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映画「サンダカン八番娼館 望郷」を観る [映画(さ行)]

私うつぼのブログ、といえば、
 呑んで[ビール]呑んで[バー]食べて[レストラン]旅をして[飛行機]、という感じの記事が多いのですが、

最近、映画記事[カチンコ]にご新規様からコメントをいただいたりしたので
ちょっといい気になっております。(^_^)

映画も気が向けばポツポツ見るのですが、下書きにしたままボツになってしまったものも多く
(記事を一気に書けない性格なもんで(^_^.))
そのまま流れて、いや流してしまうかも、、、と思っていた下書き記事を引っ張り出し
アップすることにしました。




 

一昨年のシンガポール旅行で訪れた「シンガポール国立博物館」で
からゆきさんについてもっと知りたくなった私、

サンダカン八番娼館 (文春文庫)

サンダカン八番娼館 (文春文庫)

  • 作者: 山崎 朋子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/01/10
  • メディア: 文庫

この本を読んで、自分の住む日本の貧しい農村や漁村から女性達が東南アジアに送られ
からゆきさんとして働かされた事実を知りました。

この話を会社の先輩にしたところ、
学生時代に今は無き西荻名画座という名画座のオールナイトで
映画版を(砂の器と2本立て)観たという話を聞いたら私も観たくなりました。。

が、近所のTSUTAYAにDVDなく(;_;)TSUTAYAディスカスで予約リストに入れて半年。

やっと届きました。。。。

サンダカン八番娼館 望郷 [DVD]

サンダカン八番娼館 望郷 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 東宝
  • メディア: DVD

一体、全国のTSUTAYAで何本くらい在庫があるんでしょう。。。
なんてことを思いながら早速鑑賞しました。。。




あらすじは、、、、Amazonより転載。  相変わらずの手抜きですんまそん。。 


ボルネオの港町サンダカンを訪れ、かつて“からゆきさん”と呼ばれた
日本人娼婦たちの墓などを探す女性史研究家・圭子(栗原小巻)は、
かつて九州で出会った元からゆきさんのおさき(田中絹代)から聞いた話の
数々を思いかえしていく。
戦前、若き日のおさき(高橋洋子)はサンダカンに娼婦として売られてきて、
そこで苛酷な半生を過ごしたのだった…。




熊井啓監督作品ですが、
ひかりごけ [DVD]

ひかりごけ [DVD]

  • 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
  • メディア: DVD
熊井作品は「ひかりごけ」に続いて2本目です。



あらすじ自体は大筋で原作をなぞっているのですが、
やはり2時間くらいで収めるとなるとどこか制約が生じてしまうのでしょう。


元からゆきさんの「おサキさん」が娼館で働いた後、
日本に帰国する前に英国人の妾さんとして生活したエピソードが一切カットされていたのと、
満州に行ってからの様子についても、田中絹代演じる晩年のおサキさんが
ちょっと語るだけに留まっていたのが個人的には残念でした。


とはいえ、原作で山崎朋子さんが書かれている「女性底辺史」という観点から見ると
非常に訴えるものの多い作品だったと思います。


貧しい九州の農村からボルネオに300円で売られ、
暫くは丁稚奉公のように娼館で下働きしていたおサキさんが、突然客を取れと言われ
化粧し、綺麗な着物に身を包んで客を取らされた後は毎日4~5人の客を取る日々、
そして、日本兵がボルネオにやってくると1晩で30人もの客を取らされた夜、
現地で知り合った日本人の恋人(新人の田中健)に別れを告げられる。。。

早く故郷に帰りたいと他のからゆきさんが取りたがらない現地の(有色)の客を取り
お金を貯めて日本に帰りたいと考え続けたおサキさんに降りかかる不幸の数々を見ていて
自分と同性の女性が、100年も昔ではない、それほど昔のことでもない時代に
このような目に遭っていたことが本で読んでもこの映画でも衝撃的でした。

戦争というと、従軍慰安婦の話はニュースなどでも聞かれることがありますが、
「女衒」に騙され搾取され、、、という光景、原作を読んでいてもそうでしたが、
腹立たしく、悲しく切なく、画面越しに見ている私でさえやりきれない気持ちになりました。

