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映画「百姓の百の声」を観る [映画(は行)]

以前、田端のChupkiさんで観た「ひめゆり」の監督、柴田昌平さんの新しい作品で、
クラウドファンディングに参加し、試写のご案内をいただいたので試写会で鑑賞しました。
百姓.jpg
内容は映画.comさんより。

自然と向き合い作物を熟知する農業従事者の人々にスポットを当てたドキュメンタリー。
「千年の一滴 だし しょうゆ」の柴田昌平監督が「食」の原点である「農」をテーマに、
全国の農家の人々の知恵や工夫、そして人生を、丁寧なインタビューと美しい映像で
紡ぎ出す。

彼らが畑で何と格闘しているのか、ビニールハウスの中で何を考えているのか。
小手先では解決できない様々な矛盾を独自の工夫で克服する彼らの姿を通し、
多くの人々が「風景」としか見ていない営みのコアな姿を、鮮やかに浮かび上がらせて
いく。


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※11月5日が正式公開日ですので記事のアップはフライングかと思ったのですが、
 多くの人に観てほしいと思ってその前に記事をアップしました。

映画の冒頭でも語られていますが、私自身、日常食べている野菜やお米について、
どういう人がどうやって作っているのか、考えていなかったことに気づかされました。
身近には、lovin姐さんスージー兄さんが畑を借りて長らく野菜をつくっているのを
記事で拝見していますが、あとは、昔昔実家で畑を借りて野菜を作っていたのを手伝った、
その程度の知識というか感覚しかありませんでした。

鑑賞後、柴田監督のご挨拶の中で、取材するきっかけとなったのが農文協であり、
(農文協=農山漁村文化協会)
記者の方と一緒に農家を訪れ取材していたものの、最初の半年は農家と農文協の
方々の会話(用語)がまったく分からず、通訳してもらっても分からない、
という状況が続いて非常に厳しい取材だったというお話がありました。

確かに、映画の冒頭で「ぶんけつ」という言葉が出てきて(映画で正解は言わない)
??? ????と思って鑑賞後に調べたら「分蘖」、こんな字、見たの初めて、
と驚きました。

映画に登場する農家の方々、皆さん、高齢でも生き生きとしているのが印象的でした。
酸化しないりんごを栽培する薄田さん(80過ぎでも筋骨隆々)の紹介から始まり、
3年前の台風でキュウリ栽培のハウス(千葉)が全壊してしまい、建て直して
最新式の装置を設置しキュウリ栽培に励む90代のおじいちゃん。
(台風でハウスが壊れる経験は多くの農家が経験しているそうです)

一次産業である農業も少子高齢化の影響で離農が進む中、離農した農家の田んぼを
引き受けて気づけば100エーカーの田んぼを会社組織を作って運営する茨城の横田さん。
田植え機は一台、設備は増やさず収穫時期の異なる品種を植えていくなどの工夫、
(増やすと維持などで生産量が増えてそれ以上にコストアップ)
農水省や自治体の掲げるメガファーム構想がいかに現実とかけ離れたものであるか、
構想をぶちあげる人たちの(現実との)ずれ加減みたいなものを感じましたが、
少子高齢化の中で農業政策が実態に合わないことをお役所はどう思っているのだろう、
(他のお役所でもこういうこと多いと思いますが)
そんな気持ちで千葉のお隣の田んぼの風景を見ながら感じました。

農文協の発行する「現代農業」では、農家の方々の知恵や工夫を惜しげもなく紹介し、
先人の知恵を大切にする、種は独り占めせずに他の農家と共有し、その作物を
絶やさないようにつくっていく(種の交換会の風景が興味深かった)、
知恵や情報の共有が農家や日本の農業にとって長らく続いてきた大切なことであるという
考え方に反して、国の政策といえば特許で守ろうという考えで、そのずれ加減にも
(海外で勝手に作られないようにという防衛策の意味もあるのでしょうが)
農家の声に耳を傾けようという気持がないのかな、という疑問もわきました。

実際、シャインマスカットを栽培する農家の男性(まだ若い)は、
種や栽培手法が流出しても、自分と同じように美味しいシャインマスカットが
つくれるわけではないという自信に満ちた発言をしていて、
国として農家をサポートする、という意味は特許より違うところにあってもよいのでは
ないかという気持になりました。

また、50年くらい前に行った入植(秋田)政策に参加した男性について、
入植し、苦労の末に稲作が軌道に乗ったところで減反政策のあおりを受けて、
自主流通に切り替えてから大変ご苦労された話を聞くと、
農協が農家を支配(拘束)していた時代、国の減反政策に抗おうとすれば裏切者と
切り捨てられる状況であったこと、一方、自家精米することで手にした米ぬかを
稲作に最大限活用できること、世の中の理不尽さを感じましたが、農家の皆さんの
七転び八起きな姿勢には自分の日々の甘さを感じました。(反省)

映画のタイトルになっている「百姓」は現在では放送禁止用語だそうですが、
小さい頃、婆1号には「お米を一粒のこさず食べないとお百姓さんのバチが当たる」、
常に言われていました。
婆1号も実家が農家、高校時代まで農繁期には学校を休んで田植え、稲刈りの戦力として
駆り出されていたこと、せっかくつくったお米も農協に差し出さなければならず、
家では白いご飯食べたいだけ食べられる状況ではなかったことから、
常に食卓で私や兄が言われていたことを今回の映画を観て思い出しました。

小さいころとくらべて飽食の時代になったせいか、
お百姓さんへの感謝の気持ちを忘れがちだった自分が婆1号の言葉を思い出し、
お米や野菜、お肉やお魚、自然からの恵みをいただくときは常に感謝しないといけない、
そんな気持ちになれた「百姓の百の声」でありました。

※上映館は今のところ東中野のポレポレさんだけのようですが、
 いずれ田端のChupkiさんでも上映される予定、もっと広がっていくと思いますので、
 みなさんもよかったら映画館で観て下さい!




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