SSブログ

映画「隔たる世界の2人」を観る [映画(は行)]

先日見た「パーム・スプリングス」がタイムループもの、からのつながりで、
Netflixで短編作品があったので鑑賞しました。
two distant strangers.jpg
内容は映画.comさんより。

一夜をともにした女性の部屋で目覚めたグラフィックデザイナーのカーターは、
愛犬の世話をするため自宅へ帰ろうとする。
しかし路上で遭遇した警官メルクに所持品検査を強要され、
抵抗すると地面に押さえつけられ窒息死に追いやられてしまう。
意識を失った瞬間、カーターは再び女性の部屋で目を覚ますが、
帰ろうとするとやはりメルクに遭遇し、今度は射殺されてしまう。
自分がタイムループにはまり込んだことに気づいたカーターは、
メルクに殺される運命からどうにか抜け出そうとするが……。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(;O;)

29分の短編作品なのにとても濃厚な作品でした。
とても切なくて悲しくて腹立たしくて、
どうにかしたいけれど私には何もできないもどかしさ、
そんな気持ちがモヤモヤ渦巻いたまま鑑賞終了。
(アカデミー賞の最優秀短編実写映画賞を受賞したんですね)

タイムループもの、先日見た作品もハッピーエンドですが、
今作はハッピーには終わらない、30分の短い時間の作品に
込めたメッセージはとても深く重く簡単には解決できないものです。
最初にカーターが白人警官に殺されてしまう様子が、
George Floydさんを連想させる窒息死、そこからカーターがいかに
白人警官に殺されずに愛犬の待つアパートに帰れるか、
重たい問題ではあるけれど映画だし戻れるんじゃないかな、と
画面に向かって願って観ているのですが、カーターがが帰れぬまま
映画は終わってしまいました。

カーターを毎回殺す白人警官、彼もタイムループで毎日毎日カーターを
見つけては殺しているんだろうなと最後の場面で分かるのですが、
警官がカーターをパトカーで家まで送る途中、NYのビルの屋根が
映し出される場面で、George Floydさんをはじめ色々な人の名前が
書いてあるところに"Say their names"という言葉。
白人警官が自分は典型的なアメリカ人であると認識していることや、
この国が腐っているから警官になったこと、こんなに黒人と話したのは
初めてだということ、などを語っているのですが、こういう白人が
多いということ、それによって差別が起きていることを連想しました。
と、白人警官にアパートまで送ってもらったところで、
カーターは銃で撃たれて殺されてしまうのですが、カーターの周りに流れる血、
その血だまりがアフリカ大陸の形になっているのが、
有色人種であるアフリカ系アメリカ人に対する白人による差別、
未だに根強く(トランプ政権時代で悪化した)自由の国であるアメリカが
抱える大きな問題を描いている作品でした。

そんなアフリカ系アメリカ人によるアジア系へのヘイトクライムも問題に
なっていますが、肌の色で差別することの虚しさを感じます。

そんなカーターが、再び目が覚め女性に夢(タイムループ)の話をした後、
何とかするさ、どれだけ時間がかかっても何度繰り返しても何とかするさ、
俺は絶対犬が待つ家に帰るんだと思いながらアパートを出ていく姿の後、
エンドロールが流れますがカーターのように理不尽に命を落としてしまった
方々のお名前が次々と紹介されます。
その時に、この曲が流れるのですが、 
公民権運動で法律ができたことを歌った曲、
法律ができても人の心までは変えられない変わってもちょっとだけで
理想と程遠いこともあるし変わらないものはそのままで変わらない、
みたいなこの歌が流れるのってなんだか皮肉だな、と思ったのですが、
私自身はこの作品を見てよかったと思っていますし、少しでも多くの人が
この作品を見ることによって考えるきっかけを作ってほしいと思った
「隔たる世界の2人」でありました。


nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。