おサキさんは、ボルネオから何とか故郷の村に戻ることができましたが、
妹(おサキさん)が遠くに連れていかれるのを泣きながら見送った兄は
やっと帰ってきたおサキさんを冷たくあしらい、近所の目に晒されるのを嫌がります。
おサキさんがボルネオに行った後、結婚し子供も生まれ、
おサキさんの仕送りで建てた家に住む、、なのに、おサキさんを汚らわしい一族の恥、
のように思っています。

兄が以前と違う接し方なのを疑問に思っていたおサキさんは、
兄夫婦がおサキさんを汚らわしいと思っていることを陰で聞いてしまいます。
小さいコミュニティの中で他人の目を気にして生きていかなければならないとはいえ
村中がおサキさんに対して兄と同じような目で見ていること、
兄夫婦の言葉を聴いたとき失意のどん底に突き落とされたものの、
その後、親戚に迷惑をかけないように、と村の奥の廃屋同然のようなところで
一人つましく暮らし続けていたおサキさんの様子には、
貧しい農村に生まれたおサキさんの運命に翻弄される姿を見たような気がします。


そんなおサキさんのところに取材であることを隠して近づいて一緒に生活し、
からゆきさんのことを聞き出したのが作者の山崎さん(映画では栗原小巻)ですが、
原作でも思ったとおり、取材方法に問題がなかったかというと問題はあったと思います。
それでも、おサキさんは(おかしいな、と思ったはずなのに)何も聞かず、
自分のことを語り続け、圭子が東京に戻る際、自分のことをどうして聞かなかったのか問うと
「誰にでも事情はある。相手が自分から話すならまだしも、何も言わないものをどうして
 聞くことができるのか」と答えるおサキさんの姿にぐっときました。

ただ、原作でも「これは別の作品として発表してもよかったのではないかしら」と思ったのが
作者(映画では栗原小巻演じる圭子)がボルネオにからゆきさんの墓を探しに行く場面。
感想というほどでもないのですが、なのですが、ボルネオで圭子を案内する男性が
水戸黄門に出ていた風車の弥七(中谷一郎)でびっくりした、というしょーもない感想のみで
おサキさんと別れを告げたところで終わらせてもよかったんじゃないかな、というのが
個人的には少々残念なつくりだったような気がします。。。
個人的には栗原小巻がどうしても違和感ありありだったのですが、
若い頃のおサキを演じた高橋洋子、晩年にひっそり暮らす老女おサキを演じた田中絹代、
そして、おサキが途中から世話になる娼館の女主人を演じた水之江滝子は
見ごたえが非常にあります。

というわけで、なかなか借りるのも難しい(時間がかかる?)作品ですが、
日本の歴史の一部として一度は見てほしい、「サンダカン八番娼館」でありました。

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コメント 12

krause

この本と映画は、20代の頃に読み鑑賞しました。当時の私には、非常にインパクトの強い内容で、暫くこの作品のことばかり考えていたと記憶しています。人権も人の命も軽い時代だったことを、強烈に思い知らされます。

by krause (2011-02-22 08:30) 

rtfk

あ~ダメです~うつぼ姐さんの文章を読むだけで朝から泣けます(涙・・・)
by rtfk (2011-02-22 09:07) 

lovin

こういう悲しくて腹立たしい事実があったこと、
埋もれさせてはいけないですよね。
本、映画っていうのはそういうことを伝えていく媒体なんだな。。
去年の秋にやっていたTBSの「ジャパニーズ・アメリカンズ」を観た時も思いましたが、今の時代に生まれて幸せなんですね。私たち。
by lovin (2011-02-22 12:51) 

cocoa051

サンダカン八番娼館、読みましたよ。望郷も観ました。
それまでは「からゆきさん」という言葉自体、知りませんでしたので、ショックでした。
それからずっと時間が過ぎて、今度はその逆の「じゃぱゆきさん」という言葉ができました。
東南アジアからの女性たちの問題です。バブルが弾けたことで世間的には静かになりましたが・・・。
by cocoa051 (2011-02-22 13:58) 

うつぼ

krauseさん、こんばんは。
二十代のころ、ちゃらちゃら流行にのっていてこういう本に巡りあえなかった自分にガッカリですが(-_-;)、シンガポールに行って知ったこととして本にも出会えてよかったと思います。
こういうことを繰り返してはいけないと実感しました。。
by うつぼ (2011-02-23 21:27) 

