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本法寺で圓遊の「鰍沢」 [落語・お笑い]

長々引きずった出張記も無事終了しましたので通常モードに戻りまっす。



古い話ですが、昨年暮れの話でございます。

 三遊亭圓遊さんの落語会で田原町の本法寺に行ってまいりました。

以前はお堂前の前に座布団を敷き詰めていたのが、観客の高齢化対策か全て椅子席。
落語ブームということでもないのでしょうが、百数十ある座席が満席でした。。。

寺の入口ではいつものように圓遊師匠が馴染みのお客さんに挨拶したり
切符のもぎりをやってらっしゃいます。(笑)

そして、いつものように18:15開演。

最初に登場したのは、

 講談の神田きらり 

この世界に入って6年目の二つ目さんですが、非常にハキハキと話す爽やかな感じの女性です。 

今回は、圓遊師匠に普段寄席で聞けないような話をやるようにいわれた、とかで
取り上げたのが「宮本武蔵」の話。
皆さんの思い浮かべるイメージはきっと吉川英治作品によるものでしょうが、
講談の神田一門では寛永時代の70歳でしたたかな爺さんとなった宮本武蔵を話します、とのこと。

江戸に「岸流」を名乗る一門があることを知った武蔵が、
「字は違えどガンリュウを名乗るとは」と奴を殺せと指示して弟子を向かわせる、、、という話で
宮本武蔵自身にはさほど興味のない私ですが(スミマセン)、
あら、本当に感じ悪いのね、宮本武蔵って、と思いながらも聞き入ってしまい、
非常にハキハキした滑舌よい話しぶりに頑張って早く真打になってね、、と拍手する私でありました。

続いて登場したのは、  圓遊師匠。

噺は「狐昔話(紋三郎稲荷?)」。

常陸 笠間藩の家臣 山崎平馬は参勤交代で江戸に向かうが風邪で数日行くのが遅れてしまう。
幸手から駕籠に乗ろうと思うと、松戸まで帰る駕籠屋が安くするというので乗せてもらうが、
山崎は駕籠屋の言った値段より高い値段で支払おうという。
風邪引きで暖かくしようと狐の胴服を着ていた山崎、狐の尻尾が駕籠の外にはみ出していた上に
風邪引きでコンコンと咳をするのを聞いた駕籠かきは、
「コンコン咳して尻尾を出しているとは、紋三郎(稲荷)の眷属(家臣)に違いない」と
山崎を狐だと勘違いしてしまう。
それを聞いた山崎はついついイタズラ心が出てしまい、自分が狐であるかのように振舞ってしまう。
途中の茶屋ではお稲荷さんばかり食べ、犬のいるところでは休まず通過する山崎。
松戸に到着、笠間稲荷を信心している本陣に泊まると宿の主人は山崎を紋三郎の眷属と思って
鯉こくやらナマズ鍋を出して丁重にもてなす。
山崎もコンコン言ってみたり狐の尻尾を見せたりするので、
他の宿泊客も山崎の部屋に向かって拝んだりお捻りを投げたり。。。
自分が狐であるフリをしてすっかり楽しんでいた山崎だったが、冗談も過ぎたかと早朝宿を出る。
と、庭に祠があったので一礼して去っていく山崎を見た祠の狐が一言、
「近頃化かすのは人間に敵わない」。

ホノボノとした噺だったのとガンガンに効いていた暖房のせいでボーっとしながら聞いていた私。
途中うとうとしてしまい、笑いどころも押さえられず。。 

ここで仲入り。

いかんいかんと反省し、寒い北向きトイレでスッキリしてから座席に戻り、後半の部へ。

 

 再び、神田ひかりが登場。

まくらは、女性の声は不快に聞こえ易いのでどうすれば聞き易い講釈ができるようになるのか、という話。
講談の世界では6年経てば声ができると言われていて、きらりさんも現在声帯にタコが出来て
声が割れてきたので、1年後を楽しみにして下さい、と言っていました。

