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「セレブの種」を観る [映画(さ行)]

レンタルDVDで「セレブの種」を観る。

  2004年スパイク・リー監督作品

 原題は“She Hate Me” 、邦題と全然違います。。。
と、邦題が面白いので作品も完全にコメディに思えてしまうのですが、
スパイク・リー作品なのでいくら笑ってもただのコメディ、、、という筈はなかろう、
と思いながら鑑賞しました。

舞台はニュー・ヨークの製薬会社プロジア社。

最年少部長に抜擢された独身&30歳のジャック(アンソニー・マッキー)。
(上のパッケージで電話している男性がジャック)
31歳になると「独身の任期」が切れる、今なら体力はあるし家族を支える余裕はあるけれど、、
と思いつつ、仕事が面白くて結婚にも子供にもまるで興味が湧かない。
そんなジャックとエイズ特効薬となる新薬(プレキシリンン)開発で共に働いたシラー博士が
「うちのような会社は実態がないのだから子供を沢山作れ」とジャックに言い残した直後、
ビルから飛び降り自殺してしまう。 
博士の死にショックを受けるジャックの前で、上司のマーゴ(エレン・バーキン)は
博士が亡くなったことより新薬の認可が下りなかった方がショックだ、と言い放つ。
周囲の冷たさにガッカリしたジャックは部下のジミーが書類をシュレッダしているのを目にする。
何をしているのか疑問に思っていたところに亡くなったシラー博士から郵便が届いた。
開けてみると中に入っていたのは博士の写真アルバム。
一緒に入っていたDVDをPCで再生すると画面に現れたのはシラー博士。
プレキシリン新薬開発での会社の不正を語るシラー博士の姿に驚いたジャックは
会社のパウエル社長(ウッディ・ハレルソン)にシラー博士の言った内容を突きつけようとするが
 マーゴと社長とジャック
ジミーが証拠隠滅で書類を破棄していたのをジャックが見てしまったことを逆に責められる。
シラー博士の死よりも新薬プレキシリンを売り出し巨大な利益を得ることが大事、そして
プロジア社を将来有望な会社に見せることが大事と言い切るマーゴとパウエル社長の姿に
ジャックはテレビ局に電話し、プロジア社に倫理違反があったことを告発する。

その翌日、ジャックが会社に行くと中に入れて貰えない。(告発が会社にバレていた訳で)
そして、マーゴに「自分の首を絞めたわね」とクビを宣告されてしまう。。。。

自分の行ったことは決して間違っていないと思いながら帰宅したジャックの前に現れたのは
元恋人のファティマ(ケリー・ワシントン)。
ジャックと別れた後は女性と付き合っているファティマを見たジャックが、何しに来たのか聞くと
「来月31歳になるから子供が欲しい。だからあなたに子供の父親になってほしい」と言う。
馬鹿馬鹿しいと答えるジャックだったがファティマは真剣。
精子バンクに行くのは量販店でグッチを買うようなものだし、同性愛者は手続きが難しい、
例え審査が通っても、貰う精子の持ち主の経歴がよくてもデブハゲかもしれない、
だから、素性が分かっているジャックに父親になってほしい。
 恋人のアレックス(左)と2人で同時に妊娠したいから
一人当たり5000$×2人でどうかしら、と真剣に頼むファティマに
「そんな話は絶対受けない!」とジャックは断るのだった。

元恋人からの依頼で憤懣やるかたない思いのジャック、銀行にお金を下ろしに行くと
キャッシュカードが使えない。そして会社によって銀行口座が凍結されてしまったことが判明する。

オレはハーヴァード大学とウォートン校を卒業したエリートなのに!!!

と叫んだところで事態が好転する訳もなく、
「職なし&金なし」状態でブロードウェイを毎日ウロウロ歩いては悩む日々を過ごすジャック。
迷った挙句、「お金ないし」「1回だけだから」、、、と、背に腹は代えられないと、
ファティマからの依頼=「精子の提供」(要は致してしまうのですが)を引き受けることにする。

ファティマとは昔恋人同士だったこともあって問題なく事を終えたジャックだったが、
ファティマがジャックとよりを戻すのではないかと心配になったアレックス(ダニア・ラミレス)は
ジャックと上手くいったような上手くいかなかったような。。。という感じで「終了」。

当面の生活費を工面出来て一安心したジャックだったが、
今度は会社を告発した件で証券取引委員会から呼び出しの書状が届く。
父親から紹介された弁護士に相談した後、父親から
「お前はウォーターゲート事件で告発してニクソンを辞めさせたフランク・ウィルズと同じだ、
国に唾を吐き、52歳で死んだ彼と同じだ」と言われて複雑な気分で帰宅すると、、、
 ファティマが大勢の女性を連れてやってきた。

彼女達はファティマのレズビアン仲間で、皆高学歴でビジネスで成功している人達。
皆、子供を作りたいと思っているから、(ファティマの)紹介料10%で精子を提供してほしい、
と(自分がジャックのお陰で妊娠したことを告げながら)提案する。
1回きりのはず、と乗り気でないジャックを説き伏せたファティマは、
 女性陣に
 商品のジャックを品定めさせて
契約書にサインしてもらった後、ジャックに「お仕事」してもらう。。。

