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映画「君を想い、バスに乗る」を観る [映画(か行)]

大好きなティモシー・スポール主演というだけで
映画館(シネスイッチ銀座)に観に行ってしまった作品です。
君を想い.jpg
あらすじはYahoo!映画さんより。

最愛の妻メアリー(フィリス・ローガン)に先立たれた
90歳のトム・ハーパー(ティモシー・スポール)は、
路線バスのフリーパスを使ってイギリス縦断の旅に出る。
長年暮らした家を離れ、妻と出会った思い出の地を目指すトム。
道中さまざまな人たちと出会い、トラブルに巻き込まれるが、
メアリーと交わした約束を胸に旅を続ける。


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1300キロのバス旅。(◎_◎;)

歩いたら(休まず歩き続けたら)268時間の距離です。
(自転車だと82時間、車だと15時間、公共交通機関でも2日⇐Googleマップ調べ)
旅程.JPG
スコットランドの最北端からウェールズまでどうして行かなければならないんだろう、
しかもバス?(年金生活者なので予算がそんなにないのかと思ったのですが)、
そんな気持ちで観始めましたが、トムがバスで南下していく光景とトムとメアリーの
若い頃の光景が交差するように描かれていくので、どうしてトムがランズエンドを
目指すのか、その理由も最終的には分かった状態で最後のゴール場面を観客も観る、
フィクションなのにトムにとっての大事な瞬間を観客も共に分かち合う、
無事たどり着けて良かったねという安堵で映画を観終わりました。

原題は”The Last Bus"。

最後のバスというのはトム自身の人生最後のバス移動(旅)という意味?
なのかと思ったのですが、今回の邦題、そんなに悪くないというか、
トムが妻メアリーのことを想いながらバスで南下していく話なので邦題からも
映画の物語が想像できてよかったかなと思います。

これだけ長距離、しかもトムがおじいちゃん(90歳の設定)なので、
一筋縄ではいかないのは想定していましたが、カバンを盗まれそうになったり、
無料パス(スコットランドのみ有効)でイングランドでは使えないと、
なにもない田舎でトムにバスを降りろと命令する運転手に嫌がらせされたり、
最終バスを寝過ごして真夜中に知らない町に放り出されてしまったり、
ロンドンでイスラム系女性を庇ったら反イスラムみたいな男性に絡まれたり
(そこで怯まずバスを降りろと言うトムはとても強かった)
メアリーとの思い出の宿に行って2人の思い出の部屋を予約したはずが泊まれなかったり、
旅の途中に起きるトラブルや嫌な思い、このままじゃランズエンドに到着できないかも、
と心配になってしまうこともありましたが、一方で、乗っていたバスが故障すると
元自動車整備工だったトムが直す、それを他の乗客がSNSにアップしたところから、
行く先々でトム本人は知らぬままトムの姿がSNSに紹介され、
いつしかバスの英雄(Bus Hero)と呼ばれてSNSで有名人になっていき、
ゴールのランズエンドでは多くの人がトムの到着を待って温かく迎える展開でした。
(迎えた人たちも日常生活で何か物足りなさがある人達なのかもしれませんね)
本人の承諾なしにSNSにアップするのもどうなんだろうと思いましたが、
そのお陰でトムを取り巻く環境が後半は良くなっていくのが現代ですね。

見ている途中まで、病気で先が長くないと思っていたのは妻メアリーでしたが、
癌で余命短いと診断されていたのはトムの方で(怪我が化膿して入院した場面で判明)
元気だったメアリーが先に急逝してしまったことが分かります。
自分の命があとわずか、と理解しているトムが、メアリーが亡くなった後、
2人の思い出(娘のお墓がある)の地にメアリー(のお骨)を連れていかなければ、
という強い決意があったからこ行動につながっていったと思いますが、
その中で、トムが出会う人々で、バス乗り越しで途方に暮れるトムを家に招いた夫婦、
陰湿な運転手に田舎で放り出されたトムを家に連れていくウクライナ移民家族、
バス停で知り合う若い男女グループ(アメイジンググレースを歌うトムがよかった)、
世の中、悪い人もいればいい人もいる、ムカついた後に報われた気持ちでほっとする、
SNSについても良くも悪くも振れ幅が大きい拡散力があるとはいえ、今作については
性善説に基づいて現代のツールとして描かれていた印象でした。
トムが紙の地図に描いたルート(途中、風で飛ばされちゃいますが)が、
SNSの発信地(点)をつないでいくのと同じように思えたという点ではSNSがあったから
この作品に厚みが出たような気がしました。

トムを演じたティモシー・スポール、実際より30歳暗い上の役柄を演じていますが
全く違和感がなく、ティモシー・スポールが演じたからこそのトムのキャラクターは
ちょっと頑固ですが親近感を感じる素敵なおじいちゃんでした。
古いカバン(コロコロではなくトムが若い頃から使っていたようなカバン)を手に
メアリーと一緒にバスで旅していたトム、冒頭だけ音楽が流れていましたが、
それ以降はBGMもなく、静かにイギリスの景色とともにバスが南下していく展開で、
私自身も老いた時、誰かとの約束があるわけではありませんが、こうやって自分の人生を
振り返りながら遠くまで行ってみるのもよいのかな、と自分自身にもあてはめて考えた
「君を想い、バスに乗る」でありました。




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