映画「春の画 SHUNGA」を観る [映画(は行)]
注:18禁です!
内野聖陽さん主演の映画「春画先生」を観ようと思っていたものの、
観ないうちにずるずると時間が経ってしまった、と思ったら、
他にも春画を扱った映画が同じシネスイッチ銀座で上映されているのを知り、
こちらの作品を観に行ってしまいました。
内容は映画.comさんより。
江戸時代に隆盛を極め、明治時代に禁じられた「春画」の美の世界に迫るドキュメンタリー。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この映画を観てから春画展に行きたかった。。。。
7年前、京都旅行の際に、細見美術館で開催されていた春画展を観に行ったのが
春画の実物を初めて観た時だったのですが、
(メチャクチャ混んでいた細見美術館)https://utsubohan.blog.ss-blog.jp/2016-03-30-4
知識も殆どなくて、ただ、明治時代以降は猥褻画として取り締まられるようになった
とはいえ、実物はモノがデフォルメされているのもちょっとおかしかったりして
単なるエロいものでもないように思えました。
世界的に春画が改めて注目されたのが2013年に大英博物館で開催された春画展、
そこから2015年に永青文庫、2016年に細見美術館でも開催されたので
私も観る機会をいただいたのですが、春画について学ぶ、という点で
非常に興味深い映画でした。
デンマークの肉筆春画コレクター(世界的に有名な方らしいです)が
日本画の春画が芸術品として素晴らしいのは、有名な画家が春画を描いていたこと、
西洋画では有名な画家が春画を描いていない、という説明をされていて、
ああそういう考え方があるのかあ、と冒頭で腹落ちしてから鑑賞していたので
その後、スクリーンに写される(大写し)春画の数々を観て今まで以上に興味を
もてるようになりました。
映画の初めの方で、鳥居清長の「袖の巻」を復刻させた高橋工房さんの様子が映り、
ああこうやって春画は作られるのか(いわゆる浮世絵なので知ってはいますが)
彫師の方の繊細な彫刻刀捌きや刷師の方のバレン捌きなどを観た後に、
復刻した作品を観てその緻密な作業から生まれる素晴らしさを感じられました。
(18歳以上の方だけ観てね)https://takahashi-kobo.com/sode_no_maki/
その後、春画の歴史や特徴などを様々な方々が登場して語る中
(横尾忠則も出ていてびっくり)
個人的に共感したのは、Twitterでもフォローさせていただいている
「春画ール」さん(https://twitter.com/tuyashun)の、
「攻めも受けも男女平等」という言葉でした。
まだ若い女性の表情と結婚した中年の女性の表情の違いについての説明、
武士の娘が嫁ぐときの嫁入り道具の中に春画が入っていたという話、
(子作り書としての意味で持たせていたそうです。。)
鈴木春信から葛飾北斎、歌川国麿、歌川国芳、歌川国貞などなど、
私でも名前を知る画家による春画が紹介されて、
冒頭のデンマーク人コレクターの言葉とあわせて芸術と言われる理由が
分かるような気がしました。
春画の本などは庶民に貸本として読まれていたそうですが
(どれにしようか選ぶのは女性というのが江戸時代はおおらかですね)
松平家が発注した春画になると着物の柄の描き方が緻密で光る素材を別に
のせてみたり(今の印刷だとスポットコーティングみたいな感じ)
浮世絵全盛期の頃は、卓越した技術の彫師と刷師によって素晴らしい作品が
沢山誕生した(毛の繊細で細かく描かれている様子には本当にビックリ)、
その後、世相が悪くなっていく中で、描かれる内容も変化していき、
怖かったり奇想なものだったり(幽霊も出てきておどろおどろしい)、
そして明治に入ってからは猥褻なものとして取り締まられ、ひっそり作られて
いたものの、時代の変化に伴って実際の人間の裸を写真で撮るようになっていく、
時の流れを経て(150年くらい?)、現在、またその価値が認められるように
なってこういう映画を観ることができたことは感慨深いものがありました。
中盤で、葛飾北斎の「蛸と海女」がアニメ―ションでも描かれるところで、
森山未來と吉田羊がナレーションしているのがクスっと笑えてしまい、
春画から思い浮かべる想像力、こんな楽しみ方もあるんだと目からウロコでした。
