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本法寺寄席で「きゃいのう」を聴く [落語・お笑い]

                               注) すっごく長い記事です

本法寺寄席で田原町の本法寺へ。 
最近、毎回満員御礼(100名強くらい)ですが客層は相変わらずのシルバーぶり。。
お堂には若人(30歳未満)が数人きりと、昨今の落語ブームとは思えない状態。
私でさえ観客の中では若い方に入ってしまうくらいで。。。
定席寄席も面白いけれど噺をじっくり聞くならこういう寄席も面白いのにな。。。
(独り言です)

 最初に出てきたのは桂右團治 注)この方、女性です。
早大法学部卒業後、昭和61年十代目(故)桂小文治に入門、平成3年二つ目、
平成12年(社)落語芸術協会初の女性真打に昇進した噺家さんです。

噺は「柳田格之進」。
彦根井伊家の家臣だった柳田格之進は実直な性格が疎まれて今は浪人の身。
浅草安倍川町の長屋に娘きぬと一緒に暮らしている。
娘に勧められて近所の碁会所に行くと
質屋の万屋源兵衛と気が合って
その内、源兵衛の家へ足を運び離れで碁を打つようになった。
ある日、いつものように離れで碁を打って柳田が帰った後、
番頭の徳兵衛が集金した50両の金子(きんす)がなくなってしまう。
徳兵衛は離れまで行って碁を打っている主人の源兵衛に渡したというが、
源兵衛の手元に50両はないし、もしや柳田様が・・・・と疑う徳兵衛。
あのような方が金子を盗むわけがないからもういい、と源兵衛が収めるが、
徳兵衛は主人の態度に納得できず、翌日主人に内緒で柳田の家へ行く。
柳田に事の次第を話す徳兵衛に対して、柳田はそんな金子は知らないという。
「柳田様がそう仰るなら奉行所に届けることといたしましょう。
その時は、柳田様もお調べを受けるかもしれませんがよろしいですね?」と徳兵衛。
自分は金子など盗んでいないが、奉行の調べだけは受けたくない、
己の潔白が証明されようとも奉行の調べを受けたという汚名は拭えない、
それは武士にとって屈辱だ、と考えた柳田は、
「今は手元にないが用意するので明日の昼にとりにくるよう」と徳兵衛に伝える。
柳田は娘きぬに手紙を持って叔母のところへ届けるように言うが、
きぬは自分が出かけた後、父が切腹して身の潔白を晴らそうとしていることを察し、
自分が吉原へ行くのでそのお金を徳兵衛に渡してください、と申し出る。
娘の気持ちを断る柳田に自分の決意が固いことを伝える娘きぬ、
泣く泣く娘の気持ちを受け入れた柳田は翌日やってきた徳兵衛に50両を渡し、
これは無くなった50両ではない、後から無くなった50両が出てきたどうする?
と聞く柳田に、
「そんなことはないでしょうが、私の首でも差し出しましょう」と答える徳兵衛。
「では、その時はお前と主人源兵衛の首を差し出してもらおう」と言う柳田。
帰って主人源兵衛に50両を渡して柳田の発言を伝えた徳兵衛に
「あのような方に何てことをしてくれたんだ」と怒った源兵衛は柳田の家に行くが、
既に引き払った後だった。 それから月日が経った大晦日。
すす払いをしていた使用人が源兵衛のところにやってきて、
離れの額の裏から50両が出てきたという。
柳田様が徳兵衛に渡した50両は一体どうやって?と思った源兵衛は、
使用人達に柳田を見つけたら褒美を出そうと申し伝えると
使用人達は褒美欲しさに一生懸命柳田を探すが見つからない。
それからまたもや月日が経ち、徳兵衛が湯島に出かけたある日、
駕籠やをいたわって坂道を登ってくる侍一人。
立派な蛇の目傘を差した侍を見ると、それは帰参した柳田だった。
柳田は驚く徳兵衛を近所の店に誘うが、徳兵衛が50両が出てきた話をすると
では明日万屋に行くので首を洗っておけ、と言い残すのだった。
翌日、万屋を訪れた柳田に非礼を詫びる主人源兵衛に
「私が勝手にやったことですからご主人様は悪くありません」と詫びる徳兵衛。
あの50両は娘きぬが吉原に身を落として作った金だ、2人を許す訳にはいかない、
と刀を振りかざす柳田だったが、互いを庇う2人を見て手元が狂い、
切ったのは床の間の碁盤だった。。。。
源兵衛は柳田に詫びながら吉原の半蔵松葉へ行ってきぬを身請けすると
きぬは、2人を殺せなかったことを詫びる父柳田を許し、徳兵兵はきぬと夫婦となって
万屋の夫婦養子となり、生まれた男の子は柳田が引き取り家名を継がせた。

