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「セックスボランティア」を読む [本・ゲーム・テレビ]

会社の後輩から借りた本「不運な女神」について以前記事を書きましたが、
その本と交換で私が後輩に貸した本は、

セックスボランティア

セックスボランティア

  • 作者: 河合 香織
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/10
  • メディア: 文庫

重たいといえばちょっと重たい本です。。。

本当は読んだ後、記事にしようかどうしようか悩んだのですが、
LICCAさんの車椅子ラグビーを描いたドキュメンタリー映画「マーダーボール」を読んで
今回アップすることにしました。

この本を買ったきっかけというのは、うちの父なのですが、
数年前に脳疾患で半身麻痺となって(歩けるといえば歩けますが)
時間や曜日、洋服の裏表&前後などの日常生活の感覚も大分おかしくなり
今もあまり状態がよろしくない父が
病気になる前から使っているPCで男の○望系サイトをほぼ毎日検索していることが分かり
(実家に帰った時にPCの検索履歴を見ていたらわかってしまった訳ですが)
「日常生活もままならず普通の思考能力もない人がこういうところは変わらないもんか」と
ショックを受けるの半分、妙に納得したのが半分で、
その後ふらっと立ち寄った近所の本屋で平積みだったのを見て買った、という感じです。
また、著者が女性というのも買った理由のひとつです。

実際読んでみると、頭で理解しているつもりでも
自分や身内に当てはめて考えると正直受け容れるのに抵抗のある話でした。

酸素ボンベを一時たりとも手放せない男性が、
風俗店に行くときだけは命がけで酸素ボンベを外して女性との行為に臨む話、

障害者の性欲処理の介助をしてくれるボランティアに依頼する男性と
家族に内緒でそのボランティアを引き受ける女性の話、

一般風俗店から障害者に対する理解がなかなか得られないことから
障害者専門の風俗店を立ち上げた人の話、

歩行困難な障害で外出もままならない女性が自宅に出張ホストを呼ぶ話、

自治体が障害者の性欲処理に補助金を出しているオランダのケースの話、、

などなどですが、読み終わった後も、
理解したい気持ちと理解したくない気持ちが葛藤したまま現在に至っています。

実際、著者自身も理解していこうという前向きな気持ちの中に
引っかかる部分も残っているような印象を受けました。

また、本を貸した後輩の感想もモヤモヤしたままのものでした。
ブログ記事にするに当たり、感想を書いてもらいました。↓

私の人生経験の少なさを感じさせるお話です。
私にとって小説の中の世界でしかないお話でしたが、現実にあるのですね。
私が障害を持ってその立場に立ったら、「そちらのお世話を頼むのは贅沢かなあ」
「お願いするのが恥ずかしいなあ」と気にして、悶々と夢精の日々を過ごし、
輪をかけて悶々と暮らすことになりそうです。八つ当たりの毎日かもしれません。
ところが一方で、妻や恋人が純粋に、このボランティアをしたいと言ってきても、
「いやだ」の一点張りで、応援する気にはなれなさそうです。


LICCAさんが記事にされた映画「マーダーボール」を読むと、
舞台となっているカナダでは性について何ら恥らうことなく語れる土壌が伺えるのですが、
日本では健常者でも堂々と語れる雰囲気が浸透していないというか(私もそうですが)
障害者が外出するだけでも何かしら困難が生じる、まだまだ途上の段階にあると思います。

社会全体から「差別」という意識が一切なくなることが一番良いとは思いつつ、
心のどこかで自分の身内が著書の中に描かれているようなことを望んだら?
また、自分自身がボランティアとして介助できるだろうか?
と考えると、やはりウーンと考えたままそれ以上考えが及ばないですし、
障害者と一言で言ってもその症状は人それぞれでしょうから
一括りにして語ることは配慮に欠けることだとも思いますが、
このように厳然として存在している自分の中の意識を少しずつでも変えていければいいな、
と思った「セックスボランティア」でありました。