映画の最後に京都の北野天満宮の蚤の市の風景が映し出されるのですが、
そこで販売されていたのが春画の本。(庶民向けで作者は当然不明)
売っているおじちゃんが、江戸時代に作られたこういう本が
何重にも折りたたまれていてぼろになった状態でも今の時代まで残っているのって
すごいよね、といったようなことを仰るのですが、庶民から身分の高い人まで、
手に取っていた絵なのだなあ、と改めて感じ、春画についてもっと知りたい、
春画に書かれている文章の字体(くずし字)が読めるようになればもっときっと
春画が楽しくなるだろうと、思った「春の画 SHUNGA」でありました。
で、映画記事はここで終わるのですが、
この後、上映館のシネスイッチ銀座さんが映画館横にオープンしたギャラリ―で
ミニ春画展を鑑賞しました。
(予約制です)https://artsticker.app/events/16073?utm_source=art_event&utm_medium&utm_campaign=web
2013年大英博物館で開催された春画展のスポンサーで2015年に永青文庫の春画展でも
中心的な役割を果たしされた浦上蒼穹堂代表の浦上満さんが監修した展示会で、
葛飾北斎「喜能会之故真通」“蛸と海女”から、喜多川歌麿、勝川春潮、歌川国芳、
歌川国貞など豪華浮世絵師の作品など江戸時代の春画約50点を観ることができる
ミニ春画展とはいえかなり内容の濃い展示でした。
(撮影OKだった歌川国芳の作品)
拡大しないでくださいね。(笑)
内野聖陽さん主演の映画「春画先生」を観ようと思っていたものの、
観ないうちにずるずると時間が経ってしまった、と思ったら、
他にも春画を扱った映画が同じシネスイッチ銀座で上映されているのを知り、
こちらの作品を観に行ってしまいました。
内容は映画.comさんより。
江戸時代に隆盛を極め、明治時代に禁じられた「春画」の美の世界に迫るドキュメンタリー。
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この映画を観てから春画展に行きたかった。。。。
7年前、京都旅行の際に、細見美術館で開催されていた春画展を観に行ったのが
春画の実物を初めて観た時だったのですが、
(メチャクチャ混んでいた細見美術館)https://utsubohan.blog.ss-blog.jp/2016-03-30-4
知識も殆どなくて、ただ、明治時代以降は猥褻画として取り締まられるようになった
とはいえ、実物はモノがデフォルメされているのもちょっとおかしかったりして
単なるエロいものでもないように思えました。
世界的に春画が改めて注目されたのが2013年に大英博物館で開催された春画展、
そこから2015年に永青文庫、2016年に細見美術館でも開催されたので
私も観る機会をいただいたのですが、春画について学ぶ、という点で
非常に興味深い映画でした。
デンマークの肉筆春画コレクター(世界的に有名な方らしいです)が
日本画の春画が芸術品として素晴らしいのは、有名な画家が春画を描いていたこと、
西洋画では有名な画家が春画を描いていない、という説明をされていて、
ああそういう考え方があるのかあ、と冒頭で腹落ちしてから鑑賞していたので
その後、スクリーンに写される(大写し)春画の数々を観て今まで以上に興味を
もてるようになりました。
映画の初めの方で、鳥居清長の「袖の巻」を復刻させた高橋工房さんの様子が映り、
ああこうやって春画は作られるのか(いわゆる浮世絵なので知ってはいますが)
彫師の方の繊細な彫刻刀捌きや刷師の方のバレン捌きなどを観た後に、
復刻した作品を観てその緻密な作業から生まれる素晴らしさを感じられました。
(18歳以上の方だけ観てね)https://takahashi-kobo.com/sode_no_maki/
その後、春画の歴史や特徴などを様々な方々が登場して語る中
(横尾忠則も出ていてびっくり)
個人的に共感したのは、Twitterでもフォローさせていただいている
「春画ール」さん(https://twitter.com/tuyashun)の、
「攻めも受けも男女平等」という言葉でした。
まだ若い女性の表情と結婚した中年の女性の表情の違いについての説明、
武士の娘が嫁ぐときの嫁入り道具の中に春画が入っていたという話、
