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映画「二重被爆」を観る [映画(な行)]

以前テレビで見てこういう方がいらっしゃることを知ったのですが、
映画でもあると知り、借りて観ました。

二重被爆 [DVD]

二重被爆 [DVD]

  • 出版社/メーカー: アルドゥール
  • メディア: DVD

内容はAmazonさんより。

1945年8月、米国は「戦争終結のため」という美名のもと、
人間の肉体と精神の尊厳を破壊し尽くす原子爆弾を広島・長崎の2つの都市に投下した。
しかもわずか3日間、75時間、直線距離にして約300キロ。
両市で直接被爆するかもしれないと考えられなかった米国の無思慮ぶりは?
既に戦意喪失の日本に対し、2度も原子爆弾を落としたのは何故か?
一方驚くべきことに「二重被爆者」の存在は歴史の中に埋もれたまま、
60年間独自の聞き取り調査はされなかった。
「キノコ雲に広島から長崎まで追いかけられてきたんじゃないかと思った。」と語る山口彊さん。
この映画を通じて、人種や言葉を超え、原爆の非人道性を世界に伝える行動が始まる。



原爆投下から2週間以内に広島、長崎両市に入り、
残留放射能を浴びた二重被爆者は165人、
そして、山口さんのように両市で直接原爆投下に遭遇したのが9人確認されました。

これらの二重被曝された7人の方がカメラの前で当時のことを語ってくれる作品です。

山口さんは三菱重工造船所の設計技師として、長崎から広島に出張しているときに被曝し、
その後、長崎の家に戻ったところでさらに原爆投下に遭遇して被曝します。
山口さんが「きのこ雲が広島から長崎まで追いかけてきたかと思った」と思ったのも、
何がおきたか分からずそう思ってしまったんでしょうね。

山口さんの同僚の岩永章さんは
「原爆の威力を示したかったら広島だけでよかったのではないか」と語ります。

小学校1年生で広島で原爆投下に遭遇し、その後、叔父を頼って向かった長崎で再び被曝された
浦頭和子さんは「原爆の臭いは今でも忘れない」と話します。

被爆者手帳を持つ山口さんは、1994年の被爆者援護法の改訂後、
被爆した都市を一か所書くのみとなった為、被爆した都市は長崎のみの記載になっています。
被曝されていることが分かればいいから、という理由なのかもしれませんが、
ご本人の心情としてみたら納得しがたいものがあるのではないかな、と思いました。

これまでの経験を山口さんたち二重被爆者の方々が語らなかったのは、
思い出したくなかった気持ちが強かったのかな、と思いました。
ただ、原爆投下から60年経ち、広島、長崎の歴史が風化していってはいけないとの思いから
語ることを決意されたのだと思います。

「二重被爆して90まで生きると思っていませんでした。語るために生かされたんだと思います。」


そう山口さんが語るのですが、
片耳の張力を失い、後遺症と闘いながらも、そういう気持ちで語ることを決意し、
語りながらも時折その時のことを思い出して嗚咽する姿に、
私自身は直接戦争を経験した世代ではないものの、こういう歴史を忘れてはいけないし、
核保有国がこういうことを二度を起こさない為にも、核廃棄に向かってほしいと思いました。

山口さんの映像をアメリカとフランス、中国で上映したことも作品の途中で映されるのですが、
映像を見たあるフランス人が山口さんが90歳で元気そうなのに矛盾を感じると
感想を述べる場面があるのですが、後遺症があるし、何よりいつまでも心を蝕み続ける記憶と
闘っていることを理解できないからなのか、と残念に思いました。
(中国で第二次大戦の見地からは日本も中国に残虐なことをしたから公平だと語る子供が
 うつされるのですが、今後どうすべきか、ということも考えてほしいと思いましたね)


BBCのコメディ番組で山口さんを「世界一運の悪い男」と嘲笑し問題になりましたが、
こういうことを言える頭の可笑しい人につける薬はないのかもしれませんが、
どれだけ酷いことだったか知らない無知ゆえのことだったかもしれません。
日本政府ももっと抗議すべきだと思いましたが。

私自身、関東で生まれ育ち、西に親戚がいないのもあって、
第二次世界大戦というと浅草に住んでいた大叔母さんから聞いた東京大空襲の話で、
それでさえ想像したら幼心に怖かったのを今でも覚えています。
(隅田川に爆弾投下後、熱い熱いと沢山の人が飛び込んで亡くなった話が忘れられません)

原爆を投下したアメリカを憎むような教育はすべきでないと思いますが
(若い人で第二次世界大戦でアメリカが敵国だったと知らない人がいるのを以前テレビで見て
物凄く驚いちゃったんですけどね)
原爆投下で一般市民がたくさん犠牲になったこと、核を使うことが非常に恐ろしいこと、
こういうことは今後も語り継いでいくべきですし、
核を保有する国に対して、毅然とした態度で放棄すべきと言えるような人に育てるべき。


何の脚色も演出もなく、みなさんが語り続ける作品です。


だからこそ、見た人それぞれ、感じることがたくさんあると思います。


多くの人に見てほしい作品「二重被曝」でありました。
 


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