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「アメリカン・ヒストリーX」を観る [映画(あ行)]

レンタルDVDで「アメリカン・ヒストリーX」を観る。
 1998年トニー・ケイ監督作品

ラリー・フリント」で正義感溢れる若い弁護士を演じていたエドワード・ノートンが主演というので
借りてみました、が、あまりに違う御姿にビックラしました。。。。


舞台はアメリカ西海岸カリフォルニア ヴェニスビーチ。
白人至上主義集団DOCのリーダー、デレク(エドワード・ノートン)は、
深夜、自分の自動車の窓を割って中の物を取ろうとした黒人2人を拳銃で射殺してしまう。
(残り1人は逃げてしまう)

 デレク、左胸にハーケンクロイツの刺青でコワイ。。。

故殺罪で逮捕されたデレクは3年間の禁固刑で刑務所へ。

以前のデレクは中流家庭で父母、妹、弟との暮すごく普通の青年だったが、
消防士の父を黒人のドラッグディーラーに殺されたことをきっかけに家庭は一転、
有色人種は社会の寄生虫であり、全ての犯罪には有色人種が絡んでいる、
移住や病気、福祉の問題を訴えるのは有色人種であって白人は関係ない、
ヨーロッパ系の白人が移住してアメリカを繁栄させたというのに
そのアメリカを有色人種は食い物にしている、という考えに傾倒し、
キャメロンという中年男性の黒幕と共にDOCを結成する。
DOC結成後は、ヴェニス・ビーチを白人だけの町に戻そうとするが、なかなか思うようにいかない。 
キャメロンに操られていることに気付かないデレクは、活動をエスカレートさせ、
父の死後、母が付き合っている相手がユダヤ人だと知って母や相手を責め、
デレクを慕う白人の仲間達を煽り、30億ドルもの税金が不法入国者に使われている、
正直で真面目な勤勉な住民を政府は無視して国民でない者の権利を守ろうとしている、
今貧しいのはアメリカ人なのにアメリカは余所者に奪われてしまう、余所者の侵略を見過ごすな、
と、黄色人種の店(多分韓国系移民のような描き方でした)を襲撃し、
店内を破壊し、ラテン系やアフリカ系の店員に暴行の限りを尽くすのだった。
刑務所に入るきっかけとなった殺人もバスケットコートを巡って小競り合いをした黒人3人組が、
自分の大事にしていた父の形見の車を壊し盗もうとしたのを見て
有色人種への怒りを以って非常に残忍な方法で殺してしまったのだった。
(怖い映画が苦手の私にはデレクの殺し方が非常に強烈でした。。。。)

そんな過激な行動に走ったデレクが、刑務所での3年間を経て様子が一変していた。

出所したデレクは自分の出身校で弟のダニー(エドワード・ファーロング)が通う高校に行き、
(黒人の)校長からダニーがデレクの(白人至上主義の)影響を受けていることを聞かされる。
ダニーを心配する校長はダニーと一対一で週一回時事問題を教えることにする。
兄デレクをテーマにデレクが投獄された経過を分析し、
現代アメリカに於ける自身の生き方をどう変えたのか、
家庭やダニーにどういう影響を与えたのか書いて提出するように指示する。
デレクは、自分がいない間にダニーがDOCの刺青を入れていたのを見て、
校長の言う通り真面目な生徒にならなければいけない、
タバコを吸ったりキャメロンの店には行くな、とダニーを叱るが、
以前の違って髪を伸ばし、温和な表情になっていたデレクの様子にダニーは戸惑ってしまう。 

ダニーを探す為にキャメロンが主催するパーティに顔を出すデレク、
自分のせいで家族が滅茶苦茶になったからこういう活動はやめるべきだ、
一緒に普通の生活に戻ろう、と久しぶりに再会した恋人に言うが分かってもらえない。
キャメロンのところにいたダニーに帰ろうと声をかけ
かつての仲間達に、自分はDOCを脱会する、家族達には手出しするなと言って
仲間達に「裏切り者」と言われながらその場を去る。

