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TBS落語研究会で「お菊の皿」 [落語・お笑い]

8月下旬、、とちょっと前の話ですが、
取引先のオジサンに「うつぼさんって落語好きなんでしょ?一緒に行かない?」と誘われ
有志の方々と10名ちょっとでTBS落語研究会を観に国立劇場(小劇場)へ。
この取引先オジサンに落語が好きだという話をしたことは全くないのですが、
他部署の飲み友達オジサンが私の寄席通いについて話をしていたらしく。。。

今回の出演者は日頃お目にかからない落語協会の噺家さんばかりで
(注:寿輔師匠は落語芸術協会の会員なので所属が違うのです・・・・)
今までTBS落語研究会の存在を知らなかったのと合わせて
「これで落語の世界が広がるワ」と喜びながら国立劇場に急ぐのでありました。。。。

小劇場は600名弱入るのですがほぼ満席。
オジサン曰く年間予約席で前方の席は全く取れなかったので、、と座ったのは後方ですが
小劇場なので寄席の後ろに座っているのとさほど変わりなくそこそこ見えます。

6時半に開演。 最初に登場したのは、
 五街道雲助 噺は「うなぎ屋」

酒好きの留を兄貴分が飲みに連れて行こうとするが留は気が進まない。
以前、徳に酒に誘われてついていくと寿司屋、天ぷら屋、焼き鳥屋の前を通っても素通り。
「後にしよう」と言っては素通りしてばかりで、遂には吾妻橋を渡ってビール会社も素通りし
辿り着いたのは隅田川の土手。そして「川の水を酒だと思って好きなだけ飲め」と言われたから
気が進まない、という留に兄貴はそんなことはしないからタダで飲める店に行こうと誘う。

先日、近所の鰻屋に行ったら香々(お新香)と酒が交互に出てくるばかりで鰻が出てこない。
「鰻を出してくれ」というと店主が困った顔をして暫くしてから出てきたのが鰻の丸焼き。
「鰻ってのは割いて出すものだろう」と店主に文句を言うと
職人が出かけたきり帰ってこないので鰻を割くことができないので御代は結構です、
と店主が言ってタダの酒が飲めた、その店は今日も職人がいないから一緒に行って
タダの酒を飲もう、、、という兄貴に連れられ鰻屋へ。
店に入ると兄貴の顔を見て驚く店主は「職人がいないので後で来て下さい」と言うが、
今食べたいからやってきた、鰻を出してくれ、と答える兄貴。
店主は仕方なく鰻を割こうとするがヌルヌル滑って鰻がつかめない。
糠をたっぷりかけても鰻は逃げようとするので手を前に前に出しながら店主は鰻をつかもうとする。
鰻の進む方向に手を伸ばしながら前に進んで歩く店主がとうとう店の入口を出ようとするので
「どこに行くんだ?」と兄貴が聞くと、「前に回って鰻に聞いてくれ」と店主が答えてサゲ。
 
「うなぎ屋」というのは上方落語の題名で、江戸版は「素人鰻」というのですが、
「うなぎ屋」はタダで飲もうとする客側から見た騒動で、
「素人鰻」は鰻屋の主人(店側)から見た鰻屋の騒動、とサゲが同じでも設定が違うようです。
(他には「素人鰻」だと店主が元武士、という設定のようです・・・)

雲助さんは、非常に丁寧に話す方で、
爆笑するほどではなかったものの「ほぉ~」と感心することしきりでありました。

次に登場したのはまだ30代の
 春風亭柳朝  何だか愛嬌のある方のようですね
「待ってました!!」という声があちこちからかかっていたのですが、
最近、「柳朝」を襲名したようです。