で終わる「サゲ」の無い噺でした。
講談から人情噺に脚色された作品で古今亭志ん生が得意にしていたとか。

勝手なことをした徳兵衛のせいで吉原に身を落としたきぬが夫婦になってしまう、
というのが個人的には納得できないのですが、きぬが父
柳田を説得する場面で
ちょっとウルルとしてしまう噺でした。

 続いて、三遊亭圓遊師匠の「きゃいのう

役者になりたくて3年前に四国からやってきた団子兵衛(←芸名)。
梅などの動かない被り物の役柄の後、ネズミ、牛(の後ろ足)、トラ、と
十二支全ての役を被り物で演じたが、今回やっと「人間」の役をもらえることに。
役柄は腰元の一人で(その3)としてセリフも一言だけある。

乞食がやってきたところで
 腰元(その1):「むさくるしい」
 腰元(その2):「とっとと外へ 行(ゆ)」
 腰元(その3):「きゃいのう」   
と中途半端ながらセリフがやっともらえた団子兵衛なのである。

初日
も二日目も衣装が足りないなどの理由で舞台に立てず、
三日目やっと舞台に立てると思ったら今度はカツラがない。
床山さんのところに行くものの、ないものはないから諦めな、と言われてしまう。
納得できない団子兵衛は、自分が役者になりたくて江戸にやってきたこと、
被り物の役だったが初舞台だからと両親を呼んだらがっかりされたこと、
その後はずっと被り物ばかりで十二支全部演じてしまったこと、
今回初めて人間の役をもらったのに初日二日目と出られなかったこと、
今日は両親がきているから何が何でも舞台に立ちたい!と訴える団子兵衛に
同情した床山は、それなら何とかカツラを用意してやろう、とあちこち探すが
見つかったのは大きなカツラだけ。
床山はさっき食べた南京豆の殻をカツラに詰めて大きさを調整してから
団子兵衛に被せ、両親の前でしっかりやれよ、と舞台に送り出す。
舞台に立った団子兵衛、今回はセリフつきだからと緊張しまくり。
頭がぼーっとしてきたと思ったら熱い。何故熱いのか?と思っていたら、
今度は頭から煙が出てきた。それを袖で見て慌てる床山。
南京豆の殻にタバコの火が落ちたらしい、と気づいてみるが後の祭り。
団子兵衛は熱いけれどセリフを言うまで舞台を降りる訳にはいかない、
と頭から煙を出しながらガマンして、いよいよセリフを言う段になった。

