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映画「トゥルーノース」を観る [映画(た行)]

久しぶりに営業再開した日比谷のシャンテシネマで何かみようと
スケジュールを確認していて見つけた作品です。

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あらすじはYahoo!映画さんより。

幼い兄妹・ヨハンとミヒ、彼らの両親は在日朝鮮人の帰還事業により北朝鮮に渡るが、
父が政治犯の容疑で逮捕され、母と兄妹は強制収容所に収監されてしまう。
寒さが厳しい収容所での生活は日々の食事にも事欠き、母子は極限の状況を支え合って
生き延びていく。
ある日食べ物をめぐるいざこざによって母が殺され、絶望するヨハンであったが、
母の最期の言葉をきっかけにわれに返る。



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見てよかった、と心の底から思える映画でした。

北朝鮮の強制収容所の様子を脱北者の証言をもとに描いた作品だそうですが、
現在でも12万人の方が収容所で過酷な状況におかれているとエンドロールに
記されたのを見て、今この時も、正当な理由なく収容所に送られて人権を蹂躙され
耐えている人が12万人もいることに驚きました。

主人公のヨハンは在日の両親が在日朝鮮人の帰国事業で北朝鮮に住むように
なったのですが、帰国事業については、なんとなくぼんやりしか知らず、
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この作品の中で韓国語もろくに話せないのに帰国しようとする、という場面を見て
在日として暮らすことへの辛さ、そこから地上の楽園と言われる北朝鮮へ行こうと思う
気持ちも理解できないわけではないけれど、その先にあるものは決して楽園ではなく、
そのことをこの時に彼ら(演じていたのは大泉洋)は知らなかったということに
観ていて切なくなってしまたのですが、自分の身近に在日の方がいなかったので
感覚としては本当にぼやけた感じでそのまま大人になってしまった私には、
ヨハンの家族も悩みに悩んで北朝鮮に渡り、楽園と思っていた世界が真逆で、
あらぬ疑いで父親が連行され、残った家族(ヨハン、母、妹のミヒ)も唐突に
強制収容所へ連れていかれる、生きるために冷酷なことも辞さない、権力に阿る、
そうやって生きていこうとするヨハンに対して、母と妹ミヒは人間としてどう生きるか、
その気持ちを忘れずにいたことを母の死によって思い出したヨハンが態度を改めて
ほっとする場面があるものの、収容所の劣悪な環境が終始描かれているのを見ると、
心が苦しくなるばかり、妹ミヒが北朝鮮の看守にされたことも憤りと悲しさが混じって
しまい、それでもミヒが前向きに生きようとする姿にちょっとほっとしたり。

最後の場面を見て、冒頭の場面で思っていたことが思いきり覆されてしまう、
そんな驚きはありましたが(ネタバレになるから言えないけれど)
全編アニメ、言語が英語、という表現方法を採用しているのが、
実写(言語がハングル語)で観るよりも自分の気持ちをそれでも落ち着かせて
見ることができたと思います。

監督の清水ハン栄治さんも在日の4世(現在は帰化されているそうです)、
なんとか北朝鮮の現実を知ってほしいと思って10年かけて制作されたこの作品、
内容が内容なので出資者を募るも大変、ご自身の貯蓄を切り崩されたりとご苦労が
多かったと記事で読みました。
また、アニメ制作にあたってもスタジオに委託する困難もあったようで、
コストを抑えて質の高いアニメを制作できるとインドネシアのアニメーターさんを中心に、
「すみません」という名前の組織をつくってアニメ制作したそうで、
冒頭のクレジットにも犬の絵の下に「すみません」と書かれたロゴが映し出され、
そういうご苦労の後に完成した作品なのだということを知りました。

収容所には日本から拉致された方も収容されている場面がありましたが、
拉致され工作員の教育を言い渡されて拒否した方々だという説明もあり、
偉大なる指導者のためには何をしてもよいという判断しかできないこの国には
(一般国民の方はどうか分かりません)
憤りしか感じられませんでした。

タイトルの「トゥルー・ノース」は、本当の北朝鮮(北朝鮮の現実)、という意味と、
常に北をさす羅針盤になぞらえて、どんな時も人間として向かわなけれいけない方向として、
生きる目的という2つの意味を込めて作られたそうですが、ヨハンやミヒの姿から
この2つの意味を感じることができました。

残念なのは上映館が非常に少ないこと。
東京でも今は東宝系のシャンテシネマのみ。
ミニシアター系で上映館が増えればよいと思っていますが、
拉致被害者の問題が未だ解決されない日本に住む私たちが
北朝鮮の現実を知ることは大事ですし、そのために鑑賞することの意義も
非常に大きいと思った「トゥルー・ノース」でありました。



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