噺は「大どこの犬」。      ←「大どこ」=「お金持ち」のことです。

ある乾物屋の小僧が店の裏で見つけた白・黒・ブチの捨て犬3匹。
捨て犬を捨てるのもよくない、と思った主人が拾って飼うことにすると、
その内の黒犬を小僧が大層可愛がるようになった。
ある日、小僧が出かけている時に一人の男がやってきて黒犬を譲ってほしいと言い出した。
勿論お金は払いますという男に、犬を良からぬ事に使うのではと訝った店の主人、
この犬は今出かけている小僧が大層可愛がっているので、、と一旦は断るが、
男が、自分は大坂鴻池の東京の出店の者で、
店の主人の坊ちゃんが可愛がっていた黒犬が死んでしまったので、
その代わりを探しているがその犬にそっくりの犬がなかなかいない、
死んだ黒犬は喉のところに白い毛で月の輪のような模様があったが、
この黒犬も同じ月の輪の模様があるので坊ちゃんの遊び相手に是非譲ってほしい
とお願いしてきたので、店の主人も鴻池のような大きな家の坊ちゃんの遊び相手ならば
この犬も大事にしてもらえるだろう、と小僧のいない間に譲り渡してしまう。

そうやって鴻池に貰われていった黒犬(クロ)は、
上げ膳据え膳状態で食べるものにも苦労せず坊ちゃんにも大事にされて
毛艶よく体もどんどん大きくなり近所の犬の間で「鴻池のクロ」と言われるようになった。
そんなところに現れた灰色のうす汚い犬。
自分の縄張りに現れた犬を見たクロは「お前は誰だ?」と威嚇すると、
鴻池のクロを探しているというので「クロはオレだ」と答えると、
灰色の犬は乾物屋に一緒に拾われた弟のシロだった。。。。。。。
聞けば、クロが鴻池に貰われていったことを知った小僧が怒りに怒り、
腹いせにシロとブチは家を追い出され、食べるものにも事欠いてゴミ漁りをしているところで
ブチは人に棒で叩かれあの世へ旅立ってしまった、他に頼れる人(犬)は兄さんしかいない、
と大坂までやってきたという。

それを聞いたクロは「もう心配はいらない」とシロに言い
「おーい、クロクロクロクロ」と呼ばれる度に屋敷に行っては
鯛やらカステラやら美味しいものを貰ってきてシロに分け与え、
初めてみる贅沢に驚くシロだったがクロから有り難く食べ物をもらうのだった。
ある日、いつものように「おーい、クロクロクロクロ」と呼ばれたので
クロが屋敷に行ったのだが、戻ってきたクロは手ぶら。
そして一言、「坊ちゃんのおしっこだった」と言ってサゲ。

クロクロクロクロ、、というのは上方で子供におしっこをさせるときの呼び方とか何とか、、、
と後で調べたら書いてあったのですが、よく理解できずサゲになっても????でした。
一緒に行ったオジサンも同様で「今のはどの辺がサゲだったの?」と聞くので2人で??。
まだまだ私も修行が足りないなあ、と思うのでありました。。。

大きな名前を襲名した柳朝さん、襲名後日が浅いようで、緊張しているのでしょうか。
こういう噺なので、もっとエグく話してくれてもよいかな、と思うのでありました。

で、3番目に登場したのが、
 柳家花緑 永谷園のCMに出ていた故小さんの孫
現在は、花緑の父が小さんを(昨年)襲名していますが、
中学卒業後に修行の道に入った後、22歳の若さで真打になれたのは
祖父と父2人分で「十四光だ」と故小さんに言われた話で場内大爆笑。
また、本日完売御礼&満席というのに空席が目立つのはナゼでしょうね?とか
(多分、年間予約席が空いていたんだと思われます。当日売りはありませんでしたので)
また、婚約者の林家きく姫と六本木の映画館のプレミアムシート(3000円)で
ハリポタを観た時のカップル観察話など、、、ひとしきり場内を沸かせた後で本題。

噺は「厩火事」。 

これは真打になって初めてTBS落語研究会に出演した時に話したネタだそうです。

主人公は髪結いのお崎と年下亭主の八五郎。
ある日、年上女房のお崎が仲人のところへ相談にやってきた。
結婚して8年、女房が一生懸命働いているというのに八五郎は仕事もせずに酒びたり、
ケンカが絶えないし愛想を尽かしたので別れたいと言うお崎。
それを聞いた仲人、「女房働かせて自分は酒飲んでるような奴とは別れちまえ」と突き放すと
お崎は急に八五郎をかばい始め、終いにはあの人は優しい、、とホメル始末。

