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映画「聖地には蜘蛛が巣を張る」を観る [映画(さ行)]

一昨日手術、と書いたままその後について書いておりませんでしたが、
2時間くらいで無事終了し(局所麻酔が覚めないまま帰宅)、
その後、傷口の痛みやら指がいまいち動かないやら、という感じですが、
担当医によれば順調らしく、今後自主練やリハビリで早い回復を目指したいと
思います。やはり健康第一ですね。実感しております。(^-^;

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予告編を観て気になっていた作品です。
聖地.jpg
あらすじはYahoo!映画さんより。

イランの聖地マシュハドで売春婦連続殺人事件が発生する。
「街を浄化する」という信念のもと、犯行を重ねる殺人鬼“スパイダー・キラー”に
人々は恐怖を抱く一方で、犯人を英雄視する市民も少なからずいた。
そんな中、事件を覆い隠そうとする圧力を受けながらも、女性ジャーナリストの
ラヒミ(ザール・アミール=エブラヒミ)は臆することなく事件を追い始める。
ある夜、彼女は家族と暮らす平凡な男の狂気を目の当たりにする。


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2000年から2001年、実際に起きた事件に着想を得た作品です。

原題は”Holy Spider”、聖なる蜘蛛、という意味ですが、
殺人犯が”Spider Killer(蜘蛛殺し)”と呼ばれること、
イランのマシュハドという聖都が舞台であること、
中心の広場から蜘蛛の巣のように道が放射状にのびていることなどから
このタイトルがつけられているのではないかと思いました。

冒頭に娼婦が殺害される場面、犯人のバイクなどが映されて、その後、
犯人ぽい男性が映るのでこの人か、、と思っていたら今度は顔が映っての
殺害場面、なので私を含めた観客は犯人のことが分かっているので、
犯人捜しでドキドキする代わりに、犯人を追う女性ジャーナリストのラヒミが
危ない目に遭いそうになる場面が多くそのドキドキ感が終盤まで続きました。

イスラム教の世界、蜘蛛にならざるを得ない女性たちの厳しい境遇もあるのだろう、
(冒頭に殺される女性はシングルマザー)と思って観始めたのですが、
ラヒミがマシュハドに到着しホテルにチェックインしようとしたところ、
予約しているにも関わらず独身であることを理由に宿泊を断られる場面、
警察の幹部にもあからさまな女性蔑視で協力してもらえない、
女性差別(今から20年前)が酷かったことは容易に想像できます。

一方で、娼婦たち(多くは薬の依存症)を殺して街を浄化するという大義の下で
殺人を繰り返す犯人、ラヒミが危険を冒して囮になることで犯人が捕まり、
その後裁判にかけられますが、元軍人(イラン・イラク戦争の前線に従事した経験あり)
の犯人は、退役軍人のコミュニティの後ろ盾があるせいか、自分のやったことは
正義であり、悪いことはしていない、罪にも問われないと余裕の表情で、
このまま終わるわけがないとみていたら最後の最後、やはり罪は罪として
犯人が裁かれ、最後は当然の報いを受ける死刑の場面、ホッとしましたが、
観ていてスッキリとか気持ちのいいものではありませんでした。

冒頭の殺害場面から最後まで(ベテラン娼婦を殺害する場面が本当にひどかった)
犯人の家族は守るが(自分は戦争にもいったし善良な市民というエゴ)、
娼婦は汚いから消してやる、という態度、更に、10代の息子が父(犯人)を尊敬し、
父の死後に受けたテレビインタビューで父の犯行の様子について語る場面、
全く共感できませんでしたが、今も女性差別や犯人の行ったことに対して
イランの情勢が変わっていないのだろうなと思いました、

(現在のイランについてちょっとだけですが調べてみたら、ヒジャブの着用が不適切と
 女性が逮捕されその後亡くなる事件も昨年発生していました)

祖国についてこういう映画を作ることに対しての葛藤もあったと思いますが、
イラン出身のアリ・アッバシ監督が描きたかったこと、イランについて
中東以外の人にも知ってもらうことも製作のきっかけだったのかと思いました。

イランでは上映禁止、デンマーク・ドイツ・スウェーデン・フランス合作、
撮影はヨルダン、というのがイランの現状を映し出しているのかもしれませんが、
私自身は観るのが辛い映画だったものの、イランへの関心を持つというきっかけを
持つことができたことは良かったと思えた「聖地には蜘蛛が巣を張る」でありました。



(おまけ)

鑑賞したヒューマントラストシネマ渋谷に飾ってありました。
映画ポスターイメージを実際織ったもの。
中東が舞台の話らしい演出ですね。
IMG_4515.JPG



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