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映画「ブレッドウィナー」を観る [映画(は行)]

タリバンによるアフガニスタン制圧のニュースに理不尽さを感じますが
そのタリバンに関する作品がNetflixで観られるのを知り鑑賞しました。
ブレッドウィナー.jpg
あらすじはYahoo!映画さんより。

タリバンが支配するアフガニスタン。
荒廃したカブールの町で生活している11歳のパヴァーナは、
足の不自由な父親が話してくれる、アフガニスタンの歴史を伝説に見立てた物語を
楽しみにしていたがある日、父親がタリバンに連行されてしまう。
タリバンは女性だけで外に出ることを禁止しているため、残された家族は働くことも
食料を買うこともできない。
パヴァーナは家族のために父親を捜そうと決意し、長かった髪を切って少年に変装して
町に向かう。



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( ノД`)( ノД`)


日頃の小さいことにイラついたり怒ったり不満を言ったりする私、

この作品を見てそんな自分が恥ずかしくなりました。
日本に生まれて当たり前のように平和な中で水もガスも電気も使える
環境で暮らしている私が日頃の不平不満を言ってはいけないくらい、
そのくらい理不尽な環境で生きのびようとする主人公のパヴァーナ、
彼女自身はフィクションですが、パキスタンの難民キャンプで
アフガニスタンの女性や少女に取材して書かれた原作を元に制作された
作品なので、パヴァーナのモデルになった女性が多くいるのだと思うと
なぜこの理不尽な世界が許されているのかと思ってしまいました。

日本では「生きのびて」という邦題で公開されましたが、
原題の「Bread Winner」は一家の稼ぎ手という意味だそうで、
父を理不尽な理由(女に本を読んだ)で刑務所に連れていかれ、
母、姉、小さい弟だけとなり(兄は亡くなったものの理由は不明)
女だけでは買い物に行けないとパヴァーナが髪を切り、
少年を装って
行動するようになります。
女というだけで一人で行動すると叩かれ、買い物にいっても売ってもらえない、
それが少年のふりをして出かけるとそれまでひどい態度だった人たちが
ころっと態度を変える様子を見て、パヴァーナ自身も理不尽な気持ちのまま
家族と共に生きのびるために行動していきます。
とはいえ、家族のために髪を切り、さらに理不尽な気持ちになっていく、
そういう光景にずっと怒りしか感じられませんでした。
ほぼ全てといっていいくらい男性の態度は酷いのですが(特にタリバン)
パヴァーナに手紙を読んでほしいとやってくる文字が読めない男性ラザク、
(亡くなったラザクの妻の名前(ハウラ)の意味を聞いて思わずジワリ)
最初はパヴァーナを男子だと思って刑務所にいる父のことも心配してくれますが
終盤でパヴァーナが娘であることを告白しても助けてくれようとする、
そこに全てではない、ごくごく一部でもそういう心のある人がいること、
同じく男子のふりをして外に出る同級生ショーツィアとの出会い、
これらがパヴァーナを前に押し進めていったように見えました。

映画は、パヴァーナが生きのびるために行動する場面と、
パヴァーナが弟などに語る物語が交錯するのですが、物語の主人公を
亡くなった兄の名前(スリマン)として語っていく中で、
最後の最後、スリマンが繰り返し語る言葉、パヴァーナが知らなかった
兄の亡くなった理由なのですが、これもタリバンによるものだと思うと
信仰の自由があるとはいえ、教義といえば何をしてもいいのか、
タリバンが侵攻してくる前の平和な時代を語るパヴァーナの父の言葉から
一転した様子が映し出されると本当に怒りしかありませんでした。

アメリカ軍撤退に合わせて再びタリバンがアフガニスタンに侵攻し制圧、
20年前とは違う、と、女性の権利は守るかのような発言も真実味を感じられず
この先アフガニスタンの女性たちはどうなるのだろう、またブルカの着用を
義務付けられ自由な行動ができなくなってしまうのではないだろうか、
そんな心配も感じながら見終わりました。

と、私自身は怒りと心配、悲しみばかりで観た作品だったのですが、
パヴァーナが最後に言う言葉が心に沁みました。

怒りではなく言葉を伝えて 花は雷でなく雨で育つから 私は生きる

パヴァーナがお父さんを助けてどこに行くのか、
お母さんとお姉さんと再会できるのか、
ショーツィアとの約束(海で会おう)は果たされるのか、
パヴァーナの言葉の強さを考えると時間はかかってもまた会える、
そうなってほしいという気持ちになりましたが、
いまのこういう事態だからこそ多くの方に観て欲しいと思った
「ブレッドウィナー」でありました。








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