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映画「犬と猫と人間と」を観る [映画(あ行)]

「ねこを探して」と同じく、タイトルだけで借りた作品です。

犬と猫と人間と [DVD]

犬と猫と人間と [DVD]

  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • メディア: DVD

内容はamazonさんより。
 
かわいいですか? それとも かわいそうですか? 捨てられた犬と猫をめぐる旅が始まります

町を歩けばあちこちで目にする光景があります。
それは、散歩中の犬や、路地裏でくつろぐ野良猫たち――。
しかし、全ての犬と猫が幸せな一生を送れるわけではありません。
空前のペットブームの影で、日本で処分される犬と猫は年間30万頭以上。
一日に1000匹近くが殺されている現実があります。
あなたは、犬と猫たちのことをほんとうに知ってますか?

捨てられた犬と猫をめぐる冒険が始まります
一人の猫好きのおばあさんの「不幸な犬猫を減らしたい」という思いから、
この映画は生まれました。そして、犬と猫をめぐる旅が始まります。
完成までには4年が費やされました。
監督は、ドキュメンタリー映画『あしがらさん』で路上に生きる人々に寄り添った飯田基晴。
犬と猫が歩くような低い視点から、人と犬猫の関係をしっかり見つめます。
映し出されるのは、鉄柵の向こうから悲しげな目で見つめる犬、
行政施設に持ち込まれる生まれたばかりの子猫たち。
更には、動物愛護先進国・イギリスの姿、捨てられた命を救うため奮闘する人々の苦悩。
でもそんな重苦しい現実の合間に描かれる、動物たちのほのかなユーモアが心をほぐしてくれます。

犬と猫をとおして見えてくる人間の姿
動物には関心がないというひともいるかもしれません。
でも、捨てられた命を懸命に救おうとする子どもや大人の姿から見えるのは、
「いのち」への愛情です。捨てる人たちも、動物が嫌いな訳ではありません。
そして、動物の処分を担う人たちにもまた、愛情があります。
それは私たち人間が抱えるエゴと愛。捨てるのも人間なら、救うのもまた人間です。
「犬と猫と人間と」からは、知られざる多くの現実の先に、
「かわいそう」という感傷を乗り超える、ささやかな希望がみえてくるはずです。










「ねこを探して」とまったく趣が異なる完全なドキュメンタリー作品です。


映画は、監督の飯田さんが一人のおばあちゃん(稲葉恵子さん)と話すところから始まります。


猫の保護活動を何十年にも亘って続けていたおばあちゃんが、高齢で保護活動が難しくなったこと
自分はそう長く生きられないし来年まとまったお金が入るので飯田さんに映画を作ってほしいこと、
映画を観たら捨てられる猫が減るような映画にしてほしいこと、を飯田さんにお願いします。
犬や猫に興味のなかった飯田さんは困惑して、自分でいいのでしょうか、と稲葉さんに聞くと
誰でもいいわけじゃないし、これでも自分には人を見る目があるのよ、と稲葉さんは答えます。
(稲葉さんは『あしがらさん』を観て飯田さんにお願いしようと思ったそうです)


こういうやりとりから始まった映画作りで、飯田さんは何を撮ってよいのか迷いつつ、
関連書籍を調べたり、と手さぐりの取材で映画製作を始めます。


最初に訪れたのは自治体が運営する動物保護センター。
でも、保護されている動物の撮影はほとんどのところで断られます。
(観るとかわいそう、、という意見が出てくるから、だと思われますが)
そんな中、撮影を協力してくれるセンターを見つけ取材します。
飼い主が見つからなければ保護されて5日で犬は殺処分されます。
(猫が譲渡対象になっていないところでは猫は保護された翌日、ということも)


犬猫の保護施設と病院を備えた財団法人神奈川県動物愛護協会が紹介されます。
毎年100匹以上の犬猫を保護し、里親を探し、
1000匹以上の野良猫の不妊手術を行っています。
この協会には里親が見つからずにずっと保護されている犬や
(毛の手入れをさせない為に年に一度羊のように毛刈りされるコッカスパニエルのデニー、
 甘えん坊なのにちょっと気に入らないと人に噛みつこうとする雑種のがじろう、
 噛み癖が直らない為一旦飼い主が見つかったもののその後協会にもどされたしろえもん等)
協会にマイペースで現れ保護されている犬にちょっかいを出す猫のにゃんだぼなど、
個性的な動物がいます。


その他には、多摩川河川敷で遺棄や虐待された猫の世話を続けるカメラマンの小西さんご夫妻、
山梨県で捨てられた犬を保護する施設を運営する小林さん、
その犬たちの飼い主探しに尽力されるオーストリア人カメラマンのマルコさん、
噛み癖の直らないしろえもんのしつけを行うインストラクターの山本さん、
すすき畑で子犬8匹を拾って育てながら飼い主を探す小学生の女の子たち、、
動物保護では先進国と言われるイギリスの事例、、、
稲葉さんが映画で取り上げてほしいという獣医の男性、、、


いろいろな人が登場します。


製作に4年の歳月がかかってしまい、映画製作を依頼した稲葉さんは
完成作品を観る前に残念ながらこの世を去ってしまいます。
自分のお墓の近くに無念の死を遂げた猫の為のお墓の区画も用意した稲葉さん、
そのお墓に手を合わせる監督の飯田さんの姿に
映画が間に合えば、稲葉さんはきっと満足してくれただろうな、と思いました。