で、話は謡曲「鉢の木」。

講談のあの独特の話す調子を練習するのに良い話だそうで、
いきなり聞くと話が分からないでしょうから、と最初に筋書きだけ説明してくれました。

北条時頼が坊主姿で諸国を行脚していたある大雪の日、
上野国の佐野の渡しで行き暮れてしまい、路端の貧しげな民家に一夜の泊りを乞うことにした。
見ず知らずの坊主(僧)に粟飯を炊き、秘蔵の盆栽三鉢の木を薪にして暖をとらせる主人、
名前は佐野源左衛門尉 常世(さのげんざえもんのじょう つねよ)という。
かつては近隣を支配する領主であったが、一族に所領を横領され落ちぶれてしまったが
鎌倉の御家人としてもし幕府に何かあれば馳せ参じ武功を立てるつもりだという。
それを聞いていた時頼は、大したことは出来ないがもし鎌倉に来られることがあれば力になろう、
幕府に裁判所があることを忘れないようにと言って慰め、翌朝旅立っていった。

(自分を時頼と知らぬまま)見ず知らずの旅人に
自分の松・桜・梅の鉢の木を燃やしてまで暖を取らせてくれた常世に褒美を出そうと
時頼は鎌倉に戻ってから常世を呼ぶが常世はやって来ない。
すると、時頼は鎌倉に一大事が起きたと嘘の情報を流す。。
と、それを聞いた常世は他の御家人達とともに鎌倉に痩せ馬に乗って馳せ参じたのであった。。。
(これが「いざ、鎌倉」なんですね)

鎌倉に辿り着いた常世が、雪の日に泊めた坊主が北条時頼だったと知り驚くと、
時頼は約束した通り、常世が鎌倉に馳せ参じたことを褒め、
かつて所領だった佐野庄三十余郷を常世に返し与えた上に
薪にされた秘蔵の三鉢の盆栽の梅・桜・松にちなんで、
加賀国梅田庄、越中国桜井庄、上野国松井田庄、三つの庄園を新たに恩賞として与えた。

という話。

少々つっかえ気味のところはありましたが、非常にメリハリのある読みっぷりで
今後に期待したいなあ、と思うのでありました。。。


そして、主任の  圓遊師匠。

噺は「鰍沢(かじかざわ)」。 

まくらで「日蓮宗」「法華経」の話をひとしきり15分。
今回ネタおろしなのでこの部分を覚えるのに2ヶ月かかった、と師匠は仰っていましたが、
お題目を唱える」というのがこの噺のポイントのようです。

↑これを踏まえて噺を聞きました。。


父親の骨を身延山(←日蓮宗)におさめる為、江戸からやってきた新助。
帰る途中、山の中で大雪になったのでこんなところで凍え死にたくないとお題目を唱えながら
やっと見つけた灯りを頼りに一軒の家に辿り着く。
家から出てきたのは、キレイな若い女、が喉のところに大きなアザがある。
部屋は十間程度で、壁には獣の皮がかけてあって欄干には火縄銃。。。(猟師の家らしい)
一晩泊めてほしいと新助がお願いすると、大した食べ物はないが泊まるだけなら、と
家に入れてもらう。

話をしている内に言葉遣いから女が江戸から来たと分かった新助が女に問うと、
浅草寺の観音様の裏に住んでいたという。

(観音様の裏、、、といえば、そこは吉原、、ですなぁ)

もしや貴女は吉原の花魁では?と聞く新助に驚く女。

女は新助が一度お相手してもらった吉原の小出太夫だった訳で。

女に惚れた新助がもう一度花魁のところに行くと、薬屋の次男と駆け落ち心中したと言われ、
もう遊ぶのはやめようと思っていたのに、死んだはずの女が目の前に。。

と女も自分のそれからの出来事を話し始め。

男と駆け落ちしたものの心中は失敗。喉の傷はその時に出来たもの。
何とか山の中に逃げ込んで、、亭主が獲った熊の肝を薬にして売って生計を立てている、
後生なので私がここにいることは江戸に帰っても黙っていてください、という女に
思わず少しばかりと金包みを渡すが、女の視線は新助の胴巻きに。。。
気付かない新助(←下戸)は温まるようにと女が作った玉子酒を少し呑んで白河夜船。。。。