兄のあまりの変貌振りに驚いたダニーは、刑務所で一体何があったのか話してほしいと言うと、
 デレクは刑務所での3年間について語り始めた。

刑務所に入って180度環境が変わってしまいたった2日間で音を上げてしまったデレク、
黒人受刑者達に目をつけられたことから彼らに襲われないようにと、
本意でないものの白人受刑者達に取り入って一緒に過ごすようになった。
しかし、与えられた作業(クリーニング)でペアを組んだのは黒人青年ラモン(ガイ・トリー)。
嫌いな有色人種のラモンに罪状を聞かれても何を話しかけられても
一切無視したデレクの刑務所生活は1年が経ったある日、
白人の仲間ミッチ(アレックス・ソル)がメキシコ人受刑者から麻薬を買うところを目撃し、
有色人種から薬を買うのは裏切りだとミッチを責め今後は自分のことは自分で守ると言ってしまう。

ミッチの行為が許せず、作業中にも苛々しているデレクに対して、ラモンは、
オレはアホな黒人だけれど物(シーツ)には当たらないよと言って、
デレクが有色人種を嫌う様子を大げさに真似してデレクを笑わせるのだった。

その後もメキシコ人と取引するミッチを見て裏切られたと思うようになったデレクは、
白人受刑者達と距離を置き、嫌っていたはずのラモンとの会話を楽しむようになる。
そんなある日、デレクがラモンに罪状を聞くと、
警察が沢山巡回している場所でテレビを盗み逃げようとしたところを
警察に腕をつかまれて、そこでテレビが落ちただけで暴行罪、で6年の禁固刑、というラモン。
決してテレビを投げてはいないのに、落ちてしまっただけなのに、
警察に向けて投げたことになってしまった、というラモンの言葉に、
今まで自分が信じていたことが本当だったのかデレクは考えるようになる。

白人受刑者と距離を置いたデレクが、
ラモンなどの黒人受刑者とバスケットをしたり一緒に過ごすようになると、
それを見たミッチは白人仲間達と共に、デレクを襲い屈辱的な方法で痛めつける。。。。

※痛めつける情景についてはあまりに凄くて描けないのですが、
 殿方が見たらきっと震え上がるのではないかという情景でした。。
 エドワード・ノートンファンの女性にはサービスカットがあるといえなくもないような、ですが、
 「007カジノロワイヤル」の拷問シーンとはまた違う意味で凄くて驚きました。。。

気を失い、治療を受けたデレクは見舞いにやってきた(高校の)校長から
ダニーがデレクと同じ道を歩んでいることを聞かされる。
主義は捨てていないが今までの狂信的な自分がウソのように思えると言うデレクに、
自分も若い頃は黒人に対する差別や侮辱に怒りを感じ、白人や神や社会も憎んだが
いくら怒ったところで答えは出ないし怒りは誰も幸せにはしない、と答える校長。
その言葉に、出所後は家族を苦しめたくないからDOCを脱会すると答えるデレク。
出所するまでもう白人達に守ってもらえない、黒人達に襲われるのではないかと怯えるデレクは、
態度もおとなしく息を潜めるように過ごしていた。
結局、誰にも襲われることもなく出所の日を無事迎えて外に出る時、
ラモンと目が合い、自分が黒人受刑者達に襲われなかったのはラモンのお陰だったことに気付く。
ラモンが仲間達にデレクに危害を加えないようにと言ってくれたのだった。
俺を守ってくれたのはお前だろう、と聞くデレクにバカバカしい、何でお前の為に命を張るんだ、
もうブラザー(黒人)をいじめるなよ、と答えるラモン、
2人は心の中で理解し合うことが出来たのだった。。。。。。。。


デレクの刑務所での話を聞いたダニーはデレクにDOCに入ったことを詫びる。

自分の間違いに気付けただけでも自分は運が良かった、
自分がどうして暴走したのか考えると原因は怒りだと思う、
でも結局怒りは消えないし、2人の人間を殺しても何の変化もなかった、
お前の生き方を強制しないが理解はしてほしい、というデレクにダニーはDOC脱会を約束する。
帰宅して部屋に貼ってあったナチスのポスターを2人で全て剥がし、
ダニーは校長から書くように言われていた兄についてのレポートを書き上げる。

