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映画「AIR/エア」を観る [映画(あ行)]

YouTubeの広告で何度も予告編が流れているのを観て
ベン・アフレック監督、脚本、出演に、マット・デイモンが共演となれば、
絶対面白いはずだ、と公開初日に映画館へ観に行きました。
AIR.jpg
あらすじはYahoo!映画さんより。

1984年。経営難に陥ったナイキで、ソニー・ヴァッカロ(マット・デイモン)は
CEOのフィル・ナイト(ベン・アフレック)にバスケットボール部門の立て直しを
命じられる。
マイケル・ジョーダンというまだNBAデビュー前の新人選手に目を付けたソニーは、
周りに反対されながらも彼に社運を賭けた依頼をする。


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痛快で楽しい映画!

今年観た映画の中でトップ3にきっと入る、いや絶対入ると思えた映画でした。
トップ3って通年という意味ですので、そのくらい私にはハマる映画でした。

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ベン・アフレック監督、主演のこの作品も結末が分かっている(事実に基づく映画)のに
ドキドキするのと同じ、マイケル・ジョーダンがナイキと契約して発売された、
今でも販売されている(私でも知っている)エア・ジョーダンがどうやって誕生したか、
その過程が丁寧に描かれていてぐいぐい引き込まれてあっと言う間に観終わりました。

当時、バスケットで使われるスニーカーというと市場の半分以上がコンバース(懐)、
アディダス(当時Run D.M.C(懐)が着用していて人気があった)が24%、
ナイキは17%という劣勢にいた中で、どうやってバスケットの人気プレーヤーを起用して
バスケットの市場でどうやってシェアを増やしていくか、少ない予算を3人のプレーヤーに
当てるのではなくて、花形(といってもNBAデビュー前の期待の新星)である
マイケル・ジョーダン一人に賭ける、結果的にはナイキが契約することに成功して、
エア・ジョーダンが誕生する、というのが分かっているものの、ナイキは嫌いと公言する
マイケル・ジョーダンがどういうやりとりの中で意を翻すのか、観ていてとても面白く
(とはいえナイキの当事者は失敗したらクビなので非常にリスクの大きい交渉)
製品デザインを担当するピーター(スケボーで通勤する変わったおじさん)が
NBA規定で白を51%以上使わないといけないとデザイン上の制約を訴えると、
試合ごとに罰金払ってもいいから規定外のカラーリングをしてもいい、と言われて
作り出したプロトタイプが映画で映し出されますが、自社商品を履いてもらうのではなく、
契約した対象をイメージした商品を作る、という発想の転換で他社と違う提案をする、
マイナスもマイナスの超劣勢の状態から契約に至るまでのドキドキ感、楽しめました。

エージェント(ソニーとは旧知の仲っぽいけれど殊ビジネスとなるとドライ)経由でも
全く相手にしてもらえず、直接電話したらダメと言われたけれど会ったらダメと
いわれていないからとマイケル・ジョーダンの家を突撃してしまう展開、これもうまく
いくはずですが、どうなるんだろうとドキドキすると本人ではなく契約交渉の主体が
母親のデロリスであること、息子の気持ちを優先して考えてあげたいけれど
息子の将来のために一番良い提案をしてくれるメーカーと契約するという気持で
3社(コンバース、アディダス、ナイキ)と面談する、ナイキ以外が適当な提案をしたとは
思えないのですが、マイケル・ジョーダンが嫌いというほど超劣勢のナイキが、
限られた予算の中で、ソニーを中心に、上司のロブ、商品デザインのピーター、
元選手でバスケットボール選手とのパイプ役を担うアフリカ系のハワード、
CEO(反対し続けていたのが最後はソニーの背中を押すフィルを演じていたのが
ベン・アフレックですが80年代の装いが物凄く似合っていてよかった)、
他社との差別化、という点だけでなく、マイケル・ジョーダンだけでなく双方にとって
前向きでハッピーになれる、そんな提案に、マイケル母のデロリスによって、
収益分配(これが契機でスポーツ選手が契約した商品の売上に応じた報酬を得るように
なったそうです)も加えた形で、逆転満塁ホームラン、ナイキに契約が決まった、
観ていてムネアツになりました。