保護された犬猫の撮影を承諾してくれる保護センターも中にはありましたが(千葉と徳島)
非難されるのを覚悟の上での承諾でしょうし、大変丁寧に説明してくれる姿に、
現実を観てもらうことでむやみに飼って身勝手に捨てる人が減ればと願っているのだろう、と
画面越しに感じました。
特に、徳島のセンターは、人間の都合で捨てられる動物の存在がある一方、
その殺処分を行う施設の建設で同じ人間が自分の家の近くには建ててほしくないという意見に
施設で処分する代わりに、処分する動物たちを鎮静器にいれた後トラックに積み、
炭酸ガスで殺処分しながら火葬場へ運ぶ、
そんな苦肉の策で対応せざるを得ず、
殺処分数を減らしていくこと、そういう意識喚起を行うことが自分の使命であることを訴えます。


また、神戸市の保護センターで殺処分を行う職員のみなさんたちも画面に登場しますが、
市立動物園に行きたいと思って市の職員になったのが、保護センターに配属になったこと、
もちろん自分は動物は大好きで、処分したくはないけれど
動物嫌いの人が処分するより自分のような動物が好きな人が処分する方が、
処分される動物にとってもいいのかと思います、という言葉に、
こういう方々が身勝手な人間の身勝手な行為の始末をせざるを得ない不条理さも感じました。


以前ニュースになった崖っぷち犬についても映画で取り上げられていました。
崖っぷち犬が引き取り手を募集するニュースが全国で流される一方、
同じ施設で保護されながら殺処分される犬がいるという事実も皮肉に思えましたが、
マスコミも崖っぷち犬を報じるなら、それと合わせて犬や猫の現状も取り上げるべきですし
(でもそういうのってなかなかテレビなどでは報じないものね)
マスコミが大挙して一匹の犬を報じている姿には滑稽さすら感じました。

 

映画の序盤で、ペットショップの様子、18歳以上ならローンを組んでペットが飼える、などという
セールスの文句が映し出されます。


私も一度だけペットショップに行ったことがあるのですが、
小さい子供だけでなく大人さえもペットに手を伸ばし連れて帰りたいような気持にさせられる作りに
(抱っこしたい方はどんどん言ってくださいねー、という店員にはちょっと嫌悪感を感じましたが)
こういうお店が沢山あれば、その場の勢いで買って家に連れて帰ってしまう人もいるんだろうな、
なんて思いました。


こういう2兆円市場ともいわれる日本のペット市場なので、
流行りの犬を繁殖させるブリーダーも多いわけで、それが犬や猫にとってよいものかどうか、、
大金払って犬や猫を買う(飼う?)、中にはそれで自尊心が満たされる人もいるのかなって思ったり。



神奈川県動物保護協会が野良猫に不妊手術を施すシーンで
生まれる直前の子供がたくさん入った子宮を獣医さんが取出すシーンがあります。。
何度やっても苦手でという獣医さんの言葉に、飯田さんはとりだされた子宮を触らせてもらいます。
温かく、でも冷たくなっていく、と飯田さんが語る塊、それも人間の身勝手と傲慢さによるものであり
年間1000匹近くの犬や猫が殺処分される日本、
保護されて里親が見つかり引き取られるのは数%という現状が、少しでも良化してほしいと思います。

 

動物保護で先進国のイギリスでは、猫や犬はブリーダーから直接買うか保護施設でもらうか、
非常に厳しく規制されています。
一方の日本は法的規制もなく、世の中にペットショップが多数存在している中、、
動物保護センターでの殺処分数が多いことから考えると、むやみに繁殖できないように規制するとか
ペットを飼う際のルールやシステムを確立しないといけないのではないかと思いました。
(決してそういうやり方はいいと思いませんが、そうせざるを得ないと思った次第で)



私自身は、父が動物嫌いだったのもあって、実家で飼っていたのは金魚くらいで
犬や猫を飼った経験もないままこの映画の感想を書いているし、
一人暮らしをして猫を飼おうと思ったことがあったものの、最期まで面倒を見て看取れるか、
考えても自信が出てこなくて未だに自分では未だ飼ったことがありませんので、
「犬や猫のこと何にもわかってないくせに」と言われてしまうかもしれないのですが、
今年の初めからちょこちょこお邪魔している某所の猫居酒屋のママさんが、
手弁当で猫を保護し予防接種を打って不妊手術を施し、名前と連絡先を書いた首輪をつけて
保護活動を長年続けている話を聞くにつれ、自分には到底まねのできないことだと思うのですが
この映画を観て、ちょっとだけ背中を押された気分でもあったりして、
自分にもうちょっと根性と覚悟つけてみたいな、とも思いました。

 

と、内容は現実(数字も含めて)を知ることで驚いたりもしましたが
(こんなこと今頃知ったの?と言われると困っちゃうけど(^_^.))
神奈川県動物愛護協会の「しろえもん」(トレーニングでやんちゃが少しずつ直っていきます)や
自由奔放な「にゃんだぼ」を観ていると和んだりもしますので、
全編通して見ていて悲しくなったり辛くなったり、、、ということはありません、念の為。


飯田監督が映画全般で訥々と語っているのが、非常に真摯な姿勢で好感が持てますし、 
映画製作のきっかけを作った稲葉さんが願った通り、
この映画を多くの人が見ることによって、無責任に犬や猫(他の動物も同様だと思います)を
飼うことのないように、殺処分されたり虐待される動物がこれ以上増えないように、
減ってほしいと思った「犬と猫と人間と」でありました。

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