呆れた仲人は、八五郎がどう反応するか了見を試しなさいと2つの話をする。

1つ目は昔の中国、孔子の外出中、廐から火が出て愛馬の白馬が焼け死んでしまった。
孔子からどう叱られるか心配する使用人達に孔子は「家の者にケガはなかったか?」と聞くのみ。
愛馬のことは聞かずに家来の安否を聞く姿に一同感服したという話。
2つ目は、瀬戸物に並々ならぬ愛着を持つ麹町の殿様、
外出中に殿様の家内が客に瀬戸物を見せるのに誤って二階から足を滑らせると
それを知った殿様は慌てて「皿は大丈夫か!」と連呼。。
後に家内(と実家)から「妻よりも皿を大切にするような不人情な人」と離縁され、
一生寂しく独身で過ごしたという話。

八五郎が孔子なのか麹町の殿様なのか亭主が大切にしている物をわざと壊して確かめなさい、
もし品物が大事なら亭主は望みがないから別れなさい、と言われたお崎、
安物とはいえ亭主が大事にしている茶碗を持ち出してわざと滑って転んでみた。
お崎の体を心配する亭主の八五郎、、、嬉しがるお崎に

「当たり前だ、お前が指でも怪我したら明日から遊んでて酒が呑めねえ」と言ってサゲ。

髪結いの亭主、という言葉がありますが、こういうダメ亭主は本当にダメね~、
だから落語になるんだけどね、と思うのでありました。。。(笑)

ここで、仲入り。 取引先オジサンと急いでお弁当を食べてから後半の部に突入です。。

後半は、
 柳家喬太郎から 噺は「お菊の皿」

番町皿屋敷のお菊さんについて、隠居から話を聞くと、
昔、藩士が夫のいるお菊さんををものにしようとするが叶わず、
頭にきて10枚揃いの皿を1枚抜いたところでお菊さんに確認させ、
一枚足りないのをお菊さんのせいにして責めた挙句に殺してしまったという。
お菊さんは藩士を呪って毎晩殺された井戸から出ていると、
藩士は遂に息絶えてしまう。。 そんな謂れのある屋敷であるが、
今でも恨めしく思うお菊さんが毎晩出てくると隠居から聞いた男連中が屋敷に観にいくと、
「いちま~い、にま~い」と幽霊のお菊さんが皿を数えている。
9枚まで聞いてしまうと命を落とす、と隠居にいわれていた男連中は、
 「6ま~い」と言ったところで帰るが、美人のお菊さん見たさに毎晩屋敷に通うようになる。
美人のお菊さんの噂が噂を呼び、次第に大勢の見物人が屋敷にやってくるようになり、
お菊さんも大勢の見物人の前で愛想よくサービス満点に皿を数えるようになる。
まるで演出過剰で数百人が集まる一大イベントになった趣の番町皿屋敷、、、
陰気だったはずがいつの間にやら客の反応を見ながら調子よくなってしまったお菊さん、
ある日、いつものように皿を数え始め、「6ま~い」となったところで帰ろうとした男連中、
また、前にいる見物人がなかなか前に進まぬ内、皿の枚数が「7ま~い」「8ま~い」と進んでいた。
観客がこのままだと死ぬ、、、と焦っている内に「17ま~い」「18ま~い」と言うお菊さん。
「お菊さん、何でそんなに沢山皿を数えたんだ?」と男連中が聞くと、
「明日は休むから明日の分も数えたの」とお菊さんが答えてサゲ。

怪談話の番町皿屋敷もこういう切り口だと笑えるもんですが、
以前寄席で桂伸治さんによる同じ噺を聴いたときより面白いというか、
とにかく喬太郎さんの話す姿が可笑しくて。。。
今回で喬太郎さんを見たのは2度目ですが、
初回の「ぎぼし」(←橋の欄干のコレ)での話しぶりと同様
藩士がお菊さんを責めるシーンがかなり過激で、、、
ここまで観客を笑わせようと分かりやすくパフォーマンスする姿に面白くて笑う反面、
私にはちょっと過剰すぎるかなあ、と思ったりして。。。。

で、今回の主任、
 春風亭一朝が登場 噺は「抜け雀」 

小田原宿に現れた若い男、
黒羽二重が日に焼けて赤羽二重に帯も芯が出ておりクタビレタ感は否めない。
そんな男に宿の主人達が声をかける訳もなく、
宿場町の外れに来た所でやっと声をかけたのが夫婦2人だけの旅籠の主人。
男は宿の主人に「では泊まってやろう、内金は百両でいいか」と大きなことを言うが、
主人は男が金を持っていると信じて「ご出発の日で結構です」と答える。