かなり描写が際どいのですが、全員と致した後にジャックの顔が描かれた沢山の精子が
女性の体の中を突進して卵子に辿り着くCGが妙に可笑しくて笑ってしまった私。。

次々とレズビアンの女性を連れてくるファティマに反抗できぬまま、
依頼のあった女性全員と致すジャックだったが、体力消耗で薬を飲んでも回復できない。。。。
そんな時にアレックスが一人でジャックの家にやってきた。
ファティマや他の女性達が皆妊娠したというのに、自分だけ失敗したのが納得できない、
このままだとファティマとの仲もうまくいかなくなりそうで女として不安だから私を妊娠させて、
と真剣に頼むアレックスの様子を見て断れないジャックは引き受ける。。。

とはいえ、いつまでもこんなことをやっていてはいけないと思ったジャックは
これ以上は引き受けられないとファティマに言い切るが、ジャックに会いたいとやってきた
 シモーナ(モニカ・ベルッチ)が
自分はカトリック教徒で、ある重要人物の一人娘で同性愛者だけれど
孫を欲しがる父の為に妊娠したい、精子バンクは信用できないからこれしか方法がないの、
というと、結局またまた致してしまうのでありました。。。

その後、娘が妊娠したのを知ったシモーナのパパは、手下に父親を探してつれて来いと指示、
結果、ジャックはパパのところへ連れていかれる。。 
パパは「ある重要な人物=マフィアのボス」で驚くジャックに、
アフリカ系アメリカ人はどうして大学にも行かずに刑務所に行くのだ、
ラッパーはギャングの真似ばかりするし、4世帯中3世帯は母子家庭だし、
とアフリカ系アメリカ人を差別する言葉を並べ立て、
命は保証するからシモーヌに会うのは今日限りにしてくれ、とパパが懇願し
ジャックは二度と会わないことを約束して無事帰宅、、、、、したら、

今度は自宅に警察がやってきた。

マフィアボスのパパが警察に通報、ジャックが「精子提供ビジネス」を行なっているとチクッタから。
お陰で新聞に書き立てられ、あっという間に世論の騒動の渦中の人になってしまう。。。。
逮捕され、裁判で無罪を主張したものの結局有罪で刑務所に入れられるジャック。。。

ファティマと(2回目で妊娠した)アレックス、更に、パパに内緒で(妊娠した)シモーナも
面会にやってきたり、と刑務所にいながら心和む時間を持つことが出来たジャックだったが、
プロジア社の告発の件で公聴会に呼ばれて新薬開発の事実を公表する。
エイズの特効薬として開発したプレキシリンは効果が75%だったので
シラー博士は表を1年延長しようとしていたが、販売を急ぐ取締役会で却下された。
世界で一番最初に認可されないと莫大な利益を得られないからだ、と
シラー博士の日記を提出して証言するジャック。
 
真面目で律儀な国民、内部告発者ばかりが貧乏くじを引く、
自分はフランク・ウィルズだ、彼も私も勤務中に人生を変える決断をした、 
捕まった人は小物だったが、結果としてそれが大統領までつながった、、、
と滔々と説明するジャック。

(その間にファティマやアレックスが産気づいて子供産んだりしちゃいます。。。)  

ジャックの正直で真摯な態度に、
「本来なら侮辱罪で6ヶ月だが19人(!)も子供がいるなら社会で働くべきだろう」
と無罪放免の判決が出た一方で、逮捕されるパウエル社長なのでありました。。。。

シャバに出てファティマとアレックス、彼女達の子供と対面するジャック。
子供達の父親になりたい、と申し出て2人にOKを貰ってメデタシメデタシ。


という訳で、途中笑ったりしたものの、コメディのようでコメディではないような作品でした。
製作当時に大きな騒ぎになったエンロン事件も取り入れていて
(オープニングに出てくるドル札もブッシュの肖像に“3エンロン”とか書いてあったし)
企業の反社会的行為や、精子提供ビジネスでの倫理観・道徳観、人種、同性愛者などなど
今のアメリカについての皮肉・風刺も込められた作品です。
ジャックが依頼者達に対してビジネスを致している場面では際どいところもあったり、
また、ファティマやアレックスの出産シーンはアップでそのままズバリな映し方で
私、驚いて思わず固まってしまったのですが(R-18指定なんだって)、
今考えればどれも必要なシーンだったと思います。。。。

主人公のジャックがウォーターゲート事件で告発した警備員のフランク・ウィルズに
自分をなぞらえる場面で、事件の様子を再現したシーンが流れるのですが、
フランク・ウィルズ役が“キンキー・ブーツ”でドラッグクイーンを好演していた
キウェテル・イジョフォーで、出演時間はさほど多くないのですが
非常に印象に残る場面でまたまた好演でした。。。

こういう重いテーマでありながら、重くなり過ぎないように時に笑わせながら描いて
特に最後のシーンでほっとして後味が全然悪くない仕上がりになっているというのは
やっぱり監督がスパイク・リーだからなのかな、と改めて思った「セレブの種」でありました。


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コメント 2

朝からドキドキしながら読んじゃいましたよ。自殺者が出たり、内部告発をしたりのシリアスな始まりも、なんだか変というか、ややコミカルな展開にも笑いもできず・・・じつにおもしろいというか、考えさせられる映画ですね。
by (2007-06-09 08:32) 

うつぼ

cocoa051さん、こんにちは。
朝からドキドキさせてしまい、申し訳ございませぬ。(笑)
この監督、様々な社会問題を描く方ですが、シリアスになり過ぎないつくりで笑いつつ、最後がハッピーエンドなので救われた感もありますが、実際にあり得る話かも、などと思いながら観ました。。。
by うつぼ (2007-06-10 18:48) 

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