それを見た女は「亭主の酒がなくなったので近所に借りに行く」といって外に出かけ、
入れ違えに帰って来た亭主が温まろうと余った玉子酒を飲む、、、と途端に苦しみ始めた。

帰って来た女がそれを見てビックリ。

玉子酒にはシビレ薬が入っていた訳で。(←毒薬、、の場合もあるようです)

新助の胴巻きの金を取ろうと玉子酒にしびれ薬を入れていた女だったが、
下戸の新助は上澄みだけ飲んで寝てしまったので大して薬が効かず、
とはいえ目が覚めるとしびれる体、、そっと奥から女が薬を入れたことを聞いて慌てて
このままでは殺されると何とか家を出て逃げ出して、、
お題目を唱え、護符を雪と一緒に飲んで苦しさを和らげながら逃げる新助。。

と亭主の仇と銃を持って女が追いかけてきた。

新助が土手をよじ登り下を見るとそこは岩淵に落ちる鰍沢の流れ。。。
流れは急だが、後ろからは女が追いかけてくる。。
雪明りで下に筏があるのを見た新助はその上に滑り落ちるが筏は岩にぶつかりバラバラに。
何とかバラバラになった筏の丸太につかまり震えながらお題目を唱えていると
上から女が銃を向けて撃って来た。。

万事休すかと思いきや、弾は外れて対岸の岩に命中。

そこで、ほっとした新助が一言、
「ああ、よかった。大難を逃れたのもお祖師様のご利益。
 たった一本の材木(=お題目)で助かった」。

という話。



話自体、、面白いのかどうか、というとウムムな上に、
法華経の説明までで師匠は力尽きてしまった感もあり、最後はちょっとカミカミで。。。


寄席が終わってから同行の皆さん(50~60代のオジサン達)との宴会で、
圓遊師匠にはああいう噺は元々合わないんじゃないかなあ、とか、
町人ものとか与太郎噺の方がしっくりくるなあ、などとひとしきり。

まあ、師匠にもこんなことがあるんだな、と思うことにいたしました。

神田きらりさんが良かっただけに、師匠の出来がちょっと残念ではありましたが、
次回に期待したい、と思った本法寺寄席での「鰍沢」でありました。


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うたに

神田きらりさん、声帯にタコができて大丈夫でしょうかね。。
声を出す人の職業病みたいなものなのですが、うちのかみさんも同じ病気で苦労していたので・・・。(今は手術して治りました!)
by うたに (2008-04-16 12:43) 

bonheur

神田きらりさんって、検索しましたら、前職は旅行業界にいらしたのですね。しゃべるのが好きだったのでしょうか。女性の噺家さんってことで、応援したいですね。
by bonheur (2008-04-16 22:22) 

うつぼ

うたにさん、おはようございます。
声帯にタコ、、、たとえなのかもしれませんが、講談師ってご存知の通り皆さん声がつぶれていますよね。ああいう声が出せないと一人前ではないそうです。きらりさんは、その点、ちょうど声がつぶれ始めたかなあ、という感じでしたので1年後に期待、ということで。でも、うたにさんの奥様、大変だったんですね。治られて何よりです。(^^)
by うつぼ (2008-04-17 06:00) 

うつぼ

bonheurさん、おはようございます。
最近、講談界の若い方、、というと殆ど女性なのですが、きらりさんは旅行業界に居たかたなんですね。脱サラで落語家、、、というパターンもあるので、珍しくはないのでしょうが、私も今後続けて応援したいな、と思いました。
by うつぼ (2008-04-17 06:02) 

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