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映画「アイダよ、何処へ?」を観る [映画(あ行)]

喬太郎師匠と大久保さんの映画を楽しんだあとは、
ダッシュでヒューマントラストシネマ有楽町へ移動して、2本続けて鑑賞します。
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予告編を観て気になっていた作品です。

アイダよ、何処へ.jpg
あらすじはYahoo!映画さんより。

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争下の1995年、
セルビア人勢力に占拠された東部の町スレブレニツァ。
国連平和維持軍の通訳として働くアイダは、勤務中に重要な情報を知る。
セルビア人勢力が基地にまで迫る中、アイダは助けを求めて押し寄せる同胞や
家族を守ろうと奔走する。


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権力者の争いの犠牲になるのはいつも市井の人たち。

旧ユーゴスラビアといえば、もう14年近く前になりますが、
昔の勤め先の出張で訪れたクロアチアとセルビア、の思い出ですが、
出張前に付け焼刃的に旧ユーゴスラビアからの独立について学んで、
一つの国家(軍事国家)が民族、宗教の違いで分裂(独立)、
共産圏が民主化によって分かれていく、でも、もともと権力を握っていた人たちは
それを好ましく思わず、様々な理由をつけて攻撃する。

1984年のサラエヴォオリンピックでカタリーナ・ヴィットが金メダルをとり、
(1994年のリレハンメルオリンピックで紛争で破壊されていくサラエヴォを思って
 平和の願いを込めて「花はどこへ行った」で演技した姿は記憶に残っています)
その後、紛争が起きてボスニア・ヘルツェゴヴィナとして独立してからも
サラエヴォはセルビア人勢力(スルプスカ共和国軍)に包囲され
多くの市井の方々が殺害されたということは知っていましたが、
この時期と同じ1995年に起きたスレブレニツァの虐殺については
今回初めて知りました。

ボスニア・ヘルツェゴヴィナは、クロアチア人(キリスト教徒が多い)、
ポシュニク人(イスラム教徒が多い)、セルビア人(ロシア正教会信徒が多い)、
異なる宗教と民族で構成される国ですが、
セルビア人が自分たちで国を統治する、他の民族は排除するという考えで
(セルビア人すべてが悪いわけではないと思いたいのですが、
 セルビア人が民族浄化の名の下に残虐行為が行われている)
国連によって保護される安全地帯だったスレブレニツァにセルビア人が侵略し、
国連軍と交渉し、他の安全地帯に移動させると約束したものの、守ることなく、
男性(子供、老人、女性も含まれていたそうです)8,373人を虐殺する残虐さ。

今作はフィクションですが、史実に基づいて国連軍の通訳という架空の人物を
設定してその女性の目線で描かれた作品です。
ジェノサイドとして認定されたのが2004年、約10年後、第二次世界大戦後の
ヨーロッパ最大の虐殺とwikiに書いてありましたが、この映画を観るまで
知らずにいた自分を反省しました。(._.)

民族浄化については、
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自分の故郷(旧ユーゴ)では結婚できない2人が北欧に逃げ延びてくる話とか、

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民族浄化で心にも体にも傷を負った女性を描いた作品など、
これまでも多少観てきましたが、今作のように密室に閉じ込めて外から銃撃して殺す、
というそれでも非人道的で残虐なセルビア人たちの姿を観て、
自分たちの立場を正当化する、または守るために他者を排除するという思考が
悪い方向にどんどん加速していったのかと思いましたが、
虐殺を指示した元司令官に終身刑の有罪判決が出たのが2017年と知り、
ジェノサイドと認められそれから有罪判決が出るまで10年以上かかる、
被害者のご家族にとっては長い長い時間だったと思います。

今作では国連の通訳という立場を使って家族を守ろうとするアイダの姿を観て
平常時であればズルいと思いますがこのような時、家族と離れてしまったら
夫や息子たちは確実に殺されるとわかっているが故の行動であったと思うと
それから時が経っても家族を守りきれなかったという後悔の念がアイダには
いつまでも残っているのだろうと思いました。

時が経ってアイダが教職に復帰する場面で、父兄で授業を見学している中に
アイダの夫と一緒にセルビア人のスルプスカ共和国軍と交渉に行った女性、
国連軍基地にやってきて基地内を見せろと強要するスルプスカ共和国軍の
隊長の姿が見えたところで映画は終わるのですが、平和に生きていくためには
過去の対立は表面上見えないように穏やかにするのがよいのか、
いつまでも心の傷は消えないけれど復讐したい気持ちを抑えていかなければ
いけないのか、アイダの気持ちを考えるとやるせない気持ちで観終わりました。

今作の虐殺は四半世紀前ですが、現在でも、ミャンマーのロヒンギャ族迫害や
中国の新疆ウイグル自治区でのウイグル民族弾圧、
インドでもヒンズー教徒によるイスラム教徒迫害など、宗教や民族の違いで
迫害、弾圧する残念なことが起きていますが、多数が少数を排除するという考えは
同じ人間として持つべきではないと思います。

コロナ禍で大変な中でも総裁選で一部盛り上がっている平和ぼけの日本にいると
こういうことが想像しづらいのですが、宗教も反社会的でなければ自由だと思いますし
他を認める、自分と違うからといって排除しない、平和の世界がどこでも当たり前に
存在できるようにと願った「アイダよ、何処へ?」でありました。









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