア: 単行本

原作は読んだことがありませんが(これから読む予定ですが)、
現在放送中のテレビドラマ版と比べると大分雰囲気が違います。
主演女優が違うのも理由の一つかもしれませんが。。。。

この映画は万人受けするとは思えない上に、好き嫌いがはっきりと分かれそうなので
皆さんにお勧めできるかというと自信がないのですが、、、、

松子のような生き方を自分も経験したいとは決して思わないものの、
真っ直ぐに生きていく松子の姿は清清しく、一生懸命生きることについて
考えるきっかけを貰った気分の「嫌われ松子の一生」でありました。


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Kayoko

まってましたー!
でもね、後半読まないで飛ばしてしまいました。
だって見たいんだもん!
TVは見ていないんだけど、これはぜひ、うつぼさんが5回も見た映画だしね(笑)
そうそう、今ごろになって「やっぱり猫が好き」のビデオ、少しずつレンタルして見てます。
by Kayoko (2006-11-02 21:43) 

うつぼ

Mimikoさん、待っててくれて私も嬉しい。。。(涙)
観たことを思い出しながら書いていたら妙に長くなってしまったのですが、色々書かないと自分が満足できなかったもんで。。
もうすぐDVDが発売されるみたいですから、レンタルも同時だと思いますのでゼヒ観てくださいませ。
「やっぱり猫が好き」、、私も最近観ていないのであの3人の絶妙な「間」を観たくなりました。
by うつぼ (2006-11-02 22:34) 

kikuzou

この記事読んで見て、やっぱり観たいと思いますね。観るべきかも。
荒川河川敷って所が・・・ワタシの家の近くかな?
by kikuzou (2006-11-03 01:43) 

うつぼ

kikuzouさん、
荒川は毎日電車通勤で渡っているので見慣れているはずだったのですが、画面に映る河川敷から観た荒川の風景はきれいでちょっとビックリ。
福岡の筑後川と似ているからという理由で松子が選んだ場所が荒川近くというのが私もなぜか親近感を感じてしまいました。kikuzouさんもよろしければレンタルでゼヒ。(確か11/7くらいにDVD発売のはず)
by うつぼ (2006-11-03 08:42) 

いや~、スゴい迫力ですね。話に聞いた程度だったのですが、うつぼさんのコメントを改めて読んで驚きました。こういう人もいるんですね。DVD、借りてみようかな。
by (2006-11-03 10:12) 

うつぼ

cocoa051さん、
フィクションなんですが、観ていて本当にこういう女性がいたのではと思い込んでしまいました。中谷美紀が良いのは勿論ですが、脇役の方々も皆さん芸達者な方ばかりで楽しめました。どうぞゼヒ借りて観てくださいませ。
by うつぼ (2006-11-03 11:19) 

コトロ

はじめまして。
私もこの映画、劇場で見て感動しました。DVDが出たら買っちゃおうかと思ってます。さりげなく出ているけど実はかなり豪華な出演陣なんですよね。不倫相手(劇団ひとり)の家に行き出てきた奥さんがオアシズ大久保さんだったのを見て振り返って「勝った!」とつぶやくところで大笑いしてしまいました。私は最後の夢の中の妹の髪を切ってあげるシーンでボロボロマジ泣きしてしまいましたよ。
テレビ版の内山理名も悪くはないですがやっぱり映画版と比べると色々な面で物足りなさが残ります。映画版は暗い境遇を明るく笑い飛ばしていると言うカンジでしたがテレビ版は普通に暗い昼ドラみたいになっているのもイマイチかな。でもきっと原作はテレビ版に近いんでしょうね。
今年も色々と映画を観ましたが今年見た中で2番目に面白かった映画です(ちなみに一番は「有頂天ホテル」でした)。
by コトロ (2006-11-03 12:27) 

うつぼ

コトロさん、はじめまして。 nice!&コメント有難うございました。
映画評が賛否両論という感じで、記事にする時少々気になっていたのですが、
嬉しいです、同じ気持ちの方がいらっしゃって。。。(涙)
私も大久保さんが出てくる場面では狭い機内でグフッと5回とも笑い、夢の中の妹のシーンでも5回ともウルウルしてしまいました。他にも刑務官にあき竹城、隣の住人にゴリ、牧師役で嶋田久作が出ていたりと、脇役でも面白い人たちが沢山出ていて飽きませんでした。
ドラマ版は映画版に比べると確かに暗めですよね。どうしても映画版の出演者と比較してしまうから違和感を感じてしまうのかもしれませんが。
>一番は「有頂天ホテル」
私も同様です。劇場中が笑いの渦で、とにかく笑えました。
by うつぼ (2006-11-03 12:36) 

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