うつぼ

rtfkさん、こんばんは。
映画のDVDはなかなか借りられそうにありませんが、原作の単行本でしたらamazonでも購入できますし、、機会があれば読んでいただきたい作品です。同性としての感じ方と異性としての感じ方に差は多少あるかもしれませんが、是非。。
by うつぼ (2011-02-23 21:29) 

うつぼ

lovin姐さん、こんばんは。
個人的に不満があったとしても、女性として時代に翻弄されない時代に生きることができたのは有難いことなのかもしれません。
いつも愚痴愚痴してる私も、この作品を知って、こういう歴史を忘れてはいけないと思う同時に今の時代に感謝したりしました。
by うつぼ (2011-02-23 21:31) 

うつぼ

cocoa051さん、こんばんは。
私自身はじゃぱゆきさん、という言葉を学生時代に知って、
その後から遡って、、、ですが、兵として戦う男性、と、
このように運命に翻弄される女性、、どちらも平和であれば
ありえないんだろうな、、、と思う存在かと思っています。
自分がおかれている状況がいろいろ問題があるとはいえ、
本当に恵まれているんだな、と改めて思わされますね。
by うつぼ (2011-02-23 21:44) 

Southerly

この映画・・・、山崎さんの原作もですが、あることは知っていながら未見・未読です。特に触れたくないことではなくて関心はあったのですが、他の関心事にかまけて遠ざかっていました。
改めて、うつぼさんの紹介記事を読んだことにより、DVDを観てみようと思っています。DVDの入手に苦労されたようですね。僕もTSUTAYAの会員ですが、地元と《SHIBUYA TSUTAYA》の両店を主に利用しています。カードを持っていれば、全国どこの店舗でも利用できるようになって便利になりました。渋谷のほうにレンタル在庫がないのかなぁ・・・、調べてみます。

人間は愚か者で、戦争は必ず世界各地のどこかで起こっていますよね。そして、そこで悲惨な目に遭うのは女子供たちです。特に女性は、男どものどうしようもない性衝動のために、慰みもののような状況に置かれがちです。‘からゆきさん’や‘じゃぱゆきさん’の問題は、どこの国でも起こりうることなのですね。
うつぼさんがシンガポールでサンダカンのことを知ったということ・・・、外から自分の国を知るということの好例ですよね。この映画や原作の紹介をありがとうございます。

僕自身の映画記事も寝かせておくことが多いので(笑)、アップするまでに時間がかかります。どうか、うつぼさんの「蔵出し」もごゆるりと・・・なんて、勝手なお願いをしてしまいました。(笑)
by Southerly (2011-03-01 11:44) 

うつぼ

Southerlyさん、こんばんは。
学校で学ばないことが沢山あるんだな、と大人になってから
知ることが多いことに気づかされますが、戦争という異常事態に
女性や子供が犠牲になるということが繰り返されることが
ないように、なんてことを思いながら映画を観ました。
Southerlyさんもお時間かかるかもしれませんが、是非ご覧に
なってください。
映画記事の蔵出し、、多分1年以上放置、、なんてものばかりで
アップできないかもしれませんが、気長にお待ちください。。
by うつぼ (2011-03-05 00:25) 

9sugo

初めまして。
読ませていただき、あの映画が目の前に再現されました。
私の田舎は、おさきさんのとなり町です。映画の中にも私の地元が撮影場所となり出て来ました。

天草のド田舎の人たちは、海を渡って仕事を求めていたようです。私の祖父の弟もシンガポールで床屋をやっていたそうです。

素晴らしい評に感銘してコメント入れさせていただきました。
by 9sugo (2021-07-21 11:16) 

うつぼ

9sugoさん、こんにちは&はじめまして。
古い映画記事にコメントいただきありがとうございます。
9sugoさんは映画の舞台の隣町なんですね。
天草は30年以上前の大学生時代に一度だけ行きましたが
(暑い夏に食べたかんざらしが美味しかった思い出です)
耕作地が少ない土地でかつては職を求めて東南アジアに向かった人が
多かったのですね。
今回コメントをいただいてまた改めて鑑賞したくなりました。(^-^)
by うつぼ (2021-07-22 13:49) 

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