翌日、ダニーと一緒に学校へ行き、弟を見送ったデレクが歩き出すと聞こえる銃声。
ダニーはデレクが殺した2人の黒人の仲間に報復で撃たれたのだった。。。


いつも深く考えずに楽しく見られる映画ばかり選んでいる私ですが、
今回の映画は全編通して暗い上に最後も悲しく終わってしまい、
パッケージでそれとなく想像はしていたものの、やはり衝撃的な映画でした。

様々な人種が混在しているアメリカは自由の国と言われながらも人種差別の問題も抱え、
映画に出てくるような白人至上主義も実際に存在している訳ですが、
それをデレクとダニー兄弟を通じて描きたかったのかと思いました。

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トム・べレンジャーとデブラ・ウィンガー主演の↑映画も白人至上主義を描いていましたが、
(劇場で見たときこういう世界が現存するのかと思って怖かったのを覚えています)
「アメリカンヒストリーX」は主人公の年齢がもう少し低くて生活レベルも低めの設定だけに、
(それから見ている自分が大分大人になったというのもありますが)
より現実味を帯びて見えました。

弟ダニー役が「ターミネーター2」の子役で見て以来の
 エドワード・ファーロング(左)でしたが、
デレク役のエドワード・ノートン(右)の演技があまりにもスゴイので残念ながら霞んでしまった感あり。。

暴力的な表現が苦手な人にはおススメできませんが、
偏見に満ちた発言を繰り返し、家族にまで当たるデレクの姿や、
刑務所内での白人対有色人種の日々一触即発的な雰囲気は
アメリカの現実の一部なんだろうな、と思いながら見ました。
モノクロとカラーの画面を使い分けながら時間軸が前後する映像が印象的で、
危険な思想や偏見を持つことの愚かさを見た気がした「アメリカン・ヒストリーX」でありました。


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コメント 6

白人至上主義者のデレクを通してみたもう一つのアメリカ社会なのですね。描き方からもアメリカの人種問題の根深さを感じます。・・・考えさせられる映画ですね。
by (2007-07-05 15:57) 

うつぼ

cocoa051さん、こんばんは。
日本にいるとなかなか肌の色の違いを感じにくい部分があるかもしれませんが、アメリカに行くと職業によって大きく色が違うこともあったりして驚きました。。この映画を良しとしたくない部分もありますが、こういう側面を描きたい監督さんの気持ちも分からなくはないような気もしましたね。
by うつぼ (2007-07-05 22:03) 

syun

最後のシーンの後、デレクはどういう人生を選択するんですかね?
うつぼさんはどう思いますか??
ボクはDOC(KKK)に戻ったと思います。
by syun (2011-02-14 01:54) 

うつぼ

syunさん、おはようございます&はじめまして。
ずいぶん古い記事なのにコメントを寄せていただきありがとう
ございます。
デレクのこの後、ですが、敢えて描かないのは見る人各々に
判断をゆだねているんでしょうね。
私は、希望的な意味では誰も知らない土地に移って新しい人生を
送ってほしいと思いました。とはいえ、これが現実、、となると
syunさんが仰るように、DOCに戻ってしまうのかな、と思ったりも
しました。
by うつぼ (2011-02-14 06:43) 

syun

<アメヒス><エドワード・ノートン>で、うつぼさんのページに辿り着いたんですよ。ちょっとタイムスリップしたみたいでしたwww
記事の内容、とても興味深かったです。
エドワード・ノートンってちょっと"mad系"の役がハマってる感じしませんか?これとか"真実の行方"とか・・・。
by syun (2011-02-15 00:31) 

うつぼ

syunさん、おはようございます。
検索のし様によっては辿り着くんですね、私のブログ。(笑)
エドワード・ノートンを初めて見たのがロバート・デ・ニーロと
共演した「スコア」で、坊ちゃん系の顔の割に面白いな、
と思って「ラリー・フリント」「アメリカンヒストリーX」と
見ました。意外とクセのある俳優さんですね。
「真実の行方」は未見ですが、早いとこDVDを借りてみます。
by うつぼ (2011-02-15 06:41) 

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