 腰元(その1):「むさくるしい」
 腰元(その2):「とっとと外へ 行(ゆ)」
 腰元(その3):「あついのう」   

でサゲ。古典作品を柳家金吾楼が改作した作品といわれていますが、
熱さをガマンしながら舞台に立ち続ける団子兵衛の姿に場内大爆笑でした。

10分の仲入り後は、
 桂右團治さんの「雛鍔(ひなつば)」から。
ある植木屋が大きな武家屋敷で仕事した途中で休憩していると、
小さい男の子(若様)が庭に出てきた。
泉の近くに落ちていた穴あき銭を拾ってお付の三太夫に「これは何か?」と訊ねた。
すると三太夫が「存じませんが、若様には何に見えますか?」と聞き返した。
若様は三太夫の質問に「丸くて四角い穴が開いていて文字が書いてある、
裏には波の模様が彫ってあるから、お雛様の刀の鍔(つば)ではないか?」と
という答えに、「卑しい物でございます。お捨て下さい。」と三太夫。
三太夫の言葉に「さようか」とあっさり四文銭を捨てる若様を見た植木屋は、
今年お八歳の若様のような高貴な方には汚らしい銭のことなど教えないんだろう、
うちの馬鹿息子も八歳だけれど、親の顔を見るたびに「お足頂戴」と言って
まとわりつくのと大違いだなあ、と若様のことを感心する。
今まで銭をやらないと卑しくなると思ってせがまれる度に銭を与えていたが、
これからは馬鹿息子のことも少し考えないといけないと、と思いながら帰宅する。
女房に若様の話をし、氏より育ちというけれど育て方が悪いから子供が悪くなる、
と愚痴をこぼしているのをそっと聞いていたのが馬鹿息子。
早速「遊びに行くからお足頂戴」とせがむ息子に
「お前のためにならないから銭はやれない」と答える植木屋。
「お足くれないと糠みそに小便するぞ」と脅す息子を叱っていると番頭がやってきた。
茶を出している間に息子が「こんなもん拾ったよ」と息子が穴あき銭を持ってきた。
「おとっつぁん、これ何だろうね。丸くて真ん中に四角い穴が開いていて
文字が書いてあって裏に波の模様が彫ってあるからお雛様の刀の鍔だと思うけど」
と息子が言うのを聞いた番頭、「お前さんの息子は銭を知らないのか?」と
感心する。
植木屋が為にならない銭は持たさないとウソをつくとますます感心する番頭が
「栴檀(せんだん)は双葉より芳し、末頼もしい子を持って幸せだな。
坊や、おじさんが好きなものを買ってあげよう、何がいい?」と息子に話しかけた。
と、息子がまだ穴あき銭を持っているのに気づいた植木屋、
「まだ、拾った銭を持ってやがる、汚いから捨てちまえ」と息子に言うと、
「いやだい、これで芋買うんだ」と息子が答えてサゲ。

馬鹿息子が出てくる噺では、ずる賢い息子と父親のやりとりが面白いのですが、
この噺でも、銭のことを知らないと思わせて番頭を感心させた息子が
うっかり銭のことを知っていると口をすべらせて笑いをとるという展開に
ぐふふっと笑ってしまうのでした。

そして、
三遊亭圓遊師匠が再び登場
噺は「唐茄子屋政談」。  唐茄子=かぼちゃのことです。

若旦那の徳三郎は吉原の花魁に入れあげて家の金を湯水のように使い、
遂に堪忍袋の緒が切れた父親が道楽を止めなければ勘当だと言い渡す。
それを聞いた徳三郎、「お天道様と米の飯はどこに行っても付いて回るから」と
言い放ち威勢よく家を飛び出してしまう。
が、世の中そんなに甘くない。
入れあげている花魁に相談しても体よく追い払われ、
知人の家に居候してもいられるのはせいぜい3日。
とうとう居候できる家もなくなり、食べない日が三、四日続いたある日。
辿りついたのが吾妻橋。遠くに見える吉原の灯りを見ながら
つくづく生きているのが嫌になり、大川(=隅田川)に身を投げようとすると
通りかかった男が止めようとする。
徳三郎が男の顔をみると徳次郎の叔父さん。
「なんだ、てめえなら飛び込んじゃいな」という叔父さんに助けを求める徳三郎。
「てめえは家を出るときお天道様と米の飯はついて回ると言っただろ」という叔父に
「お天道様はついてきたけれど米はついて回らない」と答える徳三郎。

