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映画「マミー」を観る [映画(ま行)]

私の記憶にも深く残っている和歌山カレー事件のドキュメンタリーを
渋谷のシアターイメージフォーラムさんで鑑賞しました。
マミー.jpg

内容は映画.comさんより。

1998年に日本中を騒然とさせた和歌山毒物カレー事件を多角的に検証した
ドキュメンタリー。
1998年7月、夏祭りで提供されたカレーに猛毒のヒ素が混入し、
67人がヒ素中毒を発症、小学生を含む4人が死亡する事件が起こった。
犯人と目されたのは近所に住む林眞須美で、凄惨な事件にマスコミ取材は
過熱を極めた。
彼女は容疑を否認しており、2009年に最高裁で死刑が確定した後も
獄中から無実を訴え続けている。
最高裁判決に異議を唱える本作では、当時の目撃証言や科学鑑定への反証を試み、
保険金詐欺事件との関係を読み解いていく。
さらに、眞須美の夫・健治が自ら働いた保険金詐欺の実態を語り、
確定死刑囚の息子として生きてきた浩次(仮名)が、母の無実を信じるように
なった胸の内を明かす。


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公平性を欠いた報道。

人間って観たものを信じて考えが左右されてしまいがち、
メディアの偏向報道、今も酷くて(切り取って何度も放送するとか)
辟易してテレビは殆ど観なくなったのですが、当時の映像、今作で観て
ああ、この映像(林真須美さんが報道陣にホースで水をかけるところ)、
何度も何度も繰り返し報じられてこの人が犯人でしょうって感じで
印象付けられていたよなあ、ということを思い出しました。

今作を観る前、YouTubeで彼女の長男がインタビューを受けているのを
何本か観て、当時の報道の偏りについて酷かったと改めて思ったのですが、
夫の林健司さんの現在のインタビューでも言われていた、彼女がメリットのない
ことはやらないという発言に、繰り返し保険金詐欺を行っていたことが
カレー事件も絶対この人だよね、という紐づけというか印象操作につながって
いったのだと思います。

事件の現場や林家のあった場所、当時の映像から見てもあんな狭い道路に
テレビ局が大挙してずっと居座るようなことをされたら、他の住民も
早く犯人がつかまってこの人たちにいなくなってほしいと思うのではないか、
地方のあるコミュニティで起きた事件ですが、だれかに責任をとらせて
早く穏やかに過ごしたい、そんなことから、目撃者と言われる人たちの証言も
時間の経過とともに変わっていったのではないか、と思いました。

驚いたのは、カレー鍋のヒ素と林家にあったヒ素が正確に一致していないのに
パターンが似ているから同じと判断した大学教授、そういう鑑定結果と
時間とともに変わっていく証言、動機も分からないまま逮捕、裁判、死刑判決、
当時の鑑定手法と現在の手法の精度には差があったでしょうし、しかも、
正確に一致していないのに同じと判断したことを証拠にしてしまう、
検察の強引なやり方とメディアの印象操作によってもたらされた判決、
それによって彼女自身だけでなく、家族も長い間ご苦労されるわけですが、
(自宅の落書きや全焼したのも放火の可能性ってありますよね)
冤罪かどうか、再審請求を何度しても棄却されて再審の機会さえ与えられない、
公平性を保たれず一方的に判決をくだされているような気がして
観ていて理不尽さを感じました。

この映画だけで冤罪かどうかを論じられるほど自分には知識がありませんが、
せめて再審の機会を与えられてもよいのではないかと思います。

保険金詐欺を報じてカレー事件の犯人ではないかと印象付けた朝日新聞の記者は
その報道によって大きな賞を受賞し、記者として箔づけされたのですが、
その後のインタビューで再検証しないのか問われてもクレディビリティを理由に
自分は再検証する立場でないと答えている姿に、一人の人生を大きく動かして
再審請求も出ている中、そう答えるのは無責任で傲慢ではないのかと思いました。
(実際、テレビや新聞の訂正や謝罪、殆どないですしあっても気づかれない程度に
 そっと行うくらいの姿勢は変わらないものですね)

この映画、都内でも1ヶ所でしか上映されないというのは、見た人が感じること、
映像が訴える問題提起など影響力が大きいことで映画館が二の足を踏んでいるのか
とも思ったのですが、私と同年代の方が大半の館内、やはり同じように、
ホースで水をかける彼女のイメージが強かった人たちなんだろうな、と思うと、
人はメディアに印象操作されやすく自分でそう思ったような気がしていても
そうでないことが多いのかもしれない、改めて感じた「マミー」でありました。




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