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「ユナイテッド93」を観る [映画(や・ら・わ行)]

日比谷スカラ座で「ユナイテッド93」を観る。

 監督はポール・グリーングラス

タイトルになっているユナイテッド航空93便は、
5年前の9.11でハイジャックされた旅客機4機の内の1機。 

2001年9月11日、乗客乗員40名を乗せたユナイテッド93サンフランシスコ行は、
ゲートを離れた後も、朝の離陸ラッシュで管制塔から離陸許可がもらえず、
定刻30分遅れでニュージャージー州ニューアーク空港を離陸した。
UA93がサンフランシスコに向けて順調に飛行を続けていた頃、
地上ではボストン管制センターがボストン発アメリカン航空11便の動きに
疑問を抱いていた。
通信が途絶えていた後にコックピットから聞こえてきたのはハイジャックと思しき声。
解析で「PLANES」と複数で言っていることから複数機が狙われていると判断したのも束の間、
アメリカン11便はワールドトレードセンター(WTC)の北棟に激突していった。
更に、交信の途絶えていたユナイテッド175便も南棟に激突する。。。
順調に飛行を続けていたユナイテッド93の機長がWTCへの民間機激突を知った頃、
機内のハイジャック犯4人は動き出し、爆弾を手にコックピットを占拠する。
ワシントン国防総省に向けて方向転換するハイジャック犯のテロリスト、
爆弾を見せられ恐怖に震える乗客乗員達。
機内が緊迫する中、更にアメリカン77がワシントンの国防総省に激突する。

機内から警察や家族に電話をかける乗員乗客は、地上で起きている事実を聞き、
自分達も同じ境遇に置かれていることを知る。
家族に別れの挨拶をしながら、テロリストの思う通りにさせてはいけないと
乗員乗客は団結しテロリストに立ち向かう。
そして、テロリストがターゲットにしていた国防総省に到達することなく、
ペンシルヴァニア州の草原に飛行機は墜落していった。。。



最終的に墜落すると分かっていながらも
自分も乗客の一人になった気分でずっと体に力が入ったまま観ていた私は、
UA93が緑一面の草原に墜落するところで画面が真っ黒に暗転したところで
すーっと力が抜けてしまいエンドクレジットが終わるまで半ば呆然としていました。

この映画、有名な俳優が一人も出ていないのと、
管制官や軍幹部等が9.11当日任務についていた本人による出演(一部)だったり、
パイロット・乗員とも実際に職業として経験したことのある俳優を使うなど、
機内でのやりとりは地上との電話、コックピットからの無線交信などからの推測とはいえ、
ドキュメンタリー映画のような臨場感たっぷりの作りになっていました。

また、軍部の動きの鈍さに対して、民間(管制センター)の判断と動きが
(全米を常時4~5000機飛んでいる上空の民間機を緊急着陸させ
全米全ての空港を閉鎖すると判断した)非常に早かったのが印象的でした。

社会人になってから年に一度はアメリカへ旅行している私自身は、
9年前UA93同様のニューアーク発サンフランシスコ行きユナイテッド853便に
搭乗したことがあるのですが、機内での乗員乗客の雰囲気やサービスの様子
(ハイジャックされる前まで)は本当にこういう雰囲気なんだよなあ、
そういう日常的な風景の中からあのような出来事が起きてしまうというのは
とても悲しいことだと改めて思いました。

また、映画では乗客乗員が地上に連絡する手段として
機内に設置されたVERIZONのクレジットカード電話を使っている場面を見て、
ユナイテッド航空がこのクレジットカード電話を10年以上前から導入していて
(オーディオや機内食サービス等の充実よりも設置優先だった様子)
このUA93で乗客乗員が友人に別れの挨拶を告げ、家族に「愛しているよ」の
最後の一言を伝える為に重要な役割を果たしていたのが非常に印象に残りました。

私にとっての9.11は、
自宅のテレビ画面に映し出されていたWTCに2機目が激突する場面に
「これは実際に起きている出来事なのか」と我が目を疑ったこと、
当時NYに住んでいた友人2人の安否が心配になって、朝まで殆ど寝ずに
電話で連絡を取ろうとしたこと(結局連絡が取れたのは翌日夜)、
当日シカゴで開催されていた展示会に参加していた大勢の会社役員社員の安否確認と
帰国便手配で右往左往したことで、私なりに色々な思いが残っているのですが、
憎みあうことや戦うことの愚かさ、平和であることの大切さを改めて感じた
「ユナイテッド93」でありました。 

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コメント 6

KANAchanMaMa

はじめまして!おじゃまいたします。m(__)m
実際のユナイテッド便に搭乗経験が あり、機内の雰囲気を ご存知の方なんです
ね!この映画が、そのリアリティーを追求することに 力を注いだことを 解説では
知りましたが、その実感を お持ちの方が 観ると、また 感慨も ひとしおのことと
思います。
親しい方の安否確認に奔走されたという状況に よっても、〔9.11〕に寄せる
思いの強さが 違いますよね。
とても 感慨深い記事を 拝読いたしました。ありがとうございました!
当方記事、楽天ブログに更新したものを TBさせていただきました。m(__)m
よろしく お願いいたします!(^_^)/
by KANAchanMaMa (2006-09-05 00:44) 

この映画、車運転中にFMで紹介されているのを聞いて、
非常に興味を持っていました。
最初は、映画化に反対していた遺族も多数居たそうですが、
事件が風化しないうちに出来るだけ現実に忠実に再現して残したい、
という製作者の熱意に、ほとんど全員が賛成したのだとか。
それだけに、観てみたい、と思ってました。
1人で観に行こうかな・・・仕事のない日に・・・
by (2006-09-05 12:59) 

うつぼ

KANAchanMaMaさん、はじめまして。
ご訪問&nice!&コメント&トラックバックありがとうございます。
アメリカ国内線を乗ってみると本当にこういう雰囲気なので、この映画を更に意義深く観られるような気がします。
KANAchanMaMaさんの記事も読ませていただきましたが、やはり色々と考えさせられる映画でしたよね。
by うつぼ (2006-09-06 06:19) 

うつぼ

浦島太郎さん、
エンドクレジットには遺族の皆さんの名前が書かれていましたので、協力あっての映画だったようです。また、この映画は利益が目的で作られたものではないのでスポンサーがついていない、という旨、やはりエンドクレジットに出ていました。そういう意味でもハリウッド映画とは一線を画しているんでしょうね。
by うつぼ (2006-09-06 06:22) 

bone-shaker

私もこの映画見てきました。先の展開がわかっているにもかかわらず(あるいはわかっているからこそ?)、本当に緊張感あふれる映画でしたね。当事者が一部出演しているのはエンドロールを見るまで知らず、これにはビックリしました。スタッフの事実を忠実に再現したいという熱意は本当に大したものだと思います。
こちらでも記事にしたのでTBさせてもらいますね。
by bone-shaker (2006-09-13 00:41) 

うつぼ

bone-shakerさんもご覧になったんですね。
無名の俳優や本人を使うことでドキュメンタリータッチでうまくリアルに見せることができたのだと思いました。ハリウッド映画というと十把一絡げで儲け主義のように見えるのですが、この映画は収益を上げることが目的ではないのでスポンサーはついていません、と、エンドクレジットで流れているのを見ると、アメリカだからとひと括りにしてはいけないなとつくづく思った次第です。
by うつぼ (2006-09-13 23:50) 

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