仕方なく叔父さんは徳三郎を家に連れて行き、明日から働くことを約束させ、
食事をさせて休ませる。
翌朝、叔父さんは沢山の唐茄子(かぼちゃ)を仕入れてきて、
徳三郎に売りさばくように言いつけるが、
天秤棒を担いで仕事するなんてかっこ悪いとごねる徳三郎。
叔父さんは「そんなら出て行け」と徳三郎を叱りつけ、
「額に汗して働く、どこが悪い。弁当は茶屋で食べると金がかかるから、
商いをした家の台所で水かお湯をもらって食え、全部売れるまで帰ってくるな」
と言い放ち、徳三郎を商いに出すのだった。
道楽三昧でろくに働いたことのない徳三郎、
炎天下で天秤棒を肩に重たいカボチャをかついでフラフラ。
途中でつまづいたところを見かけた男が同情し、
近所の長屋衆達にドンドン売りさばいてくれたので残ったのが2個になった。
男に礼を言って売り声を練習しながら歩いていると辿り着いたのが誓願寺長屋。
やつれた女に残りの唐茄子を安く売り、台所を借りて弁当を食べようとすると
小さい男の子が徳三郎の弁当を見て「おまんまが食べたい」という。
事情を聞くと、亭主は侍だったが今は旅商人で仕送りしてくれるが、
ここ1ヶ月仕送りがなく、子供に満足な食事をさせることができないと
女が言うのを聞いた徳三郎は同情し、自分の弁当と売上金全てを女に渡して
家に帰り、叔父さんに正直に話すが叔父さんは信用しない。
じゃ、その長屋まで連れて行けという叔父さんを誓願寺長屋に連れてくと大騒ぎ。
徳三郎から金を受け取った女が「このようなものはいただけない」と
徳三郎を追いかけようと家を飛び出した途端、出くわしたのは強欲な大家。
滞納していた店賃として徳三郎の売上を大家に取られてしまった女は、
八百屋(徳三郎)に申し訳ない、と首をくくって死のうとしたと聞いた徳三郎は
大家の家に行って頭をポカポカと殴り、奉行に突き出して裁いてもらう。
大家の強欲さが明かされ徳三郎は褒美に五貫をもらい、親の勘当も許される。
そして、女と子供(と帰ってきた亭主)は徳三郎の家の側に引越し、
徳三郎の店で働くようになってめでたしめでたし、というサゲの無い人情噺。

これも講談を落語に改作した作品だそうで、元々は女が首をくくって死ぬ、という
悲しい結末だったそうですが、後味が悪いのでハッピーエンドに変わったとか。

若旦那というと道楽放蕩息子というイメージを持っていたのですが、
苦労して気持ちを入れ替える、という今回の話にほっとしました。

4席聞いて約2時間、じっくりと人情噺や滑稽噺を聞いて笑ったりほっとしたり、
と充実したひと時を過ごせた
本法寺寄席でありました。

 


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コメント 2

やっと読み終わりました。こんなに真面目に落語を“読んだ”のは初めての経験です。じっくりと聴いてみたくなりました。
「ことしこそは!」と思いつつことしを迎えたのですが、なにかと忙しくなり浅草演芸場も1回きりになっています。当分、野暮用の忙しさが続くので、落ち着いたら勉強もしたいと思います。
by (2007-03-12 14:32) 

うつぼ

cocoa051さん、こんばんは。
この記事は、私自身が一気に書けず、5回くらいに分けて書いているので、
一気に読まれてさぞお疲れのことでしょうね。(笑) 
いやはやどうも有難うございます。
最近、1つの噺を長時間で聴く場合はついつい細かく書きたくなってしまってこんなに長くなってしまいます。。。。
多分、落語が更に楽しくなってきたということかもしれませんが。
cocoa051さんも生で聴く落語を楽しまれる機会が増えるといいですね。
by うつぼ (2007-03-12 21:31) 

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