と結果が分かっていながらその経過を垣間見せてもらう楽しさとドキドキ感に加えて、
1984年ってどんな年だったのか、当時はやったものが音楽はBGMとして、
社会事象は映像としてさりげなく盛り込まれていてそれもリアルタイムに生きていた
自分には楽しくて仕方ありませんでした。

例えば、音楽であれば、
Cyndi Lauper「Time After Time」、Big Country「In A Big Country」、
ZZ Top「Legs」、Mike & Mechanics「Alll I Nees is a Miracle」、
Chaka Kahn「Ain't Nobody」、など、
映像では、メアリー・ルー・レットン(体操)、ゴーストバスターズ(映画)、
ビバリーヒルズコップ(映画、「アクセルFのテーマ」も劇中に何度か流れる)、
シルベスター・スタローンとドリー・パートンのデュエット、
ジェーンフォンダのワークアウト(エアロビが流行ったころなんですねぇ)、
ダイアナ妃が生まれたヘンリー王子を抱いている光景などなど、
他には、冒頭のロブとソニーがトイレで会話する中に出てきた「ミヤギ」、
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これも1984年だったんだ、、演じたノリユキ・パット・モリタの姿を思い出しながら
クスっと笑ってしまう場面でした。

これらの他に、Bruce Springsteenの「Born in the U.S.A」も劇中に登場しますが、
映画後半で、ロブがこの歌について語る場面が印象的でした。
(アメリカは自由の国という歌だと思っていたが、実はベトナム帰還兵が職に就けない、
 そういう歌なんだという説明)
ネットで調べてみると、本当の意味ではなく愛国の意味でレーガン大統領の選挙運動に
使われ愛国主義の歌というイメージになった、という説明で、当時生まれていて
この歌も知っていた私、その後40年近く経って本当の意味を知ることが出来て
有難く思えた一面もある映画した。

鑑賞後、帰宅してから「そえまつ映画館」でおさらいして、そういうことだったのか、
と思ったのが、映画冒頭で流れたDire Straitsの「Money for Nothing」という歌の意味。
この歌だけ映画で描かれていた1984年の翌年、1985年に発表されたのに何故映画の中で
紹介されていたのか、というと、「黙っていてもお金が入ってくる」というタイトルの通り、
契約の翌年、1億ドル以上の売上だったという説明が投影されていたので、デロリス経由で
提案された売上に応じた報酬を契約に盛り込んだことで、マイケル・ジョーダンは
(本人が活躍することで更に売上が増えるという期待も持てますし)
自分のブランドのついた靴のお陰で黙っていてもお金が入ってきたという意味だったのだ、
ほうほうそういうことかー、腑に落ちました。

映画に登場する人物のその後についても紹介されて、商品デザインのピーターが映画公開の
1か月前に亡くなったというのが残念でしたが、マイケル・ジョーダンの母デロリスも
その後、多額の寄付を行っていたことを知ってお金目当てではないことを知りました。
(デロリスを演じていたヴァイオラ・デイヴィスの演技も素晴らしかったです)

今の時代だとCEOの一言で(役員会で決議せず)大金を1人の選手に投資する、
そんなことをするとガバナンスが効いていないとか問題になりそうなものですが、
40年近く前はそういうこともなく、結果的には今のナイキがあるわけですが、
自分のやってきることが間違っていなことを示したいソニーと彼をサポートする
上司や同僚たち、その熱意に理解を示したジョーダン家、見ている方も熱い気持ちに
なれて、見終わった後は爽快(痛快)という映画で大満足の「AIR/エア」でありました。



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