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映画「茶飲友達」を観る [映画(た行)]

映画館の上映スケジュールをチェックしていた時、
タイトルが気になって鑑賞した作品です。
茶飲友達.jfif外山文治監督作品
あらすじはYahoo!映画さんより。


29歳の佐々木マナ(岡本玲)は「茶飲友達(ティー・フレンド)」という組織を
設立し、
新聞に「茶飲友達、募集。」と広告を出す。
その実態は、連絡してきた男性のもとへ高齢女性を派遣する高齢者専門の
売春クラブだった。

「ティー・ガール」と呼ばれる在籍女性たちの中には、
介護疲れやギャンブル依存など
さまざまな事情を抱える者がいた。
一方、マナと共に茶飲友達を運営する若者たちもまた、それぞれに生きづらさを
抱えている。

そんな高齢者や若者をまとめるマナは、彼らを「ファミリー」と呼んで
家族のような関係を
築いていく。

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実話に基づいて制作された作品です。

高齢者の性について語るのはどこかタブーのような世の中、に見えますし、
私もこういう繊細な話題に触れることに躊躇いながら観始めたのですが、
冒頭で、妻が他界して孤独に暮らす男性(演じているのは渡辺哲さん)の場面を
観たところから映画に引き込まれていきました。

この映画、高齢者の性を描くために制作されたというよりは、家族とはなにか、
ファミリーとはなにか、マキが色々な場面で「ファミリー」という言葉を発する、
マキの目線から描いた家族に対する幻想のようなものが描かれていたように思います。
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血のつながらない他人同士、という点では、この作品と似ているかと思いましたが、
家族を演じて一緒に暮らす「万引き家族」と比べると、家族感は薄い様にも思えて
事あるごとに「ファミリー」という言葉をだすマキの家族に対する熱量と、
他の人たちの熱量に大きく差があるのかもしれないな、と感じました。

高齢者を助けてあげているんだ、良いことをしているのだから儲けて何が悪い、
と自らの活動について正当化しながら(ちょっと上から目線な感じもした)
ビジネスを拡大していこうとするマキ、SNSではなく新聞の紙媒体の三行広告で
新規顧客を増やしていく姿、悪い人ではないと思うもののそのドライな姿、
でも、時々、茶飲友達で派遣される女性たちに寄りそっていこうとする姿、
彼女自身にも何かあるのだろうな、と思いながら見ていると、
マキがこのビジネスを始めたきっかけも実の家族との不和が原因だったことが
少しずつ分かっていきます。

このビジネスに集まってくる若い人たちも茶飲友達(ティー・フレンド)として
働く老いた女性たち、彼女たちを求める顧客の老いた男性たちもそれぞれ家族に
関して何かしら問題を抱えている、(両親介護が終って気づけば60過ぎていた
独身女性、奥さんが拒否する、奥さんが他界などで性について悩みを抱える男性等)
彼らがマキをリーダーとしてファミリーとしてうまくいっている場面を観ると
この後どうなるか、砂上の楼閣のように足元がぐらぐらした上に成り立つ関係、
そう思えました。

思っていた通り、あることがきっかけでマキの築いたファミリーは一気に崩れていき、
マキは逮捕されますが、取り調べの時に言われる言葉、
「自分の寂しさを他人の孤独で埋めるんじゃないよ」が印象的でした。

人間は程度の差はあるかもしれませんが、だれしもが孤独なのかと思っています。
孤独もどこか必要悪というか悪いものではないと思っていますが、
孤独と共に暮らす中、人との接点を持つことで癒される、今作もそういう人間たちの
集まりが色々な形で孤独から脱したい、と思っていたようにみえました。

身寄りのない女性スタッフが妻子ある男との間に子供が出来たものの、
認知できないと突き放され、でも生みたい気持ちがある、というエピソードが
映画の中で描かれているのですが、彼女自身、子供を産み育てるということについて
心身ともにエネルギーを使うだけでなくお金がかかるという認識がないまま過ごし、
最後は崩壊するファミリーの金庫からお金を奪って逃げ去る、という場面、
決して共感できるキャラクターではないのですが、相談できる人もなく、
(ファミリーにも相談できないまま時間が経っていった)
周りに人はいるのにずっと孤独だった、その中で新しい命にどこか希望を見出そうと
していたのかなと思えました。
(映画レビューで彼女の件は要らなかったのではというご意見も見たのですが、
 私自身はあってよかったと思いました)

孤独の中で人の温かさに触れる、自分の存在を受け容れられる、共感してもらえる、
したことに対してありがとうと言ってもらえる、ちょっとした事の積み重ねが
自分を孤独から解放してくれるのかと思いながら、人との接点を細々と紡いで
過ごしながら生きていきたいという気持になった「茶飲友達」でありました。




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