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映画「川っぺりムコリッタ」を観る [映画(か行)]

予習なし、不思議なタイトルというだけでみた映画です。
川っぺり.jpg
あらすじはYahoo!映画さんより。

できるだけ人と関わらずに生きたいと思い、北陸の小さな街にある塩辛工場で
働くことにした青年・山田(松山ケンイチ)。
工場の社長からハイツムコリッタという古い安アパートを紹介されて住み始めた彼は、
風呂上がりに飲む冷えた牛乳をささやかな楽しみにする静かな毎日を送る。
そんな中、隣人の島田(ムロツヨシ)が風呂を貸してほしいと部屋に上がりこんでくる。
それを機に島田との間に友情のような感情が芽生え、ほかの住人とも触れ合うように
なるが、北陸にやってきた理由を島田に知られてしまう。
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知久さん!

(映画自体の感想そこじゃない(笑))

話自体、ほんわかしているといえばしていますし、クスっと笑う場面もありますが
コメディではなく意外と深くて、どこか暗さもあり、でも明るさもある、
不思議な映画でした。

山田(松山ケンイチ)が就職する富山のイカ塩辛工場の社長(緒方直人)が
がんばって更生、みたいなことを冒頭で言うので、予習していなくても、
山田は出所したてなのかな、と山田の置かれている立場(社会に戻って不安定)が
分かります。

仕事はなんとか続けるけれど周りに自分の前科がばれて、、どうなるのかな、
と想像しながら見続けているのですが、同僚(江口のりこ)は最初から知っていて
おそらくアパート「ムコリッタ」の大家(満島ひかり)もなんとなくわかっていて、
ビックリするのは隣人の島田(個性的なムロツヨシ)、そこで何かが大崩れする、
ということもなく、そんな山田の置かれた立場(幼いころ別れた父の死も含めて)を
みんながそっとふんわり優しく(お仕着せとかわざとらしい感じではなく)包む、
そんな映画だと思いました。

知久さんに気づいたのは比較的前半、山田が川っぺりを歩いていると、
高架下に住んでいるホームレスの1人が、アパートの住人(吉岡秀隆)の息子が
粗大ごみの山(赤電話、ピンク電話、黒電話などなどレトロなゴミが大量)の上で
ピアニカを演奏しているときに一緒にギターを演奏する、という場面が出てきて、
ギターの構え方、弾いているメロディ、ニット帽かぶっているけれどこのシルエット、
知久さんみたいだなあ、と思ったら、気になって気になってものすごく気になって、
松山ケンイチはこの先不幸になることはないだろうし(勝手にきめつけている)
ムロツヨシもいい人そうだから悲しい結末にはなるわけないだろうし、
じゃあ、このホームレスが知久さんかどうか、完全にここがメインの鑑賞目的に
なっている自分がおりました。(良い子は真似しない方がいいです)

知久さんが登場しないので、でも、明らかに音楽は知久さんが担当している、
(ピアニカもつかってどこか悲し気で、でも楽しそうな独特のメロディ)
確証ないまま確信して、あとはエンドロールをガン見しよう、と思っていたら、
本筋でも(⇐本当はここが一番大事なんですが)、松山ケンイチだけでなく、
ムロツヨシも大家役の満島ひかりもみんな色々と辛い経験をもっていて、
辛いのは自分だけではないのだ、という励ましをもらったところでエンドロール、
知久さんのお名前をかなり早いところで発見してホッとしました。
(勘違いじゃなかったという安堵)

知久さん、平成初めのころにイカ天に登場した「たま」が解散した後は、
パスカルズというグループで活動されているそうですが、
今作の映画も全面的にパスカルズが担当されていて、
映画で描かれている世界観(富山の射水市の風景も)音楽と非常に合っているのを
感じて穏やかな気持ちで観終わりました。

タイトルのムコリッタとは、仏教用語で1日を30で割った48分を意味するそうで、
物事が変化する時間、生と死の間にある時間として描く意味でタイトルに使われた、
ということのようです。
刹那というのは同じ仏教用語で時間の一番短い単位と今回知りましたが、
2年前に亡くなったアパートの住人のおばちゃん(岡本さん)が刹那、ムコリッタと
よく口にしていたというエピソードも絡めつつ、どこか不思議な語感の言葉を
私も観終わった後は思わず口にしていました。

山田は幼いころ分かれた父の死、島田は息子の死、大家の南も夫の死、それぞれが
抱える身内の死についても描かれていますが、 亡くなった岡本さんが現れて
山田も話しかけられて、その話を聞いた南が羨ましがるという場面が
ちょっとファンタジーというかおどろおどろしくないというか、各々抱える悲しみは
感じましたがそこにどっぷりはいってしまう、ということもなく描かれていたのは
観ている側には他の話題にも入り込めてよかったと思います。

映画を観ていると自然の大らかさと脅威(大雨による川の氾濫)、
人を信じることの大切さ(登場する方々は皆さんクセがあるのですが)を
美味しそうな風景(イカの塩辛とすき焼きが鑑賞後むしょうに食べたくなった)と
絡めながら描いているのを感じました。

鑑賞後に知ったのですが、監督の萩上直子さん、
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この監督さんと知り、今作がすっと自分に入ってきたのは荻上監督作品だから、
と思わず納得してしまいました。
私がみた上記作品よりはクスっと笑う部分が少なめ(控えめ)かもしれませんが、
男性を主役に据えるとこういう感じになるんだなあと思いつつ、自分の命を大切に
無理に多くを求めることなく日々感謝の気持ちで過ごしていければいいな、と
思った(知久さんに気をとられた割にちゃんと見ています(笑))、
「川っぺりムコリッタ」でありました。


(知久さん!)




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