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映画「ぼくが生きてる、ふたつの世界」を観る [映画(は行)]

予告編を観て気になっていた作品です。
2つの世界.jpg

あらすじは映画.comさんより。

宮城県の小さな港町。
耳のきこえない両親のもとで愛情を受けて育った五十嵐大にとって、
幼い頃は母の“通訳”をすることもふつうの日常だった。
しかし成長するとともに、周囲から特別視されることに戸惑いやいら立ちを
感じるようになり、母の明るさすら疎ましくなっていく。
複雑な心情を持て余したまま20歳になった大は逃げるように上京し、
誰も自分の生い立ちを知らない大都会でアルバイト生活を始めるが……。
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互いを思いやる家族の愛。

この映画は主人公の五十嵐大さんの自伝的な著書を基に映画化されたものだそうですが、
予告編を観てすぐ思い出したのが、
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聴覚障碍者を親に持つコーダを描いたこの映画でした。

耳の不自由な親を助けようと一生懸命手話を使う子供時代、
他の子供の親と自分の親が違うことにどこか恥ずかしさを感じたり、
手話を使う様子を奇異な目で見られてしまうことに対して怒りを感じたり、
思春期に入ると親の耳替わり、という立場から脱したいという気持ちが強くなって
実家(宮城県の北塩釜)から東京に飛び出す大。

自分が何をしたいのか分からないまま上京した大が偶然出会った聴覚障碍者の女性、
この女性を通じて知り合う聴覚障碍者の人々を通じて親のことを理解していきます。
そんな中で印象的だったのは、彼らと出かけた飲食店で、注文などを手伝うと、
その中の1人の女性に「自分たちで出来ることを奪わないで」と言われて、
自分が親の耳替わりだったことが嫌だった、それで実家を飛び出したものの、
どこかそのことに罪悪感を感じていた大にとって、通訳することが時に聴覚障碍者の
妨げになるということを知って、気持ちが軽くなったように見えた場面でした。

「コーダ」でもそうですが、音が聞こえないのでアラームなどを代わりに聞く事は
大事なことですが、手伝わずとも自分で出来ることまでやってしまうことはない、
ということに気づいた大の表情を見ると親ときちんと向き合えるようになるかな、
と温かい気持ちになれました。

大が小さい頃から丁寧に描いているので大の葛藤する気持ちも理解できましたが、
大を頼りにしながらも自分たちのことを気にせず好きなことをやってほしいという
親心も感じられました。
大学受験に失敗して浪人中の大が出かけたパチンコ屋でばったり会ったのが父、
母には言えない秘密(笑)が出来た2人でじっくり話す場面、
母とは小さい頃からの楽しい思い出(折り紙を使った郵便やさんごっこ、外出先で
食べたパフェなど)、反発しながらも親を大事に思う大の姿も感じられました。

最後には上京前の回顧シーンが描かれるのですが、東京に行ったら必要だろう、と
母が大を連れて都会(多分仙台かな)でスーツを買い、一緒にパフェを食べる場面、
大が母と手話で会話し北塩釜まで戻ってきたとき、「いままでごめん」と謝る大に
「なにが?」としらばっくれる母。
その母が外で手話で会話してくれてありがとうと大に伝える場面で思わず私も
涙腺が決壊しました。

映画でちょっとだけ??と思ったのが、母明子の両親で、
(でんでんと烏丸せつこが演じていた)
小さい頃から耳が不自由な明子を普通の学校に通わせた後、やっぱりダメか、と
聾啞学校に転校させたというエピソードがあったものの、両親2人は手話が出来ず
自分の子供が成長するのに手話を習おうとしなかったのか?という疑問が湧きました。
それだからなおさら大が親の耳替わりにならなければいけなかったという設定ですが、
親なら子供のために手話を学ぼうとしないのか??という点だけはこの映画の
最初から最後まで疑問として渦巻いていました。
(それが気にならないくらいの展開でよかったのですが)

大の反発する態度について父が母に「どんな家でもいろいろ悩みがある」と
言っていた通り、どの家でも大なり小なり色々な問題はあるわけで、
自分と違うと「ああ大変だな」と思ってしまいがちですが、そのことに対して
過剰に反応するのはよくないことだなと思いました。

「コーダ」と同様、大の両親役はお二人とも耳が不自由な俳優さんですが、
大を演じた吉沢亮さん(アイリスオーヤマのCMでしか知らなかった)と
子役の方も素晴らしく、更に母役を演じた忍足亜希子さんの演技が素晴らしくて
映画の賞レースでも健闘されるのではないかと期待しています。

2年前に観た「コーダ」とどこか重なる部分はありますが、
小さい頃(子役が吉沢亮さんにそっくりでびっくり)から大人になるまでの
大の姿を丁寧に描いているので大の目線でも、母の目線でも父の目線でも
それぞれに共感しながら観ることが出来て熱い気持ちになれた、
「ぼくが生きてる、ふたつの世界」でありました。









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溺愛猫的女人

塩竈が舞台になっているのですね。ぜひ観たいと思います。
by 溺愛猫的女人 (2024-10-25 10:40) 

夏炉冬扇

うつぼさん、心のひだが細かいですね。
性格として「のめりこむ」タイプかなぁ。
ロマンです。
by 夏炉冬扇 (2024-10-25 22:04) 

うつぼ

溺愛猫的女人さん、おはようございます。
漁港や駅の風景、穏やかな雰囲気で映画の世界観に合っていたと思います。
是非ご覧になってくださいね。(^-^)
by うつぼ (2024-10-26 09:19) 

うつぼ

夏炉冬扇さん、おはようございます。
そんなに繊細な性格ではありませんのが(笑)映画は現実からの逃避、
のようなものでその世界観に共感できるとどっぷり、、かもしれません。
ロマン、あるとよいのですが。(^^;
by うつぼ (2024-10-26 09:22) 

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