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映画「ハニーランド」を観る [映画(は行)]

明らかに単館上映系の映画なのに松竹系のシネコン(MOVIX)で上映されていたので
観に行きました。

ハニーランド.jpg

あらすじはYahoo!映画さんより。


北マケドニアの首都スコピエから20キロほどの距離にある谷で、
自然養蜂家の女性が暮らしている。
目の見えない老いた母親の世話をしながら生活する彼女は、
「半分は自分に、半分は蜂に」という信条を貫いてきた。
ある日、面識のない家族がトレーラーで突然やって来る。





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見てよかったと心から思えた映画でした。(^-^)

主人公はハティツェ・ムラトヴァさん。
ヨーロッパの最後の自然養蜂家と言われている方だそうです。
リューボ・ステファノフ監督とタマラ・コテフスカ監督は
環境団体から依頼を受けて撮影を始めたそうですが、バッテリーの理由で撮影は4日間。
3年間に亘って撮影された作品です。


ハティツェは北マケドニアの山岳地帯で目の悪いお母さんと2人で暮らしているのですが、
(初めて知りましたが北マケドニアは旧ユーゴなんですね)
石を積んだ崩れそうな家、緑が少なく電気も水道もない中で昔ながらの生活を送るハティツェ。
自然と共生する、といえば聞こえはよいのですが、こんな不便な中で暮らすのは大変だろう、
とみているだけで心配になってしまいますが、足腰が不自由な親がいるから仕方がない、
そんな気持ちで生活しているのかと想像してしまいました。
ハティツェの養蜂の様子を見ると、テレビなどでよくみる養蜂場とは全くことなり、
ハチの巣を育てる場所が石塀の中や、木の中、高い崖を上ったところだったりします。
丁寧にその場所を開け、乾かした牛糞を粉末にして噴霧しながら蜂密たっぷりの巣を
取り出すものの(独特の節回しで歌う姿がまたよいのです)、半分は蜂のために、と
巣を全部とることなく半分は残すことで、その後また蜂とよい関係を築いていく、
そんな様子が丁寧に描かれます。

丁寧にとった蜂蜜、不純物もなく非常に質が高いという自信をもって、
電車にのって都市部に行き、市場で販売するとき、決して言い負かされない姿、
そして販売して手に入ったお金で白髪染めをうれしそうに選ぶ姿を見ていると、
年が近い(彼女は1964年生まれ)だけにどこか親近感を感じました。

自然と共生しながら生活するハティツェの前に、移動放牧を行う一家がやってきて
(ハティツェの言葉だとトルコからこういう人たちが頻繁にくるみたいですね)
彼女の生活が一変します。

耳の遠い母との二人暮らしから、小さい子供たちと触れ合える時間がもてて
ハティツェの表情が明るくなっていってよかったと思っていたのもつかの間、
養蜂を子供たちに教えるハティツェを見て一家の父親も巣箱を大量に購入して
養蜂を始めるのですが、大量注文に応じるために、巣すべてをとってしまい、
それ以降は蜂蜜がとれなくなってしまう事態になると、
子供たちにハティツェの育てる巣の場所を聞き出し、それさえもすべてとって
売りつけてしまいます。

半分は蜂のために、といハティツェは父親に言ったはずなのにそれを無視、
ドキュメンタリーでこの展開って台本もないのに何?どうして?と
画面を見ながら驚き怒った私です。

映画関連記事をネットで調べていたら、監督たちは父親を止めても、
撮影隊の不在時には元通りになると傍観者に徹したそうですが、
自然と共生するより、生活のために生態系を壊してでも稼ごうとする、
自分も同じ立場ならそうしてしまうかもしれないなと怒る一方で、
この一家だけがそうではないし、便利な生活に慣れてしまった人間たちには
何かのきっかけでこういう行動をとってしまうのはあり得るのかと思いました。
(結局この一家は途中で引っ越していなくなります)

ハティツェはお母さんを亡くされた後、養蜂の指導をされているそうですが、
彼女の指導で商業主義一辺倒ではない養蜂が増えていくことを願っています。

自然との共生、生物多様性の尊重あってこそ、人間がこの地球で暮らせるのであって、
消費も目的でこれらを尊重しないと人間が自然から報いを受けるのだろうな、
そんな気持ちになってこの映画を観られたことに感謝の「ハニーランド」でありました。









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