(子作り書としての意味で持たせていたそうです。。)
鈴木春信から葛飾北斎、歌川国麿、歌川国芳、歌川国貞などなど、
私でも名前を知る画家による春画が紹介されて、
冒頭のデンマーク人コレクターの言葉とあわせて芸術と言われる理由が
分かるような気がしました。
春画の本などは庶民に貸本として読まれていたそうですが
(どれにしようか選ぶのは女性というのが江戸時代はおおらかですね)
松平家が発注した春画になると着物の柄の描き方が緻密で光る素材を別に
のせてみたり(今の印刷だとスポットコーティングみたいな感じ)
浮世絵全盛期の頃は、卓越した技術の彫師と刷師によって素晴らしい作品が
沢山誕生した(毛の繊細で細かく描かれている様子には本当にビックリ)、
その後、世相が悪くなっていく中で、描かれる内容も変化していき、
怖かったり奇想なものだったり(幽霊も出てきておどろおどろしい)、
そして明治に入ってからは猥褻なものとして取り締まられ、ひっそり作られて
いたものの、時代の変化に伴って実際の人間の裸を写真で撮るようになっていく、
時の流れを経て(150年くらい?)、現在、またその価値が認められるように
なってこういう映画を観ることができたことは感慨深いものがありました。
中盤で、葛飾北斎の「蛸と海女」がアニメ―ションでも描かれるところで、
森山未來と吉田羊がナレーションしているのがクスっと笑えてしまい、
春画から思い浮かべる想像力、こんな楽しみ方もあるんだと目からウロコでした。
映画の最後に京都の北野天満宮の蚤の市の風景が映し出されるのですが、
そこで販売されていたのが春画の本。(庶民向けで作者は当然不明)
売っているおじちゃんが、江戸時代に作られたこういう本が
何重にも折りたたまれていてぼろになった状態でも今の時代まで残っているのって
すごいよね、といったようなことを仰るのですが、庶民から身分の高い人まで、
手に取っていた絵なのだなあ、と改めて感じ、春画についてもっと知りたい、
春画に書かれている文章の字体(くずし字)が読めるようになればもっときっと
春画が楽しくなるだろうと、思った「春の画 SHUNGA」でありました。
で、映画記事はここで終わるのですが、
この後、上映館のシネスイッチ銀座さんが映画館横にオープンしたギャラリ―で
ミニ春画展を鑑賞しました。
(予約制です)https://artsticker.app/events/16073?utm_source=art_event&utm_medium&utm_campaign=web
2013年大英博物館で開催された春画展のスポンサーで2015年に永青文庫の春画展でも
中心的な役割を果たしされた浦上蒼穹堂代表の浦上満さんが監修した展示会で、
葛飾北斎「喜能会之故真通」“蛸と海女”から、喜多川歌麿、勝川春潮、歌川国芳、
歌川国貞など豪華浮世絵師の作品など江戸時代の春画約50点を観ることができる
ミニ春画展とはいえかなり内容の濃い展示でした。
(撮影OKだった歌川国芳の作品)
拡大しないでくださいね。(笑)
春画はおおらかな江戸の人々の性意識から生まれた文化なのでしょうね。混浴が当たり前でしたし、性がタブーとされたのは明治になってからですから。
面白そうな作品ですね。
by 溺愛猫的女人 (2023-12-22 13:58)
崩し字。竹鎗一揆の文書、みんなで読みました。
じーと見てると「アッ」と分かることがあります。それからネットにも解読してくれるのがあります。これも役立ちますね。その道の方が勧めた辞典を買いましたが、これはほとんど役に立ちませんでした。
by 夏炉冬扇 (2023-12-22 20:18)
夏炉冬扇さん、こんにちは。
崩し字、竹槍一揆の文書で読まれたのですね。
ネットや解読アプリがあるというのも知りましたので、今後は崩し字も
読みながら楽しみたいと思います。
by うつぼ (2023-12-23 11:07)
溺愛猫的女人さん、こんにちは。
デフォルメして描いてあってどこか笑えてしまうのですが、
明治以降の猥褻としての扱いから令和になってこうやって映画で
見られるというのはその芸術的な価値についても認識されたということ
なんでしょうね。
アマプラで見られるかは謎ですが、春画を知るという意味でも面白い
映画だと思います。
by うつぼ (2023-12-24 15:36)