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Catcat44

うつぼさん、こんばんわ! 感想が読めて嬉しいです。
私はこちらの本は未読ですが、「マーダーボール」のケースもそうなんですが、アメリカはとにかくボーイ・フレンド、ガール・フレンド、恋人というものが、日常生活にどっぷりとあるじゃないですか。高校生はプロムといったら、一大イベントなんですよね?
「ハリー・ポッター」でさえ、パーティーの同伴を誰を選ぶかで、一騒動ありましたし。
日本では、まだまだ子供を作る為の儀式・・・の感覚が抜けないのでしょうかね。これも文化だから、良い悪いの問題じゃないと思いますが。
じゃあ、障害を持った方も、子供を作る為なら、誰かに手伝ってもらってもいいかって事になると、そうもいかないでよね。きっと夫婦で、四苦八苦なさっているのではないでしょうか。
一概に全て同じとは言わないですが、障害を持った方は、何をするにも不便な世の中なのだという事は分かりました。
近いうち、読んでみようかと思いました。ただ、通勤の朝の電車で読むので・・・
by Catcat44 (2007-08-05 21:26) 

堀越ヨッシー

障害を持った方が、健常者のようにスポーツを楽しみたいと思うのと同じように、性衝動もまた健常者の方と同じようにあって然るべきですよね。ただ日本では社会的風潮として性的行動をオープンに話す事がある意味タブーになっているような気がします。
LICCAさんが「こういう本を人前で読むには抵抗がある」と仰っていることが全てを物語っているような気がします。自分も含めてですが、この国は性的な事に関して未だ未熟なんだと思いますよ(テレビドラマのキスシーンなんていまだフレンチですから)。
ただ性的処理をボランティアで行う...っていうのには正直抵抗感ありますね。それって性衝動が排泄と同じ生理的欲求のひとつと割り切らなきゃ出来ない事ですよ。
なかなか難しい問題なので、これが答えだ!とは結論を出しにくい事柄ですね。でも本を読む事で個々にいろいろ考える事が大事なのかもしれません。久しぶりのマジコメントでした。
by 堀越ヨッシー (2007-08-06 15:32) 

数年前にこの本に出会いました。
この本を読むまで想像もしていなかったことが多くて・・・ショックといえばショックでした。そしていまだにどのように理解し評価していいのか、正直消化しきれないでいました。うつぼさんの率直な記事を拝見して改めて読んでみようと・・・そんな気持ちにさせてくれました。ありがとうございます。
by (2007-08-06 15:35) 

うつぼ

LICCAさん、こんばんは!
やっと記事アップしましたが、本人が未だモヤモヤしていているにもかかわらず、皆さんから感想いただけて嬉しいです。
やはり日本とアメリカの風土習慣の違いはありますね。ハリポタだけでなくプロムというと一大イベントみたいですしね。
>誰かに手伝ってもらってもいいか
障害者同士の夫婦がボランティアに介助してもらう話も載っているんですがこの話も読みながら唸ってしまいました。
通勤時に読むときは確かに周りが気になりますが、LICCAさんにも一度読んでいただきたい本です。
by うつぼ (2007-08-06 21:54) 

うつぼ

堀越ヨッシーさん、こんばんは。 マジコメントありがとうございます。
性に開放的になれば全て解決するとも思えないのですが、「マーダーボール」のことを知って日本ももう少し開放的になってもいいのかなと思いました。
ただ、オランダの実例は比較的開放的な国だと思っていたオランダで意外とひっそりと補助金が支給されていることなどを読むと、タブー的な感覚は本音と建前のバランスもあるでしょうし、健常者からの障害者に対する理解というのも一朝一夕で変わることは難しいんでしょうね。とはいえ、機会があればヨッシーさんにもご一読いただきたい本です。。。
by うつぼ (2007-08-06 22:02) 

うつぼ

cocoa051さん、こんばんは。
この本、もう読まれていたんですね。自分の身の回りに障害者がいたとしても現実問題として考えると理解しきれないものですね。大人になるとどうしても綺麗事でお茶を濁してしまいたくなるものですが、こういう本を読むと全面的に肯定できない自分がいることを実感しつつそんな自分と向き合うことが出来たような気がします。といっても未だどちらといえずに葛藤している自分もいるわけですが。この先も全否定も全肯定も出来ないような気はしますが私もまた読んでみようと思っています。
ところで、その後体調はいかがですか?蒸し暑い日が続いていますのでどうか無理なさらずご自愛くださいね。
by うつぼ (2007-08-06 22:11) 

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