部屋に案内された男は、自分は朝昼晩一升ずつ飲むと宣言し、
その通り7日間、朝昼晩一升ずつ、つまり1週間で21升も酒を飲み続ける。
それを見ていた旅籠の女房が主人に文句を言い出した。
酒の仕入れ代にも困ってきたから客の男から内金として五両お金を貰ってきて、
と主人の尻を叩いて男のところに送り出す、、、、と、
「金など一銭もない」「最初に百両預けるといったのもウソだ」と開き直る男。

あんたは金のない人ばかり客として泊まらせて駄目じゃないか、
少しでも金になるものを男から取ってきなさいと女房に言われて再び男のところに行く主人。

と、男は自分は絵師なので宿賃のかたに絵を描こうと言い出した。

以前、無銭で泊まった男が代金の代わりに作った衝立に
男が墨で一気に書き上げたのは五羽の雀。一羽一両としてこれで五両だ、と男は言う。
これを抵当で置いていくので旅の帰りに自分がここに寄って代金を支払うまでは売ってはならん、
と言い残して男は去ってしまう。

あーあ、またこんな客泊めちゃったよ、と落胆する夫婦だったが、
翌朝、男の泊まっていた部屋の窓を主人が開けた途端、衝立に描かれていた雀が飛び出して
隣の家に言ってえさを啄ばみ再び部屋に戻って衝立の絵の中に入っていく。。。
驚いて女房にも見せると、女房も吃驚。。

この衝立の雀が評判を呼び、雀見たさの宿泊客で大賑わい、毎日満室の大繁盛となり、
藩主の大久保の殿様から千両で買いたいという申し出まであったが、
売ってはならん、と言って去った男の言葉が気になって殿様にも売ることが出来ず、
宿に飾っておいたある日、60過ぎの老人が宿にやってきて衝立の絵が見たいという。
そして、絵を観た途端「この絵は不十分だ。鳥の止まる木が描いてないから
このままでは死んでしまうだろう」と不吉なことを言い出す老人。
主人が頼んで老人に止まり木と鳥かごを墨で描いてもらうと、
雀は安心したように籠の中に入り止まり木に止まるようになった。
老人が去った後、再び大久保の殿様から絵を買いたいと申し出があった。
今度は以前の倍の二千両。しかし、男との約束があるからとまたもや申し出を断るのだった。

それからしばらく経ったある日。黒羽二重の立派な身なりの侍がやってきた。
よく観ると、いつぞや料金踏み倒しで雀の絵を描いて去っていった赤羽二重の男。
あの時描いてくれた絵のお陰で宿が繁盛したと、男に御馳走を振舞う主人。
男が描いた絵に老人が鳥かごと止まり木を描いた話をすると男はその絵を目にし、
その前にひれ伏して老人が自分の父親だという。

父に逆らって家を飛び出た後、勘当されて金もなくなり放浪していたが、
最近勘当が解けてどうしてかと思ったら、父が自分の絵を観ていてくれたからだ、という男。

殿様が雀を描いた人も鳥かごを書いた人も名人だといっていたから
親子二代で名人ということですね、という宿の主人に対して、

「いや、自分は親不孝だ。親をカゴカキ(籠描き=駕籠かき)にしたんだから」と言ってサゲ。

マクラ部分で、当時街道筋にたむろする雲助や宿場で客待ちをする駕籠屋はよろしくない職業と
いわれていたので、最後のオチ「駕籠かき」=親不孝とわかっていましたが
知らないと???なサゲですね。

以前、古今亭菊六さんでも聴いたのですがやはり真打の方が練れている感じですね。。

今回初めての参加でしたが、演者5人で(仲入りがあるものの)、
以前聴いた噺でも演者によって印象が変わるんだなあ、と思ったのは大きな収穫で、
非常に充実した数時間の落語会でありました。
これで2500円なら安いしお得ですが、新規でのチケット購入は難しい模様です。
でもまた何とかみたいなあ、と思ったTBS落語研究会でありました。。。


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